第335話 転がり込む幸運
「なんか、この辺りはもう屋敷の範囲なのかどうかわからないな」
『石壁が無くなってますね』
屋敷の側面に沿って真っ直ぐ続いていた石壁は裏手に出たところで途切れ、裏庭に入り放題みたいな感じになっている。
【サブロック】「この先全部裏庭!」
【ポルポール】「別荘地ならそんなもんじゃない?」
【ストライ】「家の裏が畑とかだと普通よ」
【セイキ】「綺麗に手入れすれば、境界っぽいのが見えるかも」
etcetc...
そういうものなのかな。
まあ、深く考えてもしょうがないし、裏庭を横切ってぐるっと一周するしかないか。
「バウ!」
「パーン!」
「リュ!」
ロイが強く吠え、雑草をまとめてくれていたパーンを慌てて呼び寄せる。
ルピとレダが周りを警戒しながらロイの方へ近づいていくのに合わせて、俺も感知共有をかけると……
「なんかでかいのがいる……。スウィー、フードに入ってて」
スウィーが左肩からフードへと飛び移ったのを確認し、剣鉈を鞘から抜き、円盾を構える。
今まで感じたことのないモンスターっぽいので慎重に。
「加護を」
精霊の加護が体を覆うと自然と集中力が増す。
感知した大きな何かは……蛇? 地面をするすると、結構なスピードで動いてくるんだけど、
「ん?」
その大きな何かの前に、小さい何かがいて、
「クルルッ!」
「えっ!」
飛び出した小動物が俺の足の間をすり抜けた。
それを追ってきた大物、かなり大きな薄黒い蛇が姿をあらわす。
【スモークサーペント】
『平原及び湿地に生息する大きな蛇のモンスター。大型の生物でも長い体で絞め落として丸呑みする。
料理:肉は食用可。素材加工:牙、骨、皮は各種素材となる』
ゆっくりとその鎌首を持ち上げるスモークサーペントなんだけど、思ってた以上にでかい。体長3mぐらいありそうだし、太さは俺の太ももぐらいある……
「ワフ!」
「「バウッ!」」
ルピの号令で、レダが左から襲い掛かり、それを避けたところにロイが右から襲い掛かる。が、体を捻ってそれらを避けるスモークサーペント。
でかいくせに器用に体を動かすので、それならと、
「樹の精霊!」
片膝をついて地面に手をあてると、生い茂っている草がうねり、スモークサーペントを縛ろうとする。が、
「シャー!」
「うわっ!」
ガキンッ!
大きな口を開けて襲いかかってきたのを、円盾で弾き返す。
「ガウッ!」
そこにルピのクラッシュクローがヒット。
地面へと叩きつけられたところをもう一度!
「〜〜〜!」
「ああ、そうか!」
スウィーに突っ込まれて、蔓に棘のついた植物、茨をイメージ。
そして、
「<加重>!」
蛇全体に加重の魔法をかけ、動きが鈍っている間に絞めあげる!
「ギィィ!」
絞め落とすのが得意な大蛇が、締め落とされないようにと激しく抵抗するものの、刺さった棘で抜け出すこともできず……っと、すごい勢いでMPを持っていかれてるので、早くとどめを刺さないと!
「ふう……」
【精霊魔法スキルのレベルが上がりました!】
【重力魔法スキルのレベルが上がりました!】
おっと、これで精霊魔法は9だっけ。
セルキーの呼び子のペンダントで10になってるし、あと1つ上げれば上限突破か。
『ショウ君、大丈夫ですか!』
「ああ、ごめんごめん。もう大丈夫」
【デイトロン】「<ナイス連携!:5,000円>」
【クショー】「ショウ君の精霊魔法やべー……」
【ネルソン】「重力魔法いつ取得したの!?」
【ドンデン】「ちっさい何かいなかった?」
etcetc...
さっそく解体しようかと思ったけど、なんか足もとをくぐった小動物がいたような?
ルピたちが周囲の警戒をしてくれてるのを確認して振り向くと、
「リュ〜♪」
「クルル〜」
「え?」
パーンの頭の上に座ってるのはリス?
なんか額に真っ赤な石がはまってるっぽいんだけど。
【カーバンクル:警戒】
『幻獣カーバンクル。黄金色の体毛と額に宝石を持つリス。
幸運を呼ぶ幻獣とされ、乱獲された過去がある』
【ベアメン】「可愛い〜〜〜♪」
【シューメイ】「おおおお!」
【ナージャ】「ばよえーん!」
【ドラムン】「パーン君との組み合わせがヤヴァイ!」
etcetc...
「リュ〜?」
「〜〜〜♪」
なんか食べ物を渡せって言われてる気がするので、とろとろ干しパプを……
あ、うん、スウィーとパーンの分もね。
「あ、良かった。食べてくれてる」
『可愛いです〜』
【フェル】「また餌付けしたw」
【リンレイ】「甘味には抗えない……」
【コクド】「保護しよう!」
【マリオネラ】「この子だけなの?」
etcetc...
そういえばそうだ。
一心不乱に食べてくれてるところを見る感じ、食料を探しにきて、あのスモークサーペントに見つかって逃げてきた感じなんだろうけど、他にもカーバンクルいそうな気がする。
「他にも仲間っている?」
「〜〜〜?」
「クルルン」
スウィーが通訳してくれてるっぽく、どうやら他にも仲間がいるらしく頷いている。
うーん、ここの生活がいいなら無理にとは言わないけど、スウィーがいる盆地の森か、パーンがいる崖上の森の方が安全な気がするんだよな。
「リュリュ?」
「〜〜〜♪」
「クルル〜」
パーンがどうやら移住しないか聞いてくれてるっぽい。で、スウィーもそっちの方がいいよーって感じ?
『どうしたんでしょう?』
「あ、なんか、話してるみたいだから、ちょっと待ってね」
とりあえず、ルピたちは……ちゃんと警戒を続けてくれてるみたいだな。
今のうちにスモークサーペントを解体。っと精霊の加護は解除しておこう。
そういえば、さっき樹の精霊魔法で……残ってるな。鑑定してみると【エクローザ】っていう野生の薔薇らしい。
このまま水やりすれば育つのかな? いや、後々、綺麗にするだろうし今はいいか。
「リュ〜♪」
「ん? 決まった?」
「〜〜〜♪」
スウィーが肩に飛び移り、カーバンクルが来た方向を指差す。
なるほど、あっちにまだ仲間がいるってことかな?
「ミオン、時間大丈夫?」
『はい。あと20分ありますよ』
「じゃ、行ってみるよ」
【ノンノンノ】「カーバンクルの里へ!」
【ルコール】「クルルかわよ〜」
【マシェリ】「島民ゲットチャ〜ンス♪」
【ナンツウ】「助かる!」
etcetc...
あ、そういえば、あと10人ぐらいで島民100人超えるかな?
また褒賞あると嬉しいけど……
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