第328話 セルキーの里へ
夜のIROはさっそくトゥルーたちセルキーの里へ。
「よし。じゃ、ちょっと行ってくるけど、今日のうちに帰ってくるから留守番よろしく!」
「「バウ〜」」「「「〜〜〜♪」」」
レダとロイ、フェアリーズに見送られて、いざ出港。
トゥルーが先導し、セルキーたちに担がれた筏に乗って離岸する。
「風が気持ちいいな!」
「ワフ!」
「スウィー、飛ばされないように気をつけて」
「〜〜〜♪」
スウィーの第二の定位置、フードの中から返事が聞こえてきた。
まあ、本当に飛ばされそうになったら、首にしがみついてくるだろう。
『岸がもう遠いです!』
「うん。セルキーたちすごい」
「「キュ〜!」」
5分も経たないうちに入江の出口近くまで。
でも、ここから先の外海は波もあり、海のモンスターも出るそうなので、オーバーしないように注意しつつ東の岸壁を越える。
「おお〜!」
「ワフ〜!」
向こうに見えるのは南北にほぼ真っ直ぐ続く砂浜。
その砂浜に向かって筏が進んでいき、やがて海の底がすぐそこに見えるところまで近づいた。
「ワフッ!」
ルピが飛び出し、少し泳いで先に上陸する。狼ドリルが可愛い。
セルキーたちも、筏を担ぐというよりは引っ張る感じになってるし、俺も降りよう。
「よっと。ありがとう! えっと、流されないようにしておきたいんだけど」
筏に括り付けてあるロープを、どこか岩か木に結んでおきたいところだけど、
「キュキュ〜」
「あ、そっちか」
トゥルーがこっちこっちと手招きするのは、越えてきた崖の裏側にあたる場所。
そこに洞窟があって、セルキーたちはそこに住んでるのかな?
手頃な岩を見つけたので、それにロープを回して結んでおく。
「〜〜〜♪」
「お、ありがと」
スウィーが光の精霊のあかりを出してくれる。
洞窟の中は暗いんだけど、セルキーたちは夜目が利くんだろうな。まあ、海の深いところまで潜れるならそうか。
「キュ♪」
トゥルーに案内されて中へ進むと、少し進んだところで広い空間に出た。
その真ん中は潮溜まりがあって、かなり深いのか底は真っ暗……
『海まで続いてるんでしょうか?』
「あ、そうかも」
と水面にひょこっと顔を出したセルキーが、
「キュキュ〜♪」
「お〜」
手を振ってくれたので振り返す。
「やっぱり海に繋がってるんだ。普段はここから港の方に来てるの?」
「キュキュ」
うんうんって感じで、普段は外回りしなくてもいいらしい。
俺もここを通って……はルピが無理だよな。
「キュ〜♪」
「あ、うん」
広間にはいくつか横穴があって、それぞれ住居になってるらしい。
案内されてるうちに、だんだん方向がわからなくなってくるけど、今向かってるのは多分西側、島の中央方向かな?
トゥルーに案内されつつ上り坂を進んでいくと、突き当たりが左右へと続いている。
「キュキュ〜」
「〜〜〜?」
「キュ〜」
トゥルーとスウィーが何やら話してるんだけど……
『どうしたんでしょう?』
「なんだろ」
と、トゥルーとスウィーが右側へ進む。
その後をついていくと、しばらく進んだ先は、
「『あ……』」
「キュ〜……」
洞窟の先、天井が崩落してて道が塞がれてしまっている。
古代遺跡の制御室に続く通路に似た感じだけど、幸いというか天井部分が抜けていて、外からの光が漏れているので、土砂さえ取り除けば良さそう?
いや、トゥルーが随分手前で止まったのは、まだ手前の天井が落ちてくることを警戒してるんだろうな。
『ショウ君。なんとかなりませんか?』
「うん。ちょっと待ってね」
「〜〜〜♪」
「ワフン」
スウィーがトゥルーになんか話してくれてるのは、俺がどうにかするから心配するな的なことを言ってる模様……
ともかく、土木スキルを使って天井や壁の安全性を確認しよう。
「アップデートがあって、ずいぶんわかりやすくなったよなあ」
『土木スキルも上がってるのもありますよ』
今まではじっと見た部分、50cm四方ぐらいしかわからなかったけど、3m四方ぐらいは見えるようになってて使いやすい。
で、今いる場所は緑色なので安全だけど、崩れてる上の方は黄色からオレンジと危なそうな雰囲気。
「壁の方は大丈夫だし、天井に近い危ない部分を落としちゃった方がいいかな」
『大掛かりな感じになりそうですか?』
「そうだね。見えてる範囲はそんなでもないけど、土砂がどこまで続いてるかによるかなあ……」
どうやってこんな岩の中に穴っていうか通路を掘ったのか気になるけど、そこはまあ掘削の魔法があったり、土の精霊魔法で穴が掘れたりする世界だし。
「うん。今すぐ直すのは無理だけど、しっかり準備をしたら大丈夫だと思うよ」
「キュ〜♪」
ぱあっと明るい顔になったトゥルーが抱きついてくれるのが嬉しい。
今すぐにでもやってあげたいところだけど、天井を広く開けると雨水が今まで以上に流れ込んでくるはずだし、簡単な屋根を用意してあげないとだよな。
「あ、そうそう、この先って港の方に出れたりするの?」
「キュキュ〜」
どうやらそうらしい。
カムラスがあるあたりからさらに南の方に進んだあたりとかかな?
それなら、神樹がなくてもセルキーの里に来れるようになるし、早めにどうにかしよう。
「キュ〜キュ♪」
来た道を戻ってまっすぐ進むと出口に到着。そこは小高い丘の上。
「うわ、すごいな」
『すごいです!』
まず目につくのはオリーブの木。
セルキーたちが蔓かごを手に実を採集してる。
「キュキュ〜♪」
「うん」
トゥルーに引っ張られて進んでいくと、オリーブの木々の一番奥に、
「〜〜〜♪」
スウィーがぴゅーんと飛んでいったのは大きな樹。間違いなく神樹だろう。
『こっちにもありましたね!』
「うん。これでトゥルーたちとパーンたちと一緒にお食事会とかできるかな」
『楽しみです』
足元の花を踏まないように慎重に神樹に近づくと、その根元に綺麗な石で囲まれた小さな祭壇のようなものが作られていて……
「あ、俺が渡した翡翠の女神像。ちゃんと祀ってくれてるんだ」
「キュ〜♪」
みんなして祠の前に座って、簡単なお祈りを。
『なんだか恥ずかしいです』
「あはは。でも、それも本当になるかもだし?」
『そ、そうでした……』
ミオンが翡翠の女神のイメージキャラになったら、今、本土の教会にある翡翠の女神像も変わったりするのかな?
なんか、それはそれでちょっと微妙な感じ……
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