第330話 合金と便利グッズ

「ふう……。今って9時半ぐらい?」


『はい。少し前ですよ』


「りょ。俺はこのあと鍛治やるから、ルピたちは好きに遊んできていいよ」


「ワフッ!」


 作業室の入り口前でルピたち、スウィーたちと別れる。

 天気が良い時はできるだけルピたちと散歩というか、運動しておこうと思って、南側を駆け足で回ってきた。

 まあ、駆け足といっても、途中で見つけたチャガタケだったり、キトプクサだったり、パプの実なんかは採集しつつだけど。


『合金を作るんですね?』


「うん。アズールさんに教えてもらった『魔導鋼』のインゴットをまず作らないとね」


 錬金術の本によると、魔導鋼は、銅6、軽銀2、鉄1、魔銀1の割合の合金。

 それぞれの鉱石をこの比率で入れても良いんだけど、それよりはインゴットでやる方がわかりやすく、出来上がる魔導鋼インゴットも多いそうだ。

 そりゃそうか。鉱石からインゴットにすると目減りするもんな。


「えーっと……」


 こういう時のために、いろいろなインゴット用意しておいて正解だった。

 それぞれ銅30、軽銀10、鉄5、魔銀5を放り込んで起動。


【古代魔導炉:作動中:魔導鋼インゴット:完了まで約30分】


『あ、何ができるか見えるようになりましたね!』


「錬金術スキル取ったおかげかな? どうせなら、醸造器みたいにレシピ出してくれればいいのにね」


『スキルレベルが上がると出るかもですよ?』


「ああ!」


 魔導醸造器だと料理スキル判定で出てた可能性がありそう。

 ともかく、これで30分待ちなので、


「待ってる間は錬金術の本を読むよ」


『はい!』


 ………

 ……

 …


【錬金術スキルのレベルが上がりました!】


「お、上がった」


『おめでとうございます。そろそろ30分ですよ』


「りょ」


 火床用の耐熱手袋をつけつつ魔導炉を確認。


【古代魔導炉:精錬完了】


「おっけ」


 扉を開けると、うっすらと青く光るインゴットが5本。


【錬金術スキルのレベルが上がりました!】


『おめでとうございます』


「さんきゅ。これでも上がるんだ」


 まあ、5まではすぐって話だからいいか。

 大丈夫だとは思うけど、さっそく出来上がったインゴットを鑑定。


【魔導鋼インゴット】

『マナ伝導率が高く、魔導具の材料として使われる魔導鋼のインゴット。

 鍛治:魔導具などに加工が可能』


「おお、ばっちり!」


『やりましたね!』


「これを線にして、山小屋まで敷設すれば良い感じかな」


 線にするだけなら、そんなに手間じゃないし、敷設自体は細い溝を掘削して埋めてから、土を戻せば良いだけだよな?


『さっそく魔導線を作りますか?』


「うん。軽銀鋼インゴットの追加を仕込んでかな」


 軽銀鋼はアルミ合金っぽい……ジュラルミン? 教会裏からウリシュクの集落に行くための階段用に。

 軽銀8、銅1、魔銀1の割合なので、それぞれ軽銀40、銅5、魔銀5を放り込んで精錬開始。

 時間は変わらず30分なので、その間に魔導線を作ってみよう。


「……これ普通に針金みたいにすればいいのかな?」


『ニーナさんに聞いてみるのはどうですか?』


「あ、それだ。ニーナ。魔導鋼を針金にしてつなげば、教会みたいに離れた場所でも大丈夫になるって感じ?」


[はい。直径2.0mm以上の魔導鋼であれば問題ありません]


 まあまあ細くても大丈夫なのはいいけど、細すぎるとポッキリ折れそうな気がするな。

 あ、でも、銅の成分が多いから曲げられるかな?


「ニーナ。魔導線って曲げられる?」


[はい。曲げることは可能ですが、曲げすぎると折れますので注意が必要です]


「なるほど……」


 制御室につながる通路が崩落してたけど、あの時は魔導線が折れてたんだろうな。

 まあ、無理に曲げるよりも、曲げたパーツも用意しておいて繋ぐ方がいいか。


『ショウ君。作った線はどうやって繋ぐんでしょう?』


「あ、確かに……。うーん、ジョイントパーツを作ればいいのかな?」


『ジョイントパーツ……ですか?』


「うん。両方に差し込める口がある感じのパーツって言えばいいのかな」


『なるほどです!』


 というか、曲がってるジョイントパーツを作っておけば、あとは真っ直ぐだけ用意すればいいのか。

 ……ん?


「ちょっと思ったんだけど……。ニーナ。非常用魔晶石の2割ぐらいで再起動できたけど、あれって全部マナを充填する必要ってあるの?」


[状況によります。保全状態からの再起動の場合は2割ほどになります。停止状態からの起動には7割以上のマナの充填が必要になります]


 停止から起動する時にそれだけ必要になるから、その時のためでもあるのか。

 確かに1人が瞬間的に出せるMPとしては、無茶苦茶な量だもんな。それでもアージェンタさんとかなら可能なのかもだけど。


『どういうことでしょう?』


「うまくいくかどうかわからないんだけど、死霊都市の教会の地下にあった制御室って、非常用の魔晶石が無かったよね」


『はい。すごく大きいサイズの魔晶石が必要なんですよね』


「そうなんだけど、魔導鋼でアダプターみたいなものを作れば、もう少し小さい魔晶石でも代わりにできたりしないかなって」


『あ!』


 アダプターっていうかスペーサー?

 そんなうまくいくかなってのはあるし、アージェンタさん、いや、アズールさんあたりに聞いてみないとかな。


「ニーナ。今、非常用魔晶石外したら機能停止しちゃう?」


[いいえ。機能停止はしませんが、何かしら不具合があった場合は直ちに保全状態へと移行します。非常用魔晶石がある場合は、保全状態に移行するまで30日猶予があります]


「正しく非常用なんだ」


『ですね』


 うーん、そういうことならニーナの非常用魔晶石を外すのは躊躇われるなあ。

 何かしら不具合は、まあ起きないとは思うんだけど、起きた時が怖いし……


「アージェンタさんたちなら、ニーナの非常用魔晶石と同じサイズのやつ、持ってたりしないかな……」


『放課後にお手紙を出せませんでしたし、一緒に聞いてみるのはどうですか?』


「あ、そうだった」


 カムラスのコンポート作ったり、とろとろ干しパプ作ったりしてるうちに時間になっちゃったからな。


「ま、ともかく魔導線を作るよ。あとジョイントパーツ」


『はい!』


 死霊都市が国にならないんなら、転移魔法陣は固定解除したら回収かなあ。

 アージェンタさんに結界魔法と重力魔法の魔導書もらって、転移まで覚えた方が早そうな気がしてきたし、催促してみるかな……

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