第385話 お迎え準備

 他に蔵にあったものは、絵が入ってない額縁、スツール、コーナーテーブル、ポールハンガーといった家具類。綺麗な木箱に亜魔布と収められていた食器類は未使用っぽい。


「とりあえず、使う時が来るまではここに置いとくかな」


『食器は使わないんですか?』


「うん。今のところ自分で作ったやつで十分だし」


 あと、見つけたやつは真っ白で綺麗な陶器、なんかお高そうなやつだったんで、普段使いはしづらい……


「今って4時ぐらい?」


『はい。4時前です』


 あと1時間ちょいは遊べる感じか。

 それなら、


「屋敷の壊れてる部分を確認するよ。早めに改装して、住み心地を確かめたいし」


『ここに引っ越すんですか?』


「全体的に綺麗に直せたらだけどね」


 山小屋もいいんだけど、この屋敷ならレダとロイも中に住める。

 ケット・シーたちも今は教会に住んでるけど、冬に寒くなった時のことを考えるとなあと。それに、


「ミオンが島に来れるようになったら、山小屋のままだと狭いかなって」


『あ……』


 俺とミオンがゆったりできるスペースは欲しいんだよな。

 蔵で見つけたストーブを囲んでコーヒー飲んだりしたいし。


「ワフ!」


「もちろんルピも一緒だぞ〜」


「ワフ〜」


 甘えてくるルピをしっかりモフる。

 長ソファーに寝そべるルピとか絶対に可愛い。


『トゥルー君やパーン君も呼べるようにしないとですね』


「だね」


 間取りまで変えるのは大変だけど、部屋の役割みたいなのは変えちゃうかな。食堂とかあんなに広くなくていいし。


「ニャ!」


「おかえり。どうだった?」


 シャルの話だと、正門を出て少し北側に行ったところに古い巣穴があったけど、ネズミの残党はいなかったし大丈夫だろうとのこと。


『良かったです……』


「だね。しばらくの間、シャルたちには見回りをお願いするよ」


 裏庭の先にあるコハク畑、パーンたちが手入れしてくれて、かなり広くなってきたし、他の場所にも畑を増やしていきたいところ。

 水車も作りたいし、夏休み中はこっちの整備がメインになる感じかな。


『お屋敷はどこから手をつけるつもりですか?』


「うーん、まずは屋根かな。この上とか屋根板が割れてて、穴が開いちゃってるせいで雨が吹き込んでるしね」


 正面玄関を入ってすぐのホールの部分。

 見上げると……空が見える。


「屋根瓦を一度全部外して、ダメになってる野地板は張り替えて……」


 銅インゴットがあるし、銅板葺き屋根とかにするとかっこいいかもしれない。使ってるうちに緑青がついて味のある色合いになるらしいし。


『屋根の次は壁ですか?』


「うん。ただ、柱の状態を確認しないとかなあ。大丈夫だとは思うけど……」


 雨水のせいで腐ってたり、ボリゼラットに齧られてたりすると洒落にならない。場所によっては補強を入れないと。


『気になってるんですが、さっきの蔵や女神像が飾ってある部屋って、壁や屋根を剥がせたりするんでしょうか?』


「あ……確かに」


 魔導扉でしっかり閉められてたけど、屋根や壁を剥がして中に入れたら意味がないような……


「ま、まあ、あの扉は解錠コードとかなかったし……」


『そ、そうですね』


 あの二箇所はネズミが入れなくて綺麗だったし、手をつけなくても大丈夫そう。

 あ、そうだ。改装するにあたって、今ある家具とかを蔵に移動させるか。


「よし。じゃ、ちょっと家具を確認しに行くよ」


『はい』


 ………

 ……

 …


 寝室にあったベッド、衣装棚、廃棄予定。

 書斎にあった机、椅子、本棚、廃棄予定。

 応接室にあったソファー、ローテーブル、廃棄予定。

 バーっぽい場所にあった丸椅子、廃棄予定。

 食堂の大きなテーブル、廃棄予定。

 配膳室にあったテーブル、廃棄予定。

 調理場にあった食器棚、廃棄予定……


「なんかこう、あのボリゼラットが触ったかもって考えると、捨てるしかないよね?」


『そう思います。でも……』


「このピアノはなあ。さすがにちょっと……」


 ただ、鍵盤を叩いても音がしたりしなかったり。

 天板? よくわからないけど、上蓋みたいなのを開けると、ピアノ線(?)が切れたりしてて、こりゃ鳴らないよなあと。


『ドラゴンさんたちで直せたりしませんか?』


「うーん、無理じゃないかな。なんか音楽とか興味ないって話で笛もらったし」


『でも、お姫様は歌が上手でしたよ?』


「確かに……」


 まあ、アージェンタさんにしても、バーミリオンさんにしても、アズールさんにしても……音楽とは縁が遠そうだよなと思う。俺もそうだし。


「ああ、竜族じゃなくて庇護下? 竜人族とか巨人族とか、有翼人もそうなんだっけ。そっちで直せるとかあるかも?」


『部長がいる場所のドワーフさんはどうでしょう?』


「あ、そういえばアージェンタさんと知り合いだったっけ。ドワーフならピアノ線とかも作れそう。今度、預けてみようか?」


 早いうちに預けておいて、ミオンが来た時にすぐ弾けるといいんだけど。


『はい。それに、ひょっとしたら他のプレイヤーさん、私たちのチャンネルのリスナーさんに直せる人がいるかもです』


「なるほど……」


 どっちにしても、いったん竜の都(?)にこれを運んでもらうしかないか。

 竜族を使いっ走りにしてるような気がしなくもないし、ほどほどにしないと怒られそうだけど。


「お願いっていうかクエストって考えると、島から何か報酬を出すべきだよね?」


『お金がありませんし、ショウ君が作ったものとか、島の果物とかでしょうか?』


「俺が作ったものはどうかなあ。でも、島の果物は……欲しがる人多そうな気がする」


 スウィーたちが育てたカムラスとかって効能がすごいし、トゥルーたちのオステラソースとか、パーンたちが育てた野菜とか。


『ショウ君が作ったものも欲しがる人は多いと思いますよ?』


「あはは。でも、そうなるとやっぱりギルドを設立した方がいいのかな? ベル部長たちの時はお金だったり貴族の後ろ盾が必要だったりしたみたいだけど」


『ドラゴンさんたちがなってくれますよ!』


 それはそんな気がするけど、これ以上、アージェンタさんの仕事を増やして大丈夫なのかなっていうね……

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