木曜日
第353話 忘れたままというわけにも
「俺らも行くから日時決めてくれ」
「は?」
お昼休み。外は今日も雨で教室での昼食なんだけど。
「竜族との交流会の日時、決めないとでしょう? テスト期間に入らないように、今週末とかがいいんじゃないかしら?」
「「あ」」
ミオンと二人して気づく。というか、その話、ちゃんと進んだんだ。
「例のギルド、えっと?」
「リヴァンデリ……?」
「そうそう、その人はオッケーしてくれたんだ?」
ミオンに助けてもらって、そう問うと呆れた顔で頷くいいんちょ。
確かに、昨日聞いてみるっていう話だったけど、そんな即オッケーが出るとか思ってなかったんだよ……
「で、週末の方がいいのか?」
「おう。社会人もいるんだし、平日よりは休日だろ」
「あ、そりゃそうか」
交流会、基本的にはプレイヤーが作った料理を食べてもらう感じで、それらの食材やら調味料をメインに取り引きができればという話に持っていく感じらしい。
終わりがいつになるか、まあ、ぐだぐだ続く感じなら土曜の方がいいよな。
「じゃ、土曜の午後8時からにしようか」
「わかった。って、お前、ライブの時間と被るんじゃね?」
「まあそうだけど、俺が行けるわけでもないし」
……実は行けるけど。
ナットが困ったようにいいんちょを見ると、
「いいんじゃないかしら。都市の内部はセーフゾーンでライブも見られるのよね?」
「ああ、なんかあったらライブのチャットで聞けばいいのか」
「おい。それはやめろ!」
いいんちょは冗談のつもりなんだろうけど、ナットはマジでやりかねないからな……
***
「お待たせしたかしら?」
「ちわっす」
『こんにちは』
放課後の部活はベル部長待ち。
いいんちょには、今度の土曜の午後8時からと伝えたから大丈夫だとは思うけど、一応、ベル部長とセスにも伝えとかないと。
「でいいです?」
「ええ、良いわよ。というか土曜日でいいの? 日曜にすればライブと被らなくていいと思うのだけれど」
とナットと同じ心配をされる。
『あ、日曜にして魔女の館のライブにした方がいいんでしょうか?』
「ああ、その手もあるのか」
「それは気にしなくていいわよ。日曜ならライブはおやすみしようかと思ってたもの」
ベル部長曰く、今回の交流イベントをオープンにしすぎると、それはそれで人が集まりすぎて制御不能になりそうで怖いとのこと。そりゃそうか……
「って、ゲームドールズの人たちには伝えるんです?」
「そこは状況を見て、マスターシェフさんにお任せかしら。私たちはあくまでサポートに回る方向で調整済みよ」
「うわ、なんかすみません……」
「何言ってるのよ。お願いしたのはこっちよ?」
と笑うベル部長。そういえばそうだった。
まあ、そういうことなら後はもうお任せして……アージェンタさんへの連絡は俺の役目だから、そこはきっちり手紙出しておかないとだな。
「じゃ、IRO行って、手紙出してきます」
「ええ、お願いね」
………
……
…
「じゃ、送信っと」
アージェンタさんに送った手紙には、今度の土曜日の午後8時からが希望で、俺から紹介できる人物として、セス(銀竜貨持ち)とマスターシェフさん(翠竜貨持ち)を推薦しておいた。
「大丈夫かな?」
『セスちゃんなら大丈夫ですよ』
まあ、ベル部長や『白銀の館』の大人の人たちもついてるから大丈夫だよな。
アージェンタさんには俺の妹だってこと、バラしておいた方がいいのかな? いや、なんで俺だけここにって感じになるし、何かのおりに「連れてきました」とかなりそうで怖い……
「あと1時間ぐらい?」
『です』
「じゃ、外は雨だし、結界魔法の魔導書でも読むかな」
ルピは外が雨なのを知って、自分の寝床でおやすみ中。
スウィーやフェアリーズ、ラズたちも今日は神樹でおとなしくしてるんだろう。
夜には雨止んでるといいんだけど……
………
……
…
【結界魔法スキルのレベルが上がりました!】
ふう、これでやっと4か。
『新しい魔法はどうです?』
「えーっとね。これがいいかな。<遮音結界>」
音を遮る結界が自分の周りに張られて雨音が消えた。
MP消費は最初に張る時と継続的に消費されてる感じかな。
『私の声は聞こえてますか?』
「あ、うん。ミオンの声はバッチリ」
『良かったです』
これって外の音を遮ってるのは間違いないけど、俺から出る音はどうなんだろう?
そっちも遮音してくれてるなら、隠密行動がまたやりやすくなるんだけどな。
「ま、いいか。次は……<遮光結界>」
俺の周りにうっすらと暗い膜が出来て……こっちからは見えるけど、向こうからだと見えづらくなるとかそういう?
「ミオンにはどう見えてる?」
『私からは普通に見えてます。でも、ライブだからかもです』
「こういう時に確認取りづらいんだよな。まあ、今度スウィーにでも聞いてみるか」
遮光結界をかけた状態で、カムラスのコンポートを出してみればわかるはず……
「もう一つは遮熱結界だけど、これは今度また鍛治をやる時にでも試してみるよ」
『いつも熱くて大変そうでしたから、魔法でなんとかなるといいですね』
「だね。スキルレベルも上がって一石二鳥かな」
あれ? 普段から魔素結界のスキル使ってれば、もっと早くスキルレベル上がったり……はしないか。
無意味にスキル使ってても、ほとんどスキル経験値入らないゲームだった。
『あ、ショウ君、そろそろ時間です』
「りょ。じゃ、上がるよ」
夜に雨が上がってたら、昨日の続きで草むしりかな。パーンたちの都合にもよるけど。雨のままだったら、本読み続行で……
「あ……」
『どうしました?』
「インベントリに転移魔法陣入れっぱなしなの忘れてた」
『あ!』
俺の心の中で、あの存在は無かったことにしたかったのかな。
ともかく……ここで出すのはまずいな。夜に大型転送室に行って出して、転移先をニーナに聞くか。
「うん。夜に調べることにして上がるよ」
『はい』
気持ち的にはすごく先送りしたいけど、インベントリ圧迫し続けてるのも問題だし、さっさと魔法解析して封印しよ……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます