第334話 探索開始

『それでは、島につなぎますね。ショウ君、ルピちゃん、スウィーちゃん、パーン君〜』


「ようこそ、ミオン」


「ワフ〜」「〜〜〜♪」「リュ〜♪」


【マーサル】「パーン君っ!」

【シェケナ】「パーンくんキタワー!」

【ジョント】「リュリュ〜♪」

【シャルラン】「今日は教会裏?」

 etcetc...


 パーンもトゥルーに負けないぐらい人気なんだよなあ。

 トゥルーとは違ったワイルドな可愛さ(?)があるからなのか……


『ショウ君。今日の予定をお願いします』


「うん。えっと、今日は教会の正門を出て、ちらっと見えてた廃屋のあたりまでを調査しようかと思ってる」


 その言葉にコメント欄が盛り上がる。

 なんかまた「やらかし?」ってワードがちらほらと……


『今のメンバーで行くんですよね?』


「うん。パーンもついていくって話だから、気をつけるし、無理はしない方向で」


 ま、さくっと行って帰ってくる感じでいいかな。

 時間が余るようなら、戻ってきてから甘味テロでもいいし。


『気をつけてくださいね?』


「りょ」


 俺が立ち上がる前に、ルピがあぐらを飛び出して一声吠えると、伏せていたレダとロイがシャキッと起き上がる。

 真面目だなあとルピ、レダ、ロイと頭を撫でてあげてから、正門へと。


「ふぅ……」


 一つ深呼吸をしてから、正門に手を添えると、


【祝福を受けし者のアクセスを確認しました。解錠しますか?】


「はい」


 いつもの問いに答えてから、ぐっと両開きの門を押し開く。


「うん。大丈夫そうかな?」


『そうなんです?』


「少なくとも、アーマーベアがいた時の森みたいな、変な雰囲気でもなさそうだし」


【ダサトシ】「そんなのわかるの!?」

【メイケ】「あー、気配感知持ってると察するよね」

【バイタミン】「斥候担当には必須よな」

【ガーレソ】「マジか! 気配感知取るかな……」

 etcetc...


 ああ、あれって気配感知スキルの効果もあったんだ。

 今ってレベルMAXになってるし、何かしら上限突破の方法があればなんだけどなあ。


「ワフ?」


「うん。お願い」


 ルピが先行し、左右に少し離れてレダとロイが。

 正門から続く緩やかな下り坂は、年季の入った石畳なんだけど、隙間から雑草が生えていて、あまり見栄えは良くない。

 ただ、道幅は門と同じぐらい広くて、これは馬車が余裕を持って通れるサイズって感じかな?


『道は見通しがいいですね』


「だね。ただ、道を外れると雑草がひどいけど……」


【ピューレ】「街から田舎への街道とかそんな感じよー」

【トネン】「雑草は鑑定しても雑草なんだよなー」

【ガフガフ】「草刈しよう!」

【カリン】「ヘビとかカエルのモンスターに気をつけてね〜」

 etcetc...


 雑草に紛れてモンスターいるのか。

 ルピたちがしっかり気をつけてくれてるっぽいけど、俺も用心しとかないと。


「〜〜〜♪」


「リュ〜♪」


 スウィーとパーンは特に緊張感もなく楽しそうにしてるけど、注意するのもなんだしいいかな。

 ちなみにパーンは武器として草刈り用の鎌を腰に下げている。

 モンスターが出てきた時に使うつもりなのか、本当に草刈りのために使うつもりなのかは不明だけど、無いよりはいいかなと。


「んー、思った以上にでかい屋敷だけど……ボロボロだなあ」


『屋根も壁板も割れちゃってますね』


【ユイオン】「劣化っていうか壊されてる感じ?」

【ナンツウ】「もうちょい近づいて欲しい」

【クランド】「台風とか?」

【ディアッシュ】「この島って雨降るよね?」

 etcetc...


 ああ、台風とかそっちでって可能性もあるのか。


「えっと、この島はたまに雨降ります。土砂降りだったりすることもあったけど、台風みたいなのは無かったかな」


『風がすごいのは無かったですね。本土ではあるんでしょうか?』


 ミオンとコメント欄のやりとりを横目に見つつ、さらに近づいていくと、屋敷を囲う膝丈の石垣があって、その上は今は雑草がぼうぼう。生垣があったってことかな?

 そのまま進むと屋敷の入り口があり、ここは2m弱の石柱に挟まれた格子の門扉があるが、錆びて半開きになってるっていう……


「うん。平屋だけど、かなり大きい」


『どういう目的で建てられてたのか気になりますね』


「だよね」


 盆地の山小屋は古代遺跡の管理の人のためにあった感じだけど、この家は何のためにって感じだよな。


「まずは外側をぐるっと一周してみるよ」


『はい。気をつけて』


 コメント欄をちらっと見ると……いや、うん、集中しないと。

 入り口を通り過ぎ、そのまま道なりにまっすぐ進むと、やがて屋敷の端で石畳の道もそこまでしかない。

 ぐるっと一周するとなると、通れる分ぐらいは雑草をなんとかしないとだよな。となると……


「ルピ、周り何かあったら教えてね」


「ワフッ!」


「「バウ!」」


「じゃ、<掘削>」


 草刈りを真面目にやると大変なので、掘削の魔法で1m四方の地表を5cmほど削る。

 根っこの支えを失った雑草があっさり倒れてくれるので、それを脇へと避ければ草刈り完了。


【ニクス】「ワザマエ!」

【キラル】「使い方うますぎるw」

【ツノエイ】「新しく畑作る時とかやるやる」

【クラゲリオン】「土木魔法、応用範囲多いなあ」

 etcetc...


「リュ〜」


「お、さんきゅ」


 パーンが掘り返された雑草をまとめて、脇へとよけてくれるのが助かる。

 MP回復のこともあるので、1mずつ区画を綺麗にして進むと、屋敷の裏側に届くところで勝手口? の扉が見えた。


「なんか怖いなあ……」


『ですね……』


【カンカンポ】「開けてみる?」

【クラスケ】「アンデッドはもうこりごりだよぉ〜」

【ラッカサン】「虫の方がいやだなあ」

【ミイ】「やめません? 黒いあいつとかいたら放送事故ですよ?」

 etcetc...


 あああああ、黒いアレは俺も勘弁して欲しい。

 モンスターでも絶対戦いたく無い相手……


「うん、あと回しに。とりあえず、開いたらわかるように石壁でも置いとくよ」


『はい』


 扉が開いたら石壁に引っかかるように、小さな石壁レンガを三つほど出して扉の前に積んでおく。これで虫とかなら開けられないはず……

 そのまま裏手へと出ると、その先に見えたのは荒れまくった裏庭。


『裏庭があるのは普通だったりするんでしょうか?』


【スクナ】「お貴族さまの屋敷とかだけだよ〜」

【ペザンテ】「庶民はだいたい2階建てが詰まってるところに住んでる」

【フリテー】「つまり、ここは貴族のお屋敷?」

【イザヨイ】「別荘とかなんじゃない?」

 etcetc...


「ああ、別荘かー」


 ここが別荘地だった可能性は確かにあるかも?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る