第337話 予想通りと予想外

「ふう……」


 教会の正門を閉じて施錠する。

 ほっと一息ついたところで、


【島民が100人を突破:5SPを獲得しました】


「あっ!」


【ゴッソル】「<島民キター!:500円>」

【イザヨイ】「<100人突破おめ!:1,000円>」

【デイトロン】「<祝! 島民100人突破:10,000円>」

【ニクス】「<カーバンクル加入おめ♪:1,000円>」

 etcetc...


「ど、どもっす」


『ありがとうございます。でも、ショウ君、テイムしたわけじゃないですよね?』


「うん。まあ、レダやロイの親兄弟もそうだし、別に不思議じゃないんだけど、やっぱりセーフゾーンに来たからかな」


 この教会までは『古代遺跡エリア』だと思うし。


「クルル〜♪」


「あ、くれるの? そんな気を使わなくていいのに」


 この子は助けた子かな? カーバンクルから大きな栗の実(もちろん中身の方)を受け取る。

 これ1個だけだと……スウィーに何か作ってあげるぐらいか。


『ショウ君。そろそろ時間です』


「じゃ、今日はここまでかな?」


【ジョンアフケ】「<おつかれさま〜♪:1,000円>」

【ハジキリー】「今日は歌は無し?」

【イズポン】「<次回予告あれば!:500円>」

【サック】「水曜ライブは探索の続き?」

 etcetc...


「あー、今日は笛持ってきてないので無しで。次回はどうするかな」


『トゥルー君のところに行かないとなんですよね』


「そうそう。えっと……」


 この前のライブの後、セルキーの里にお邪魔した話をして、その時に崩れて行けなくなってる洞窟の話を。

 あそこも土木スキルがあれば直せると思うんだけど、大工道具とか持ってなかったからなあ。雨漏りしないようにする方法も考えないと。


「まあ、そっちは明日明後日でなんとかしようと思ってるし、やっぱり水曜は探索の続きかな?」


 アズールさんが島に来たら、制御室まで案内しないといけないし、そのまま港まで行くのがちょうど良さそうな。

 せっかくだし、灯台も見てもらうとかお願いしてみよう。


【ギガノト】「うおー! そっちも見たい!」

【モルト】「両方見たいんじゃー」

【チョコル】「<飯テロ希望!:500円>」

【レーメンスキー】「せめて短編を……」

 etcetc...


「えーっと、そっちの様子はどうしよ?」


『ご飯や工事の様子は短編にまとめますね』


「うん、さんきゅ」


 トゥルーたちに何ご馳走するかも考えとかないとだな。


 ………

 ……

 …


<終わりましたよー>


「『お疲れ様でした』」


 いつもと違うライブだったけど、うまくやれたかな?

 正直、演奏の方が緊張するよな……


「「「クルル〜♪」」」


「おっとと」


 フードに収まってたカーバンクルたちが飛び出したかと思うと、グレイプルに向かって走っていく。


「リュ〜」


「〜〜〜♪」


 それを追いかけるパーンとスウィー。

 ウリシュクたちやフェアリーズに紹介してくれるみたいだし任せておこう。


「ワフ」


「うん。おやつの時間にしようか。レダとロイもおいで」


「「バウ」」


 スモークサーペント戦で頑張ってくれたし労ってあげないと。ランジボアのベーコンがあったはずだし、トルティーヤで野菜と巻いてあげよう。

 そういえば、コハクからパンが作れればBLTサンドとかもできるんだよなあ。いや、レタスがなかったっけ? まあ、キャベツで代用とかでもいいか。


「はい。今日もお疲れ様」


「ワフン」


「「バウ」」


 それぞれのランチプレートに2つずつ置いて、美味しそうに食べるのを見つつ、俺も1つパクッと。


「〜〜〜♪」


 スウィーとパーンが戻ってきたので、2人にはとろとろ干しパプを。


「クルル?」


「っと、カーバンクルもどうぞ」


 パーンの肩から俺の手へと飛び移った子が「食べてもいい?」と問いかけてくるので、もう一つ出す。


<気になったことがあるんですがー、いいですかー?>


「あ、はい。なんでしょ?」


 ヤタ先生、するっと落ちたのかと思ってたけど、そのまま見てたのか。

 いや、落ちる時には落ちるって言ってたっけ……


<ショウ君と妖精さんたちの意思疎通が良くなってませんかー?>


『あっ! 私もそう感じました!』


 え? そうかな……


「うーん、自分ではあんまり変わらないような……」


『そうですか? トゥルー君やパーン君の言葉もすぐに理解してた気がしますよ?』


<ですですー>


 そう言われるとそうかも……

 言葉を理解したっていうか、意図がすっと伝わって来た感じかな?


「なんでだろ? 確かに言いたいことを察せられるようになった気がするけど、その理由がいまいちわからないんだけど」


『あの……』


「あ、ミオン、何か思い当たる節ある?」


『えっと、翡翠の女神の使徒になったことに関係があるんじゃないかと……』


「あ、あー!」


 言われてみると、確かにアレがあった後からな気がする。

 称号って今まであんまり気にしなかったけど、実際のプレイに影響出ることあるのかな?


<女神の力の一端をー、みたいな感じでしょうかー>


「なるほど。妖精と意思疎通しやすくなるっていうのは、翡翠の女神の使徒だから?」


『だと嬉しいです』


 あの等身大の女神像をミオンにしちゃったし、翡翠の女神のイメージキャラをミオンがやることになりそうだもんなあ。


「〜〜〜♪」


「はいはい、おかわりね」


 ま、スウィーに関しては、それがなくても大体わかるけど……


〖シトロン王国が建国されました!〗


「『えっ!』」


 建国って死霊都市じゃないよな?

 だとすると、建国できそうなのって……氷姫アンシア?


『調べてきましょうか?』


「いや、いいよ。多分、ベル部長とセスが来るんじゃない? それまでは階段作りを進めるよ」


『はい』


 軽銀鋼で階段のステップは作ってあるので、あとは崖に掘削で穴を開けて差し込んでいくだけ。

 ルピたちが食べ終わったらさくっとやってしまおう。


<それでは私はこの辺でー。明日はおやすみですがー、夜ふかしはほどほどにー>


「『ありがとうございました』」


 明日はミオンのところに行くし、ほどほどにしとかないとだよな。

 あ、そういえば……


「明日のお昼って、前に話してた肉と玉子の炒り付けでいい?」


『玉子焼きもお願いします!』


「うん、いいけど。なんでまた……」


 セスのサエズッターで見たそうで、まあ、うん。

 作るの慣れてるしいいけど、お嬢様に一般庶民の玉子焼きって……白竜姫様も好きそうな気がするな。


 ………

 ……

 …


 強度を確認しつつ、慎重に崖にステップを差し込む作業を繰り返す。

 パーンたちが途中でソワソワし始めたのをなだめつつ、無事、崖上までの階段が完成。なんだけど……


「手すりが欲しいのって俺だけ?」


『高いところは手すりがないと怖いです……』


「だよね」


 山はだに手すり代わりのチェーンが渡されてることがあるけど、ああいう感じのをロープでとりあえず。チェーンは作るのはめんどくさい……

 あー、でも、いい加減、鍛治スキルの上限突破を考えてもいいのかな。上位スキルで複製のアーツがありそう。


『あ、部長とセスちゃんが来ましたよ』


「りょ。パーン、みんなで使っていいよ」


「リュ〜!」

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