第352話 見つけたくなかった物……
既に時間は9時半を越え、延長時間を含めて残り10分ちょい。
最後の扉は内玄関の隣、おそらく蔵だと思うので、ここを開けてキリのいいところで終わりにしたい。
「じゃ、開けるよ」
『はい』
通路から蔵前室への両開きの扉は開いていて、ここもまあネズミたちの住処の一つだった場所。
その奥にある両開きの扉、それぞれの取っ手を握って、いつもの返答をしてから押し開ける。
「うわ、なんだこれ。いろいろ詰め込みすぎだろ……」
とても整理されてるとはいえない感じにいろいろ積み上がっている。
棚、テーブル、椅子、大きな額縁に木箱……あまり価値のあるものはなさそう。
【ミナミルゲ】「詰め込みすぎなんよ〜」
【サブロック】「汚部屋だったか……」
【ピューレ】「ちょ、右に立てかけてあるやつ!」
etcetc...
『ショウ君。右側に立てかけてあるものを、鑑定してもらえますか?』
「ん? 右側の?」
視線を右に……それを見てフリーズしかけ、慌てて平静を装う……装えたよな?
「えーっと……」
【転移魔法陣】
『MPを注ぐことで乗っている人や物を、対となる転移魔法陣へと転移させる。
ただし、魔法陣の上に障害物などがあるときは安全の問題があるため発動しない。
個体番号:EE111981-C164-49A3-BC73-2551116A2B3E』
とりあえず立てかけられてて、かつ、倒れないように木箱が置かれてる時点で、ここに向かって誰か飛んでくることは不可能のはず。
ニーナに個体番号で問い合わせできるけど、それは今できることじゃないし、オープンにするつもりもないし。
『ど、どうしますか?』
「もちろん封印で。知らない誰かに来られても困るし」
【マッソー】「<ナイス即決!:1,000円>」
【ヨンロー】「べ、別荘経営に興味はないですか?」
【ドモス】「本土から繋がってるわけじゃないっしょ?」
【ウィズン】「くぅ、行ってみたい! だがしかし!」
etcetc...
なんかコメント欄は賛否両論? いや、封印に賛成の方が多いかな?
まあ、これに関しては妥協する気はないので、どんなコメントが来てもスルーで。ミオン以外の誰かを島に呼ぶつもりはないし。
「他のものはおいおい調べるとして、今日はここまでかな?」
『はい!』
………
……
…
<はいー。終わりましたよー>
「『お疲れ様でした……』」
俺もミオンも思わずため息をつく。
まさか最後の最後に転移魔法陣が見つかると思わなかった……
「ルピたちもお疲れ。スウィーもパーンもラズもね」
「ワフ〜」「「バウ」」
「〜〜〜♪」「リュ〜♪」「クルル〜♪」
まずは屋敷を出るか。蔵の中は扉のお陰でマシだけど、それ以外の場所は……
あとは転移魔法陣どうするかな。ここに置いといてもいいけど、万が一を考えるとちょっと怖い。
『ショウ君。転移魔法陣はどうしますか?』
「持って帰って地下の大型転送室で封印かなあ。処分しちゃってもいいのかもだけど、一応、魔法解析して転移先がわかるようなら?」
<あの蔵をもう少し調べてからでもいいんじゃないですかー?>
『え?』
「あー、なんか目録とかあるかもとかそういう?」
<ですですー。ひょっとしたらー、転移先の魔法陣もあるかもですしー>
『なるほどです!』
あの蔵のガラクタの中に、対になる転移魔法陣が埋もれてる可能性もあるのか。
まあ、とりあえず立てかけてあるこれは持って帰ろう。インベントリには……ギリギリ入りそう。
「よし、帰ろうか」
「ワフ!」
………
……
…
正面玄関を出て道に戻り、そのまままっすぐ教会へと帰ってきた。
セーフゾーンは結構広い範囲っぽい? いや、道の途中で教会の方のセーフゾーンとくっついてるのか。
「これって、教会の扉は閉めない方がいいのかな?」
『どうでしょう? 向こう側には誰もいませんし、閉めた方がいいんじゃないでしょうか?』
「あ、そりゃそうか」
ということで、きっちりと正門を閉めて、まずはみんなを労わないとかな。
「休憩にして、おやつでも食べようか。あ、その前にちゃんと手を洗おうな」
ルピたちの足を洗ってあげていると、畑作業をしてたフェアリーズやウリシュクたちも集まってきたので、いつもの場所でおやつタイム。
ルピとレダ、ロイにはランジボアのベーコンを。他のみんなにはグレイプルをその場でドライグレイプルにして渡す。
『ショウ君。あのお屋敷は修繕しますか?』
「うーん、綺麗にはしたいけど、立て直す方がマシなレベルなんだよな。あの周りがセーフゾーンになったから、畑をあっちにもって考えると、みんなが集まれる建物は欲しいし」
『いいですね!』
屋敷として使うというよりは、農作業の休憩所とかそういう感じにしたい。
裏庭を使って脱穀作業とかできそうだし。
「まずはセーフゾーンの確認からかな。まあ、他にもやることたくさんあるし、のんびりやるよ」
<もうすぐテスト期間ですからねー>
『はい』
「うっす」
テスト期間中は、天気良いなら魔導線の敷設をやって、雨だったら魔導書を読む感じでいいかな。
屋敷の方はとりあえず裏庭が使えるようになればいいか。
<今日の投げ銭額はいつもと同じぐらいですねー。もう少し緩くても良いかと思いますよー>
「りょっす。テスト明けまではペースダウンしてのんびりします。というか、ミオンの仕事の方も気になるし……」
『あ、そうですね。まだ椿さんから詳しい話は来てませんが』
魔王国アップデートでさっそくって話だけど、学生だしテスト期間中はダメって話も通ってるので、その後だろうと思うけど。
あと、持ち帰った俺の件ってどうなんだろ?
<ではー、私はこの辺でー>
「『ありがとうございました』」
さて、あと30分ぐらいはあるはずだし、畑の手伝いでもしようかな。
ごちそうさましたルピたちの食器を片付けようと思ったら、パーンが他のウリシュクたちを呼んで何事か相談中。
『どうしたんでしょう?』
「なんだろ?」
ドライグレイプルで口元が紫に染まってるスウィーを見ると、こっちこっちと手招きしつつ、ふわふわっと正門の方へ。
「もう一回開ければいいの?」
『忘れ物でしょうか?』
スウィーのいうままに扉を開け放つと、
「リュ!」
「「「リュ〜!」」」
パーンとウリシュクたちが突撃……というか、門を出たところから雑草を次々と抜いていく。
「うわ、これ教会の周りとかまで全部やってくれるつもりなの?」
「〜〜〜♪」
左肩に座るスウィーに聞くと、うんうんと頷き、左手でぐるーっとセーフゾーンの範囲をなぞる。
『おまかせしちゃっていいんでしょうか……』
「いや、さすがに俺がいない時はちょっと怖いな。っていうか、ルピ、レダ、ロイ!」
「ワフ!」「「バウ!」」
さっそく、周囲の警戒に走り出してくれた。
じゃ、俺も時間まで手伝うかな。
「パーン。綺麗にしてくれるのはありがたいけど、作業は俺がいる間だけな?」
「リュ」
頷いてくれるパーンにほっとする。
でもまあ、手伝ってくれるなら、二、三日あればこの辺は綺麗になりそうで助かる。
あとは石壁か柵とか作って、きっちりと防御力を上げないとだよな。
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