第386話 ギルドの機能と運用方法
「魔導証明書管理機っていうのを見つけたんですが、これってプレイヤーズギルドを管理するための魔導具ですよね?」
夜。
バーチャル部室には、俺とミオン、ベル部長にセスと、ヤタ先生以外は揃ってるところで、昼に見つけた例の魔導具の話を。
『部長……』
「あー……」
無事フリーズしたベル部長はそっとしておくとして、ミオンが見せてくれてるアーカイブをシークしてガン見してるセスに。
「ふむ。白銀の館で使っておるものと同じで間違いないようだの」
「やっぱそうなんだ。じゃ、白紙のカードを使えば、俺のギルドカードが作れるでいいのか?」
「いや、まずは初期設定を行わねばならん。そこでギルドマスターを登録することになるのでな」
とのこと。
まずギルドマスター登録があって、そこでギルド名も登録する感じらしい。
あとはギルドメンバーを追加するんだけど、その時にサブマスに設定したりとかも可能なんだとか。
「なるほど。で、ギルドカードって持ってると何か便利だったりするのか?」
「ギルドではさらに部署ごとのグループが作れるのだが、その部署間での通話が可能になるぞ」
「え? それって距離が離れてても?」
「うむ」
セス曰く、ギルドチャットみたいなものらしい。
ギルドカードを持ちながら話すと、部署に対しての通話になるんだとか。
「白銀の館では、管理部署、戦闘部署、生産部署、総務部署なんかに分けてるわよ」
とフリーズから復帰したベル部長。
一人でいくつもの部署に入れるらしいけど、その分、通話も多くなるとのこと。
「一時的にミュートしておくこともできるのだけど、毎回それも手間なのよね」
「戦闘中は特にのう」
そりゃそうだよな。ダンジョン潜ってる途中に話しかけられても困るし。
『ギルド同士の連絡はどうしてるんでしょうか?』
「ああ、アライアンス間の連絡も取ってるんですよね」
ナットのところとか、マスターシェフさんところとかとも連携してるんだろうし。
「そこは少し面倒なのだけど、NPCに相手先のギルドハウスに常駐してもらったりしてるわ」
「ギルドカードはあくまでギルド内での通話用ということよの」
なるほど。アライアンスっていうのは、宣言してるだけなんだ。
まあ、ギルマスとサブマスだけ集まったギルドをもう一つ作れば……って後ろ盾の関係もあって難しいか。
『あの……、NPCさんもギルドメンバーになれるんですか?』
「あ!」
「ええ、そこがIROのすごいところなのよね」
ベル部長の話だと、NPCも普通にギルドメンバーとして雇えるらしい。
いや、その話は前にも聞いたかもだけど、ちゃんとギルドカードを渡すんだ。
「ログアウトしてる間に何かあっても困るでしょう? 特にうちはクエストも常に発行してるし、事務員はそれなりに雇ってるわよ?」
「すげえ……」
とはいえ、クエストを常時発行するようなギルドっていうのは、大手ぐらいなんだとか。
ベル部長たちの『白銀の館』は、ワールドクエストの『未開地の開拓』って話があったからだもんなあ。
「それで兄上もギルドを作るのか?」
「うーん、とりあえずピアノを直せる人がいないかなって話があるんだけど……」
屋敷の応接室にあったピアノ。
あれを直せる人を探したいし、直してくれるなら報酬を出したいし、それならギルドの体裁を持っておいた方がいいのかとか、そういう話の流れになったことを。
「ギルドにしておいた方がいいわね。ショウ君の場合は竜族が後ろ盾になるんでしょうし、竜人族や庇護下の種族のNPCを雇う可能性もあるでしょう?」
「依頼を出すということであれば窓口も作らねばなるまい。当面は死霊都市の北西が出張所ということになるのか?」
「うちからも常駐員を出しておきたいところね」
ベル部長とセスがあれやこれやと会話してるんだけど、俺もミオンもそんな急に話が進むとは思ってなくて、
『あの、まずはドラゴンさんに相談してから……』
「そうそう。そもそも引き受けてくれるかどうかもわからないし、ピアノ直すだけならギルド作らなくても終わるかもしれないし」
二人にはひとまずクールダウンしてもらわないと、もう設立が前提で話が進んじゃいそうで怖い。
それに、ミオンが来る前に直っちゃったら、俺がピアノ弾かないといけない展開になりそうだし……
「そう? まあ、ギルドの運営に関しては『白銀の館』が全面的にバックアップできるから、そこは遠慮せずにね?」
「りょっす」
そのあたりは自力で調べるのにも限度があるだろうし、いざ設立って話になったら相談することにしよう。
当面、ミオンの公式女神就任発表とかもあってバタバタしそうだし……
「そういえば兄上。屋敷で見つけた転移魔法陣は使えなくしてあるのか?」
「え? そりゃもう厳重に封印したけど……」
「ならば良い。アンシアがゲームドールズが持つ転移魔法陣のうちいくつかを買い取ったらしいのでの」
うわあ、めんどくせえ……
という顔をしてしまい、ベル部長も苦笑い。
『それって猫さんたちの島へとつながるものもですか?』
「それはさすがにゲームドールズの人たちも断ったそうよ。彼女たちもラムネさんの島に行くライブを計画してるそうだし」
まあ、ケット・シーたち可愛いもんな。
プレイヤーも行きたがってる人たちが多いんだけど、そこはラムネさんのファンクラブの方である程度制限してるらしい。
「ん? でも、ラムネさんの島でこっそりログアウトするとか、リスポーンポイント設定しちゃうとかすると忍び込めたりするんじゃないの?」
まあ、リスポーンで忍び込むってなると、デスペナとセットになっちゃうけど。
「それに関してはシステム上で制限されてるようなのよね」
「建国することによって得られる権限があるのかもしれんのう。そのあたりは建国の経験があるハルネ殿らと情報交換があったのやもしれん」
鎖国っぽいことができる設定とかがあるってことだよな。
島に来て問題を起こしたプレイヤーを処断したとしても……問題はないのか。
「で、氷姫アンシアが他の転移魔法陣を買ったのはなんで? 他ももうどこかに繋がってるとか?」
「いや、おそらくは今後ラムネ殿と同様に、無人島スタートから本土へと来るプレイヤーが増えると踏んだのであろう」
「先行投資的な?」
「投資というよりは博打な気がするがの。いずれにしても、兄上が持つ転移魔法陣と繋がっておるやもしれん。気をつけておいた方が良いぞ」
そう忠告してくれるセスに頷いておく。
ただ、島にあるのはどれも行き先わかってるんだよな。
一つは死霊都市、一つは竜の都、一つは南の方にある採掘施設だけど……確認しておいた方がいいのかも?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます