火曜日

第375話 採用面接?

「天然ラムネがいる島って猫島だって話だぞ」


「は?」


 お昼はまた雨なので教室で。

 コロッケパンの袋をくしゃっとしつつ、そんなことを言い出すナット。

 ミオンの方を見てもふるふると首を横に。いいんちょは……


「私も知らないわよ?」


「どういうことだ?」


「フォーラムでそんな話があったんだよ。また新しいケット・シーの集落を見つけたんだってさ」


 今度は普通に集落を発見したそうで、ほっと一安心。

 ラムネさんに懐いてるケット・シーが一人いて、その子がいろいろと案内&説明してくれてるらしく(?)、いい感じに仲良くなってるんだとか。


「へー、良かったじゃん」


「で、猫の王国があるんじゃって話になってるけど、ショウは何か知らないか?」


 とナット。なんだけど、


「なんでも伊勢君に聞くのはダメでしょ?」


「いやいや、別にそれ聞いて何かするわけじゃないって」


 いいんちょに睨まれ、慌てて弁解する。

 まあ、猫の王国って聞くとワクワクするよな。


「まあまあ。ケット・シーを鑑定すればわかることだけど、少なくともあのボス猫は銀猫団とかいう騎士団の団長だったぞ」


「おお、騎士団か! ……強そうに見えないな」


「まあ、トゥルーやパーンとあんまり変わらないしな」


 本当に真っ直ぐ立てば、背の高さは同じぐらいなんだろうけど、ケット・シーだけに普段はちょっと猫背で前屈みっぽい姿勢。

 あの立ち姿にフルプレートメイルは合わないしなあ。


「ショウ君」


「ん? ああ、こういう感じでも騎士っぽいか」


 ミオンがタブレットで見せてくれたのは、長靴をはいた猫のイラスト。

 中折れ帽だっけ? それに飾り羽がついたやつをかぶり、コートっぽい上着にブーツ。

 手には細剣レイピアっていう、かっこいいな、これ。


「いいわね。伊勢君、作ってあげれば?」


「おお、これか!」


 タブレットを受け取ったいいんちょが、ナットと一緒にそれを見て好き放題言い始める。いや、まあ、ちょっと作ってみたくなったけど。


「そういえば、ナットは普段ノームと一緒に行動してるのか?」


「ん? まあ、ずっと一緒ってことはねーけど、よくついてくるな」


 今行ってる『古奥のダンジョン』にもついてくるらしい。

 前衛というわけではなく、後ろから土の精霊魔法で援護してくれたりするんだとか。


「おお、すごいな!」


「お前んとこだって、妖精たくさんついてきてるじゃん」


「……そうだった。いや、それはそうなんだけど、ノームの武器とかってどうしてる?」


 トゥルーたちにヤス(トライデント?)を作ってあげないとだし、パーンたちには鎌か何か望むものを作ってあげたい。あとさっきのケット・シーに細剣?

 スウィーたちフェアリーは……本人に聞けばいいか。


「んー、俺たちが渡したピッケルとか大事にしてくれてる感じだな」


「最初に仲良くなった時に渡したあれよね」


「おう、あれあれ」


 ああ、あれかー。

 確かにノームが好きそうな武器……っていうか道具だよな。


「で、ショウのとこの妖精も何か持たせるつもりなのか?」


「ああ、よくわかったな。まあ、パーンたちは鎌をずっと持ってるんだけど、トゥルーたちは使ってたヤスが壊れちゃったって聞いたし」


「ショウのとこなら、妖精だけで軍団が作れそうな勢いだな」


 そう言って笑うナットだけど、確かにもう軍団規模になってるんだよな……


***


 小型魔導艇を受け取って古代遺跡に入港(?)した後は、ひとまず落ち着こうということをみんなに説明してログアウトした。

 ちょっとした探検のつもりだったのに、いろいろあった上にアズールさんもボス猫も魔導艇も来て収拾がつかない状態になってしまったので……


 パーンとウリシュクたちは畑が気になるのでと、スウィーが神樹経由で送ってくれた。

 トゥルーたちセルキーはアズールさんが帰った後、明日(つまり今日)、壊れたヤスを持ってくると約束して帰宅。

 フェアリーズとケット・シーたちは旧酒場のフロアの方で、レダやロイに囲まれて寝ているはず……


「ワフッ!」


「っと、おはよう、ルピ。ちょっと待ってな」


 ミオンへの限定配信をオンにして、旧酒場のバックヤード、ロフトベッドから降りる。


『ショウ君、ルピちゃん、こんにちは』


「ようこそ、ミオン」


「ワフン」


 フロアの方に……誰もいないな。

 外に出たところで、倉庫の方から美味しそうな干物を炙った匂いが……


「キュ〜」


「「「ニャ〜♪」」」


 覗いてみると、ケット・シーたちがボス猫含めて集まって食事中……


「バウ」


 ロイが見張りをしてくれてたのか、ルピの前に来て伏せ。

 しっかりと撫でてあげつつ、


「ありがとな。で、レダは?」


 いつも二人一緒が多いのにどうしたんだろうと思ったら、


「バウ」


「〜〜〜♪」


 レダにスウィーとフェアリーズが。

 それぞれが手にカムラスの実を持ってるので、レダが護衛についてくれたんだろう。


「レダもありがと。じゃ、みんなでご飯にしようか」


「ワフ!」「「バウ!」」


 ………

 ……

 …


「〜〜〜?」


「ニャニャ」


 なんだかよくわからないうちに、スウィーがボス猫の面接をしている。

 俺としては、今いる住人たちと仲良くできればそれでいいんだけど、スウィー的には「ちゃんと島で役に立てるよね?」っていうニュアンスが……


『ショウ君、今はまだ猫さんの言葉がわからない感じですか?』


「うん。やっぱり『守護者』の称号も必要っぽい」


『なるほどです』


 前にもらった『翡翠の女神の使徒』との合わせ技で確定かな。

 使徒の称号だけで全ての妖精の言葉が理解できるようになるのは、ちょっと効果がありすぎとかいう感じなんだと思う。


「〜〜〜♪」


「ん? ふむふむ……」


 スウィーの話を聞いたところだと、


「騎士団だから王、つまり主である俺を守るために全力を尽くす……だって」


『えっと……』


 ミオンが反応に困ってるんだけど、俺もすごく困ってる。

 スウィーが納得してるんだし、別にいいんだろうけど……


「まあ、無理はしないでくれればかな。で、名前なんだけど……」


『はい! シャル君でどうですか?』


「オッケー! じゃ、シャル! よろしくな!」


「ニャー!」「「「ウニャー!」」」


【ケット・シーの守護者:3SPを獲得しました】


 そういえば、団長は辞めたんだっけ?


【ケット・シー(元団長):シャル:忠誠】

『妖精ケット・シー、銀猫団の元団長。

 銀猫団はかつてケット・シー王国の騎士団を務めていた』


 元団長って……

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