第358話 おやつなにかな

 水の精霊に頼み、コップに綺麗な水を。グリーンベリーをぎゅっと絞った果汁水を白竜姫様に出す。

 Mサイズとはいえ、あっという間に半分を平らげて、さらに次のピースへと手を伸ばす白竜姫様……


「とりあえず、続きにしようか」


『あ、はい。でも、みなさん気にしなくていいと』


 コメント欄は……白竜姫様のもぐもぐに癒されモードに入ってて、質問といっても『一人で来たの?』とか『保護者は?』みたいな感じに。


「〜〜〜♪」


 スウィーたちフェアリーズは、皆で4分の1を食べたところで満足なのかな?

 あとは白竜姫様にって気を遣ってくれてる気もする。


「じゃ、もう一品ぐらい作ろうか」


『はい!』


 これはまあ楽ちんなおやつ。

 モーブプラ(さつまいも)を細切りにして、フライパンで炒める。

 バター、砂糖を加えて全体に絡めてから、窯へと入れてしっかり火を通す。外はパリッと、中はもちっとが理想。

 最後に塩をぱらっとかけて、


【薬膳マスタリースキルのレベルが上がりました!】

【製菓マスタリースキルのレベルが上がりました!】


「ん、できた」


【(仮)モーブプラの石窯焼き】

『ウリシュクが育てたモーブプラの細切りを石窯で焼いたお菓子。(解説修正、追記可能)

 効能:VIT上昇+7%(2時間)

 料理名:(未定)、作成者:ショウ』


 これ、毎回設定する意味あるのかな? 俺が設定しても、それが広まらないと一般的な名称にならない気がするんだけど。


「えーっと、ミオン?」


『はい。「島のおいもスティック」でどうですか?』


「りょ。それで!」


【デイトロン】「<島のおいもスティック代:5,000円>」

【ナンツウ】「いいね! さっそく作る!」

【モルト】「ビールに合いそうじゃのう」

【フェル】「というか効能やばくね?w」

 etcetc...


「〜〜〜♪」


「おいも?」


「あ、ちょっと待ってね」


 一つパクッと食べてみて……美味しくできてるな。

 ただ、少し熱いかもなので、皿ごと軽く揺すって熱を飛ばす。


「熱いから気をつけてね」


「うん!」


 ふーふーしてからパクッと食べ、美味しさに頬を緩める白竜姫様。

 スウィーやフェアリーズは……ちゃんと風の精霊で冷ましてから、かじりついている。

 これはまだまだ作れるので、ルピたちやパーンたちにも作ってあげないと。


『ショウ君。そろそろちゃんとお話を聞いた方が……』


「りょ。えっと姫様、今日は一人?」


「アージェきてないの?」


 へ? どういう意味? アージェンタさん、こっちに来てるの?

 もう一度あたりを見回しても……いないよなあ。


「美味しいものを食べに行ったって聞いたの〜」


『ショウ君。みなさんのお話だと、アージェンタさんは死霊都市にいると……』


「……」


 そうだった! 本土の交流会中じゃん! バーミリオンさんがやらかさないように見に行ってるんだろうなあ。

 で、当然、白竜姫様は連れていけないからお留守番のはずだけど、この島に来てると思って追いかけてきた?


「えーっと、アージェンタさんは別の場所にいるって」


「むー。でも、もういいの」


 そう答えて、おいもスティックをぱくぱくぱく……


【マスターシェフ】「えー、こちら死霊都市。伝えた方がいいかい?」

【ロッサン】「ちょっ? どういうこと!?」

【ギシサン】「島にいるなら大丈夫でしょ〜」

【スキンコ】「え? 死霊都市でイベントやってるの?」

 etcetc...


 なんかコメント欄がカオスになってきた。

 この件に関してはスルーするつもりだったので、それはそれでいいんだけど、マスターシェフさんにはそれとなく伝えた方がいいかな。


「えーっと、白竜姫様は島で預かってますってことを伝えてもらえばいいかな?」


『いいと思います!』


 女神様がそう言うならそれで。

 おっと、追加が焼き上がったので、


「はい。こっちも食べていいよ」


 島のおいもスティックを追加で作ってパーンたちに配る。

 ルピたちはやっぱり肉だろうなということで、ベーコンも軽く炙ったものを。

 みんなが食べてる間に、料理道具を綺麗にしておこう。


『ショウ君。そろそろ時間になりますけど……』


「りょ。えーっと……」


【ロガッポ】「今日は歌ってくれますか?」

【シューメイ】「ショウ君の演奏でみんな歌って欲しい!」

【ルネード】「あ、こっちは放置でいいですw」

【ブルーシャ】「姫様も歌って〜」

 etcetc...


 そういえば白竜姫様って歌ったりするのかな?

 いや、竜族は音楽とか興味ないって話だったよな。だから魔導神楽笛が送られてきたわけだし。

 ま、気にしてもしょうがないか。


「じゃ、歌って終わりにしようか。ミオン、大丈夫?」


『は、はい!』


 立ったまま演奏するとミスりそうなので、裏口から庭へと続く階段に腰を下ろす。

 魔導神楽笛を出して周りを見回すと、ルピたちは準備万端でおすわりしてるし、フェアリーズは発声練習中?

 スウィーとパーンがウリシュクや、ラズたちカーバンクルにも声をかけて、みんなが俺を囲むように座る。

 すげー、プレッシャーなんだけど……


「じゃ、行きます」


 アシストは当然オン。選曲を待つことしばし……


【古代童謡<おやつなにかな>が選曲されました】


 うう、初めての曲。

 とにかく、大きなミスをしないように集中。

 テンポはちょっと早い? 童謡だしアップテンポの明るい感じか。


「「「〜〜〜♪」」」


 フェアリーズがおやつを前にした時のような、きゃっきゃした感じを歌い出し、


 タタタタン! タタタタン!


 カーバンクルたちがマローネの実でテーブルにリズムを刻む。

 そして、


「〜♪〜♪〜♪」「お〜や〜つ〜♪」


 スウィーと白竜姫様のデュオ!?

 びっくりしたけど、それどころじゃない俺。

 そして、


『お〜や〜つ〜♪ な〜にかな〜♪』


「「「ワフ〜」」」「「「リュ〜♪」」」


 ミオンが加わり、ルピたち、ウリシュクたちも合唱を始める。

 すごくいい感じだと思うんだけど、だんだんテンポが速くなってく曲だこれ!


 ………

 ……

 …


<終わりましたよー>


『お疲れ様でした!』


「お疲れ様でした……。はー、なんとかミスらずに終わった、よね?」


『はい。バッチリでしたよ!』


 ミオンのテンションが高い。

 生声でテンション高いのも珍しいけど、いい声してるんだよなあ。


「じゃ、もう少し草むしりしてから帰ろうか」


「リュ!」


 パーンが返事して、ウリシュクたちが草むしりへと。

 ラズたちはマローネの樹の方へ……うん、レダとロイが護衛についてくれるのね。

 スウィーとフェアリーズは白竜姫様とおしゃべりしてるんだけど……


『ドラゴンさん、どなたか迎えに来たりしないでしょうか?』


「どうだろ」


 マスターシェフさんからアージェンタさんに伝わってそうな気はするけど、だからと言ってすぐに来れるかというと……


<お二人ともー、それよりも大変なことが起きてるみたいですよー>

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