第372話 プレシャスワン
外に出た場所から西へ、島の中央の方へと進む。
台地のような崖上は、それなりの広さがあるんだけど、端っこは怖くて近寄りたくもない感じ……
「リュ♪」
「キュ〜」
こういう場所はパーン大活躍というか、慣れてるからすいすいと先へ進んでいく。
パーンの次はトゥルーで、その後ろに俺とルピが続き、
「〜〜〜♪」
「クルル〜♪」
スウィーとラズはフードの中から顔だけ出して、景色を楽しんでる感じ。
それにしても……
『なんだか道があったような気がしませんか?』
「だよなあ」
外に出た部分はそう見えなかったんだけど、隣の岩に移り、さらに隣へと進むごとに足元が道っぽく、次の岩へも階段のようなものが……
「リュリュ!」
「お?」
次の少し高い岩へと登ったところで、パーンが何かを見つけたっぽい。
トゥルーに続いて石の階段を上り切ったところで、その向こうに見えたのは、人1人通れるぐらいの洞窟の入り口。
『まだ続くみたいですね』
「行き止まりかと思ってたけど、ここまで道っぽいものがあったんなら、どこかからこれるってことだろうからね」
『あ、そうですね』
この洞窟の先がどこに続いてるのか……
感覚的にはニーナの展望台から出て港へと向かう道の途中ぐらい?
「今って何時ぐらいかな?」
『もうすぐ9時半です』
「さんきゅ。じゃ、進もうか。っと、その前にフォーメーションを変更で」
この先はさすがに何がいるかわからないし、またムカデとか出てきたら洒落にならない。
ルピが先頭で俺が続き、トゥルー、パーンと続く。
「〜〜〜♪」
「おっと、いつも助かるよ」
スウィーが光の精霊に頼んで出してくれたあかりが洞窟へと進んでいき、その中を照らしてくれる。ぱっと見た感じは普通の洞窟……
「ワフ」
『崩れるかもしれませんし、気をつけてくださいね』
「りょ。確認しながら行くよ」
こういう時に土木スキル便利だよな。
洞窟の地面、側面、天井の強度を見て、問題ないのを確認しつつ進む。
まっすぐ進んだ先はしばらくすると行き止まり……じゃないな。
「ワフ?」
「うーん、どっちだろ」
何もないフロアのような丸い小部屋に出たんだけど、突き当たりに上下に続く螺旋階段。
地面も側面も天井も整えられていて、これはもう明らかに作られた場所だなと。
「〜〜〜♪」
「上? まあ、上からの方がいいか」
スウィーが上に行こうと主張するので、そのまま階段を上に。崩れないかしっかり確認しつつ上がっていくと、やがて外の光が差し込んできて、
「おお?」
頭だけ出たところで、色とりどりの花が咲いているのが見える。
ルピが一足飛びに出ると、あたりをしっかり確認してくれる。
「うわ、すごいな!」
「リュ〜♪」「キュ〜♪」「クルル〜♪」
『綺麗ですね!』
昔は整えられた庭、空中庭園とかいうやつだったのかな?
ここにはちゃんと外周に壁がついてるし、足元をじっくり見ると人一人歩ける幅の石畳の道が隠れてるし。
「〜〜〜♪」
「ん? どうしたの?」
スウィーが手招きするのは、この場所のちょうど中心部分。
噴水でもあったりするのかなと思って近寄ってみると……
『卵ですよね……』
「卵だなあ……」
両手に溢れるサイズの真っ白な卵……の殻だけが。
またこれヤバいものを見つけてしまった気がするんだけど……とりあえず鑑定。
【ヴェズルフェルニルの卵の殻】
『幻鳥ヴェズルフェルニルの卵の殻。
細工:装飾品などに利用可能』
全くわからないので、もう一度選択して、
【ヴェズルフェルニル】
『幻鳥ヴェズルフェルニル。純白の体毛を持つ鷹。
風を操る幻鳥といわれ、自由奔放さから人に懐くことはないと言われている』
懐かないなら……無事でいてくれればそれでいいかな?
この島を縄張りにするとしても、そんな迷惑な存在にはならなさそうだし。
飛んでるところを見れたらいいなあとは思うけど。
「これは様子見かな?」
『その殻はどうしますか?』
「うーん、どうしよ?」
放置されてるから持って帰っても良さそうだけど、それはそれで戻って来たときに不審に思ったりしないかな?
「〜〜〜♪」
「大丈夫? じゃ、持って帰るか」
スウィーが持って帰ろうというのでインベントリへ。
あとで図鑑を見直すか、アズールさんあたりに相談しよう。
「下に行くよ〜?」
「ワフン」「〜〜〜♪」「リュ」「キュ〜」「クルル〜」
………
……
…
下へは太い柱と壁の間にある螺旋階段をぐるぐると。
今どっちの方角かわからなくなるぐらい進んだところで、
「ん?」
『なんだか光が反射してるような……』
この間、ナットから水晶鉱がって話を聞いたし、そういうのがあるのかな?
「おおお?」
階段を下りた場所は円形のフロアになっていて、右手側にびっしりと並んでいる鉱石がキラキラと反射している。
『すごいです……』
「リュ〜!」「キュ〜!」
「ああ、気をつけろよ」
パーンとトゥルーがその鉱石へと駆け寄るのを慌てて追いかける。
ナットが言ってた水晶鉱と同じような感じだけど【オパール鉱採掘ポイント】と。
「へー、オパールかあ。ミオンはどんな宝石か知ってる?」
『オパールの宝石は母が持ってるのを見たことがあります。キラキラする部分が多いと高級だそうですよ』
おお、さすがお嬢様。というか、雫さんは社長だし、当然そういうのを身につけないとっていう場面も多いんだろうな。
「じゃ、試しに一個採掘を……」
「クルル〜」
「ん?」
フードから肩越しに覗いていたラズが飛び出して、俺の手を止める。
掘っちゃダメってこと?
「クル〜♪」
そのまま走っていって……俺を呼んでるっぽい。
ああ、採掘する石もどれがいいとかある感じ?
『ラズ君が掘る石を選んでくれたんでしょうか?』
「だと思う。この石であってる?」
「クルル〜♪」
ラズが指定する鉱石をツルハシで採掘すると、
【希少なオパール原石】
『加工により宝石となるオパールの原石。遊色部分が多く希少。
石工:オパール宝石へと加工可能』
「おお、この遊色部分っていうのが、ミオンが教えてくれたキラキラした部分のことかな?」
『あ、それです!』
「なるほど。ありがとな、ラズ」
インベントリからオーカーナッツを出してラズにご褒美を。
「クル〜♪」
この原石を磨いてさっきの卵の殻と合わせれば、ブローチみたいなものが作れるかな?
ミオンが島に来れた時のために作っておくのもありだよな……
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