第336話 念願の……

「リュ?」


「クルル〜」


「〜〜〜♪」


「ワフン」


 スウィーとパーンがカーバンクルの家(?)までの道のりを聞き、ルピがそれに従って先導してくれる。レダとロイは引き続き周囲を警戒中。

 俺はついていくだけの簡単なお仕事……


『あ、向こうに見える樹でしょうか?』


「ああ、あんなところに」


 カーバンクルが逃げてきた方向にしばらく進んだ後、裏庭っぽいところを出てやや左へと進路変更。

 その方向へまたしばらく進むと、来た時には気づかなかった大きな樹が見えた。

 なんか見たことあるような樹だけど……神樹ではないよな。


【クサコロ】「マローネの樹!」

【ケネス】「これはまた甘味が捗るやつ〜」

【エファン】「なるほど。ここに住んでたんだ」

【リーパ】「なんで降りてきたん?」

 etcetc...


『マローネ……栗の樹でしょうか?』


「ああ、見たことあると思ったけど栗の樹か! 栗が手に入ったら……甘露煮とかマロングラッセとか作れるんだけどなあ」


「〜〜〜……」


『スウィーちゃん、よだれが……』


 期待するのはいいけど、実がなってるとは限らないわけだし、カーバンクルたちの主食になってるなら、それを取っちゃっていいのかっていう問題が。

 ともかく、樹に飛び移れるところまで近づくと、


「クルル〜♪」


「あ!」


 カーバンクルがパーンの頭から飛んで俺の右肩へ着地。そのまま頭の上に駆け上がってからマローネの樹に飛び移ると、全速力で駆け上がっていく。


「あらら、巣に帰っちゃったかな」


 見上げた先は葉が生い茂っていて、あっという間に姿が見えなくなる。

 さっきの1匹しか住んでないのかな?


『ショウ君。みなさんが右手側を見るようにと』


「ん? 右手側?」


 見上げていた目線を言われるままに右へと向けると、少し離れた場所に見たことがあるようなないような草。

 稲とは違うよなと近寄ってみると……


「あ! これって小麦!?」


【コハク】

『大陸全般に生息し、平地にて栽培される植物。乾燥させた実を粉にしたコハク粉を目的に栽培されている。

 素材加工:コハク粉に加工可能』


 これでやっとパンが作れる!


【リーレーン】「コハクキタコレ!」

【マルサン】「ケーキ! モンブラン!」

【ケダマン】「グレイプルあるし、これでパンが作れるね」

【サメウラー】「うどん作ろう!」

 etcetc...


「少し刈って帰ろうか」


「リュリュ〜」


「さんきゅ」


 パーンが鎌をアピールするのは手伝ってくれるっていう意思表示だろう。

 おっと、その前に、


「ルピ、警戒続けておいてね」


「ワフン」


「「バウ」」


 既に距離をとってあたりを警戒してくれてるレダとロイからも返事が返ってくる。

 まあ、さっきのスモークサーペントがこの辺の主だった感じはあるし、新たなのが湧くまでは大丈夫だろう。


「〜〜〜?」


「ん? いいけど、気をつけてね?」


 スウィーがマローネの樹の方に行っていいかと聞いてくるのでオッケーを出しておく。

 パーンが器用にコハクを刈ってくれてる横で、俺も剣鉈を使ってコハク刈り。


「これって、刈ってからしばらく干して、あとは脱穀して粉にすればいいんですよね?」


【ユイオン】「そうなの?」

【アンチェ】「乾燥の魔法でいいよ」

【リソッス】「脱穀がめんどくさいんだよな〜」

【サクレ】「本土だとNPCにお任せできるけどね」

 etcetc...


『大変そうですね』


「まあ、それはしょうがないよ。そういうのも楽しむために、無人島選んだんだし」


 乾燥を魔法でできるだけでも十分だよな。

 脱穀は前にじいちゃんちの蔵で見た、稲の脱穀するやつを作ればいい? あれも回転の魔法とか使えば自動化できそうな気がする。

 あとは石臼でごろごろやれば粉になるはずだし、多少荒くてもなんとかなるはず。


「リュリュ〜」


「ん? ああ、パーンたちがやってくれる?」


「リュ!」


 どんと胸を叩くパーン。

 いつも畑仕事とか任せっぱなしだし、せめて道具ぐらいは俺が用意しないとだよな。


『パーン君やウリシュクさんたちがやってくれるみたいですね』


「ホント助かるよ。スウィーやフェアリーたちは採集の手伝いしてくれるし、トゥルーやセルキーたちはいつも干物とかオリーブオイルとかくれるしさ」


【クショー】「うらやますぐる……」

【フェル】「竜族も従えてるようなものだしw」

【デンガナー】「実質的に王様やしな!」

【カルローネ】「妖精の王っていうとオーベロンかな?」

 etcetc...


「〜〜〜♪」


「おかえり。もういいの? ん?」


 スウィーがこっちこっちと指差す方向を見ると……


「え?」


「リュ〜♪」


 マローネの樹の上に、ずらっと並んだカーバンクルがこっちを見ている。


「わあ……」


『たくさんいますね!』


 10匹以上いるよなあ……

 まあ、それはいいんだけど、スウィーがこっちこっちと呼ぶので、俺もパーンもマローネの樹の方へ戻る。


「クルル〜」


「え? ちょっ」


 降りてきたカーバンクルたちが俺の頭を伝って、マントのフードへと入っていく。

 で、入り切らなくなったら肩を占領し、それでも足りなくなって、今度はパーンの方へと。


「スウィー、カーバンクルたち、一緒に帰るって?」


「〜〜〜♪」


 いつものサムズアップが返ってきたので、そういうことなんだろう。

 ここにいるとスモークサーペントが怖いし、安全が確保できるまではスウィーたちのいる神樹にでも住んで貰えばいいかな。

 コメント欄が大盛り上がりしてるけど、それよりフードが引っ張られてつら……


「ル、ルピ、ちょっとレダとロイ呼んで」


「ワフ!」


「「バウ」」


「ごめん。ちょっと運んであげて」


 肩にぎゅうぎゅになって乗ってたカーバンクルは、レダとロイの背中へと移ってもらい、フードに詰め詰めだった子たちは肩へと。


【ブルーシャ】「うわーうわー♪」

【タイコスキー】「島民まだか!?」

【チャリンボウ】「可愛すぎぃ!」

【ヴェネッサ】「16匹ですかね?」

 etcetc...


 これはもう早めに帰ったほうが良さそう。


「じゃ、いったん教会まで戻るよ」


『はい。そろそろ時間になりそうですし』


「りょ」


 島民にカウントはされない感じなのかな?

 いや、幻獣もカウントされるはずだよな。ルピとかレダにロイ、ドラブウルフたちもカウントされてたし……

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