第367話 引率のショウ先生?
「〜〜〜♪」「クルル〜♪」
やってきたスウィー、フェアリーズ、ラズにおやつを。ドライグレイプルでいいかな?
手のひらに出すと、わっと群がって頬張る姿が可愛いんだけど……それを眺めてる場合じゃなかった。
「スウィー、ちょっと相談があるんだけど、いい?」
「〜〜〜?」
口の周りを紫に染めたスウィーが不思議そうに首を傾げる。女王様のはずなんだけどなあ……
「トゥルーに会いに港に行く予定だったでしょ? でも、ケット・シーたちを引き受けちゃってどうしようかなって感じなんだよ」
そう問うと「ああっ!」みたいに手をポンと。忘れてたっぽい。
ふらふらっとボス猫の前まで飛んで行って、
「〜〜〜♪」
「ニャ」
と頭を下げるボス猫。
スウィーが「で?」みたいな顔で俺を見るのは、通訳準備オッケーってことでいいんだよな。
「えーっと……」
まずは状況説明。
ケット・シーたちの症状は治っているはず。けど、原因は彼らが飛ばされた先の死霊都市のせいなので、若い子たちが今すぐ帰るのは危険だということ。
もし仲間の元に帰りたいという話なら……いろいろと相談しないとかな? 死霊都市から離れた場所に新しい拠点を設けるか、飛ばされる前の場所に戻れればいいんだけど……
「〜〜〜?」
「ニャウニャウ」
『どうなんでしょう……』
スウィーとボス猫が話し合ってるけど、いまいち内容を把握できない。
翡翠の女神の使徒の力とフェアリーの守護者の合わせ技(?)で、スウィーの方が説明してくれてるっぽいのはわかるけど。
「〜〜〜♪」
「ん? ケット・シーたちはボス猫がちゃんと面倒を見るから、しばらくはここに置いて欲しいって感じ?」
確認するとサムズアップして返すスウィー。
若い子8人の面倒を見れるんだろうかと思ったけど、ボスだから大丈夫かな?
変なところに行かれると困るけど、解錠コードがついてる扉をちゃんと閉めていけばいいか。
「じゃ、ケット・シーたちに留守番をお願いして港へ行こうか」
「クル〜♪」
ラズが残ったドライグレイプルをほっぺに詰め込み、腕を駆け上がってフードへと収まる。
「ニャ? ニャニャ?」
「〜〜〜♪」
「ニャニャ!」
ん? なんかアピールしてるっぽいけど、留守番は嫌って感じかな? ひょっとして?
『ついて来たいんでしょうか?』
「うん、俺もそう思った」
なんかスウィーとしばらく話してたボス猫だけど、周りのケット・シーたちの方を向いて何か合図を送ると、
「「「ニャー!」」」
と大合唱。
元気そうでいいんだけど大丈夫なのかな……
「スウィー?」
「〜〜〜?」
「あー、やっぱりついて来たいのか」
『どうしますか?』
ケット・シーたちは元気になってるっぽいし、目の届かない場所で留守番を頼むよりは、ついて来てくれた方が安心か。
ルピを見ると「任せて」って顔だし、レダとロイもそのつもりっぽい。
「んー、じゃ、一緒に行こうか」
「〜〜〜♪」
「ニャ〜!」「「「ニャー!」」」
………
……
…
先頭をルピ、俺とスウィー、ラズが続く。
その後ろにボス猫率いるケット・シーたちとフェアリーズ。
「ニャ?」「〜〜〜♪」「ニャフ」
古代遺跡を進んでるんだけど、ケット・シーたちはキョロキョロしと落ち着きがなく、フェアリーズに質問したりしている。
ほうっておくと迷子になりそうなんだけど、そこは最後尾のレダとロイがしっかり目を光らせてくれてるし大丈夫だろう。
「おーい、上へ行くよ。はいはい、早く早く」
「〜〜〜!」「ニャ!」
転移エレベータにケット・シーたちが全員乗り込むのを待つ。
ここに運ばれて来た時も乗ったはずなんだけど、覚えてないっぽいなあ。
「〜〜〜?」
「ん? ケット・シーたちがどこから来たかって? それ、俺もよくわからないんだよ。聞いてみたら?」
そんな会話をしつつ、転移エレベータのボタンをポチッと。
次の瞬間には……後ろ側の扉が開いて、制御室までの通路が見える。
ああ、そうだ。
「ニーナ。ケット・シーたちはしばらく預かるから」
[はい。了解しました]
そのやりとりに、当のケット・シーたちが驚いてるけど、説明はスウィーに任せておこう。
今日は外ルートを通り、沢の近くにあるブルーガリス(てんさい)を収穫していくので、右手の扉を開けて展望台へと出る。まずはいつも通りのお墓参りを。
「〜〜〜♪」「クルル〜♪」「ニャ〜」
「ああ、ありがとう」
スウィーとラズ、フェアリーズがいつものように花を供えてくれ、それを見たボス猫とケット・シーたちも同じように。
みんなでしばし黙祷し、さて。
「ルピ、お願い」
すっと前へ出るルピ。少し後ろに控えるレダとロイに、だんだんと背の高さも近づいてるし、なんか貫禄が出てきた感じ? まあ、まだまだ甘えん坊だけど。
「アオ〜〜〜〜ン〜〜〜」
ルピの澄んだ遠吠えが青い空へと消えていき、ほどなくしてドラブウルフの2家族が展望台へと集まってくれた。
「ワフ」
「「バウ!」」
「ありがとう。今日はちょっとお客さんが多いから、護衛を頼みたいんだけど」
ここから先、クリムゾンエイプやランジボア、ルーパグマが出る可能性があるので、護衛人数は多い方がいい。
「ニ、ニャ」
「クル〜……」
「〜〜〜……」
あ、うん、そりゃびっくりするよな。
ボス猫に若いケット・シーたちがしがみついて団子状態になっている。
ラズとスウィーが呆れながらも説明してくれてるみたいだし、そっちは任せてしまおう。
「えーっと、ルピは俺のそばにいてもらうとして……」
「ワフン」
俺を中心に見える範囲ぐらいで、ドラブウルフたちに囲んでもらう。フェアリーズもケット・シーもその外には出ないようにでいいか。
そういえば、ケット・シーたちって戦えるのかな? いや、病み上がりだし、無理はさせない方がいいか。あとでベル部長かセスあたりに聞いてみよう。
「えっと、これから山に入るけど、モンスターが出てくるかもだから気をつけてね?」
スウィーが通訳し、うんうんと頷くボス猫。そのまま若い子たちにも言い聞かせてくれてるっぽい。
「で、これはできればなんだけど、食べられる草とか木の実とか見つけたら教えて欲しいんだ」
そもそも猫って草とか木の実とか……猫草って美味しいから食べるんだっけ? 毛玉を吐くためとかいう話もあったような。
スウィーが説明してくれてる間に、ラズが肩まで駆け上がってきて、
「クルル〜?」
「もちろん、ラズもね。美味しい木の実とかあったら頼むよ」
「クル!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます