第333話 準備ちゃくちゃく

『ショウ君。転送箱が』


「お、手紙来てる」


 夜のIROはちょっと早めの7時45分にログイン。

 8時半からのライブに備えてなんだけど、その前にアージェンタさんからの手紙をチェックしよう。

 転送箱を開けると手紙と本が2冊。これは……


「結界魔法と重力魔法の魔導書!」


『やりましたね!』


 結界魔法はベル部長がもう取得済みだったよな。重力魔法はどうなんだろ?


「こう言っちゃなんだけど、ワールドクエストでSPすごく増えて良かった」


『ショウ君がすごく頑張った結果ですよ?』


「まあ、そうなんだけど……」


 本来、無人島はワールドクエスト不参加扱いだったのを、俺がいろいろやらかしたせいな気がするしなあ。今さらだけど。

 ワークエ褒賞前の残りSPが16。ワークエ達成とトップ100位以内で30増えてて46。

 どっちもレアスキルだから、ワークエの褒賞なかったら両方は取れなかったし、ありがたく使わせてもらおう。

 と、その前に手紙を確認……


『ショウ様


 先日は大変お世話になりました。

 また、カムラスの甘味だけでなく、クルビータの甘味やグレイプルワインもいただき、感謝に堪えません。


 お礼にはとても足りませんが、ご要望いただいていた結界魔法の魔導書と重力魔法の魔導書を送らさせていただきました。ご活用くださいませ。


 また、ショウ様から提案いただいた魔晶石のサイズ調整の可能性についてですが、アズールが詳しいことを聞きたいということですので、相談に伺ってもよろしいでしょうか?

 都合の良い日時をお伝えいただけると幸いです。


 お手数をお掛けしますが、よろしくお願いいたします』


 お試しだったクルビータ(カボチャ)のプリンも気に入ってもらえたようでなにより。

 それはいいとして、アズールさん来たがってるのか。

 この前、ニーナと話したいとか言ってたし、こっちに来るネタとしてちょうど良かったのかな。


「うーん、アズールさん迎えるなら明日か明後日の夜とかかな? ライブの後に返事すれば間に合うよね?」


『大丈夫だと思います』


 白竜姫様がついて来そうだし、甘味の用意もしておくか。

 そっちはいいとして、


「先に結界魔法と重力魔法を取得しよう」


『はい。また先駆者褒賞がもらえるといいですね』


「結界魔法はベル部長が取ってたし、重力魔法の方に期待かな」


 というわけで、それぞれ9SPを消費して取得。これで残りSP28。

 全然余ってるよな、これ。


「さて、スキルレベル1で使える結界魔法は……<魔素結界>か」


『どういう効果なんですか?』


「えーっと、魔法攻撃を防ぐんだって。魔法障壁の立体バージョン?」


『それって消費MPが凄そうな気が……』


「とりあえず試しに使ってみるよ。えーっと、これか。<魔素結界>」


 そう唱えると、自分の少し外側に薄い膜のようなものができた。これがその魔素結界なんだろう。


「ワフ?」


 ルピがその魔素結界に手を出してみるんだけど、するっとすり抜けて不思議そうな顔をしている。可愛い。

 一度発動しとけば維持を意識する必要もないけど……


「あ、動いても大丈夫だ。てか、これ他のこともできるから意外と使いやすいかも?」


『でも、どれくらい防いでくれるかわかりませんよ?』


「そうだった」


 MP消費量的に一発で飛びそうな気がする。

 その一発を完全にチャラにしてくれたりは……しないだろうなあ。ちょっとダメージ減らしてくれるぐらいかな?


「まあ、いいや。次は重力魔法を……」


『どうしました?』


「えっと、加重っていう重力を増やす魔法っぽいから、壊れてもいいものを探さないとかな」


 蔵に端材があったよなと外に出ると、山小屋の前でお座りして待っていたのはレダとロイ。

 俺とルピが出てくるのに気づいて待っててくれた模様。


「ありがとな」


「「バウ」」


 軽く2人の頭を撫でてから、端材を探して……あった。


『重くなる魔法ですよね?』


「多分?」


 実際には重くなるというよりは、地球……じゃなかった、アイリスフィアの引力が強くなる? ……細かいことはいいか。


「じゃ、試すよ。<加重>……おおっ!?」


『ショウ君?』


「いや、ちょっと調整が難しくて」


 急に倍ぐらいの重さになるのでびっくりする。

 で、MPを注ぎ込むとさらに重くなるんだけど、それでびっくりしてやめると急に元の重さに戻ったりして……使いづらい。


「いまいち使い所が……、ああ、オリーブを絞る時とかにいいかも」


『うふふ、ショウ君らしい使い方です。あ、先駆者褒賞が出ませんでしたよね?』


「出なかったね。誰か先に取ってたってことだよな。ま、俺ばっかりもらうのもあれだし、ライブで聞いてみようか」


『はい!』


 ………

 ……

 …


 教会の玄関に腰を下ろすと、ルピがあぐらの中へ。

 レダ、ロイは左右に控え、スウィーはいつも通り左肩に座り、ドライグレイプルを頬張っている。そしてもう1人。


「リュ〜♪」


 パーンが俺の右隣に座っている。

 今日の探索につれていくつもりはなかったんだけど、本人がどうしても行きたいみたいで……


『ショウ君。パーティーを確認しておいた方が』


「っと、さんきゅ」


 何かあった時のことを考えると、みんなをパーティーメンバーにしておかないと。


【ショウのパーティ】

 ショウ、ルピ、レダ、ロイ


「あぶね。ルピたちしか入ってなかった。スウィー、パーン、パーティ入ってくれる?」


「〜〜〜♪」


「リュ〜!」


 俺が差し出した手のひらにタッチする2人。


【ショウのパーティ】

 ショウ、ルピ、レダ、ロイ、スウィー、パーン


「おっけ。そろそろ?」


『はい。あと5分ほどです』


 装備品は何度もチェックしたので大丈夫。

 あ、今のうちにカムラスのコンポート、みんな一つずつ食べておくか。


「〜〜〜!」


「はいはい。女王様からどうぞ」


 まったく、小さい体のどこに甘味が消えるのか。

 次にパーンも一つぱくっと食べて嬉しそうにしてくれる。

 そして、ルピ、レダ、ロイの順に一つずつ。最後に俺。


『あと1分を切りました』


「りょ」


 今日はいつもと違うので、ちょっと緊張。

 できれば面倒なことが起きませんように……

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