金曜日

第329話 問題のタネ

 放課後。港から戻ってきてほっと一息。


「ふう、ただいまっと」


「ワフ」「「バウ」」


「〜〜〜♪」「「「〜〜〜♪」」」


 昨日はあの後、セルキーたちのオリーブ摘みの手伝いとかをしてから、港に戻って一泊してきた。

 帰りにワインの中樽を大型転送室にある魔導保存箱に入れてきたんだけど、カムラスのコンポートも作らないとなんだよな。


『ショウ君。次のライブは教会の正門を出ますか?』


「そのつもり。でもまあ、軽い様子見ってぐらいで済ませる予定だけど」


 ライブ時間内に行って戻ってくるとすると、正門を出て、見えてた廃屋(?)を調査するぐらいで終わりかなと。


『危なくないといいんですが……』


「見えてる範囲に行くだけだし、大丈夫だと思うよ。ルピだけじゃなくて、レダにロイもいるからね」


「ワフン」


「「バウ!」」


 いい返事をくれた三人をしっかりと撫でて、さくっとご飯にしておこう。

 おっと、スウィーたちには、とろとろ干しパプでいいかな。


『今日の夜はその準備ですか?』


「うーん、準備はそんなにいらないかなって。今日はそれよりも魔導線のための合金を作ろうかなって」


『なるほどです。錬金術のスキルが上がれば、もっといろんな金属が作れるかもですね』


「うん。パーンのところに行くための階段とか、トゥルーのところの洞窟につける屋根とかもあるしね」


 軽くて強く、錆びない金属。魔銀ミスリルがそうかもだけど、コスパが悪すぎるので、鉄と軽銀、銅あたりで作れればなあと。


「あとはそろそろ剣鉈とかナイフとかも良くしたいかな」


『弓もありますよ』


「そうだった。軽い金属で、かつ、しなりがあるようなのって作れるのかな? その前にワイヤーが作れるか試した方がいいかもね」


『ロープをさらに良くするんですね』


「そそ」


 罠のスキルも作成が6、設置・解除が7で止まってたなあ。

 これって、やっぱり同じ罠を同じような場所に仕掛けてるからだよな。

 ゴブリンを殲滅した時にいろいろ作ったけど、ああいうのまたやってみるか……


 ………

 ……

 …


「ただいま」


『おかえりなさい』


 時間ギリギリにリアル部室に戻ってくると、珍しくベル部長が先に戻ってきていた。

 ヤタ先生は変わらず何か……多分、期末テスト関連なんだろうなあ。


「戻ってきたわね。ちょっと質問があるのだけどよろし?」


「あ、はい。何でしょ?」


「死霊都市で転移魔法陣が見つかったそうなのよ」


「へえ……」


 ベル部長の話だと、南側の教会の前、崩れてしまっている塔の瓦礫を撤去したところ、何枚かの転移魔法陣が見つかったらしい。

 まあ、うん。俺が行った塔にも、俺が使ったのとは違う転移魔法陣があるって、アズールさんが話してたもんな。


『それって動いたんですか?』


「いえ、それがどれもダメらしいの。その理由ってわかるかしら?」


「えっと、心当たりというか、鑑定結果にあった『転移先の魔法陣の上に障害物があるとダメ』ってやつだと……」


 その答えになるほどという顔のベル部長。


「でも、それって俺が最初に見つけた時の鑑定にも書かれてましたよ」


「あら、そうなのね。私も死霊都市に残ってる人たちからの噂を聞いただけなのよ。ごめんなさい」


「いえいえ、なるほど」


 ベル部長たちはもうアミエラ領に戻ってるんだっけ。

 ナットも奴のギルメンもラシャード領に戻って、ノームの里の奥にある古代遺跡、通称『古奥のダンジョン』にアタックしてるらしいし。


『その転移魔法陣がどこに繋がってるかはわかるんでしょうか?』


「さあ? 使ってみないとわからないんじゃないかしら?」


「見つけたやつが使えるかどうか試したってことは……」


「試したんでしょうね」


 とベル部長も呆れ顔。

 よくやるなあと思うものの、ゲームなんだしデスペナ覚悟で、落ちる前に試すとかはありだよなと。


「ちなみにそれって持ち運べるものなんです?」


「どうかしら? そこまではわからないけど、ショウ君の島にあったのはどうなの?」


「あ、山小屋にあったのは動かせたので、万一を考えて地下に移動しました。あそこなら何かあっても隔離できるんで。で、ニーナに固定してもらってますね」


「固定してもらってる? ニーナっていうのはダンジョンコアみたいな存在よね?」


「ええ、そうっすね」


 これちょっとやばい情報だったかな?

 いや、でも、話しておいた方がいいか。他の古代遺跡でも見つかる可能性あるし。


「魔導具自体をその場から動かなくする感じですかね。転移魔法陣とかって場所変わるとまずい道具だし、あと保存箱とかも盗難を考えると固定しておくべきとか?」


「へえ、面白いわね……」


 俺の説明に何か考えてるっぽいベル部長。


『部長?』


「ああ、ごめんなさい。そういう転移魔法陣が本土でも見つかったとなると、今後、その運用で揉めるんじゃないかと思ったのよ」


「あー……、揉めるでしょうね。なんだかうやむやになってますけど、帝国と公国の話も片付いたわけじゃないですし」


「まあ、それも転移魔法陣が使えてからの話よね」


 だよな。

 結局、その転移魔法陣がどこに繋がってるか次第だし。


『あの……、その見つかった転移魔法陣はどうなるんでしょう?』


「ゲームドールズのファンの人が見つけたそうだから、彼女たち次第だと思うわ」


「……大丈夫なんすかね?」


 無人島スタートでやらかしたからなあ……

 ベル部長も苦笑いしつつ、


「まあ、使えないうちは大丈夫なんじゃないかしら。それよりも、ショウ君のところの転移魔法陣に誰か現れるかもしれないし、注意した方がいいわよ?」


「あ、それはもうちゃんと石壁を上に置いて蓋してあるので」


 ワールドクエストが終わって帰ってきた後に、しっかりと石壁を置いて使えなくしておいた。

 次に使うことがあるとしたら、ミオンを迎えにいく時かな……

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