木曜日

第327話 欠けたパーツ、はまるパーツ

 放課後の部活。

 ルピたちやスウィーたちとご飯の後、俺は筏を作る作業に。

 木材は昨日のうちに切り出しておいたので、ロープの追加を作りながら。


 それにしても昼はナットといいんちょに説明するのが大変だった。昨日のことを。

 当然、ミオンの心配されたんだけど、そこはちゃんとヤタ先生と相談してること、そしてミオンの親御さんの話もして……ようやく納得してくれた感じ。


『ショウ君。今、椿さんから連絡があって、イメージキャラクターの件での顔合わせを今週土曜の午後2時から向こうのバーチャル会議室でどうですかと』


「あ、俺はオッケーだけど、ミオンは習い事の方は大丈夫?」


『はい。おやすみします』


 そういうことならいいのかな。

 まあ、俺がどうこう言える話でもないし、ミオンが納得してるならそれで。


「じゃ、ヤタ先生にも」


『お伝えしておきますね』


 ヤタ先生も部室にいるんだけど、今日はそろそろ期末試験の準備をとか不穏なことを言ってた。

 7月の中頃から期末テスト期間で、それが終われば夏休み。

 そういえば8月頭ぐらいから合宿だとか言ってたけど、その話もちゃんと聞いておかないとだよな。

 家が空っぽになってるところに真白姉が帰ってきたりしたら洒落にならない……


「よし、こんなもんかな。一応、筏っぽく見えるけど……どう?」


『えっと……、やっぱり一度試してみてからの方がいいと思います』


「だよなあ」


 これでいざ乗ってみたら沈んだってなるとギャグだし。

 まずは、俺1人で乗れるかどうか試すか。


「……しまった。もっと海の近くで作れば良かった」


『あ……』


「ワフ?」


 ルピの「どうしたの?」っていう眼差しが痛い。

 でもまあ、これくらいの大きさならなんとか、


「よっと!」


 STR上げてあったのが良かったのか、二畳よりちょっと大きいぐらいの筏を両手で抱え上げることができた。

 港の方には砂浜がないので、いつもセルキーたちが上がってくる岩棚のところまで移動。


「キュ〜?」


 不思議そうに見つめるトゥルーやセルキーたちに囲まれながら、筏をそっと水面へと置いてみる。

 よしよし、普通に浮いてくれた。ここまではオッケーっていうか当然だよな。


「ルピ、ちょっとここで待ってて」


「ワフン」


 バランスに注意しつつ、いや、ここは……


「<固定>」


 波に揺られていた筏を固定の魔法で静止させてから乗り込む。

 バランスが取れる真ん中に正座したところで、固定を解除……


「おっと」


 急に解除したからか、ふらふらとすることしばし。


「よしよし、大丈夫そう」


『良かったです……』


「いや、ここからまだあるから。ルピ、こっちこい」


「ワフッ!」


『ああっ!』


 飛び込んでくるルピを受け止めると、筏がぐらりと揺れて、


「おおおおお……あれ?」


「「キュ〜♪」」


 いつの間にか、水の中のセルキーたちが筏の左右を持って支えてくれている。


「あー、ありがとう」


『ショウ君。引いてもらうよりも、そのまま支えて運んでもらう方がいいんじゃ』


「俺も今、同じこと思った……」


 筏っていうよりも神輿?


「このまま運んでくれるのでいいの?」


「キュ〜♪」


 じゃ、これに持ちやすいような担ぎ棒だっけ? それをつけた方がいいか。

 いったん陸に上げて改造しよ……


 ………

 ……

 …


「ただいまっと」


『おかえりなさい』


 筏の改良を終えて戻ってきたけど、ベル部長はまだIRO中かな。

 で、ヤタ先生はVRHMDを被ってはいるけど、期末テストの準備中かも……


「戻りましたねー」


「はい、えっと……」


「ミオンさんから土曜に顔合わせという話は聞きましたよー。ですがー、私は顧問と担任という立場ですのでー」


 残念ながら顔合わせには同席してくれないそうで。

 まあ、芸能事務所UZUMEとIRO運営の間での仕事の話になるからしょうがない。

 ヤタ先生はあくまで美杜大附属高校の一教師なわけだし。


『気をつけておくことはありますか?』


「今回は顔合わせだけですしー、そんなに緊張しなくてもいいかとー。向こうは何かしらいい返事を期待してそうですがー、こちらの要望を伝えることを優先しましょー」


「『はい』」


 そんな話をしていると、ベル部長がIROから戻ってきた模様。


「ショウ君は今まで見たことのある、一番大きな魔石ってどれくらいのサイズかしら?」


「え? 大きな魔石っていうと……」


 レッドアーマーベアの魔石が確かソフトボール大だったかな?


「それはもう魔晶石にして、港にある魔導醸造器にセットしちゃってますけど」


「ソフトボール大でも足らなそうね……」


 とベル部長。


『ショウ君。ニーナさんの……』


「ああ、あれか。えっと島の古代遺跡の話はしたと思うんですけど、その非常用魔晶石がバレーボールぐらいの大きさですね。ってか、足らないって何がです?」


「ああ、ごめんなさい。死霊都市の南の教会を、今はゲームドールズの人たちが抑えてるんだけど、その地下に通路がある話は聞いてるかしら?」


 ああ、あれか。この間のライブの後でセスとちょっと話した件。


「セスから聞きました。なんか制御室っぽいところがあるんですよね?」


「ええ、でも、ショウ君から聞いた非常用の魔晶石がないのよ。その話も聞いてるのよね?」


「聞いてます。代用できそうな魔晶石を探してるんですか?」


「そうね。それがあれば、街の機能を復活させることができるんじゃないかって話よ」


 へー、その話って、アズールさんの解析結果を聞いた俺だけが知ってることだと思ってたんだけどな。あ、いや、氷姫アンシアも知ってそう……


『あの、街の機能ってなんですか?』


「たとえば街灯とかかしら。名も無き女神像の捜索をしたときに、いくつか備え付けの魔導具なんかも発見されてるんだけど、どれも使えない状態だったりするのよ」


「あー、街の機能が復活すれば、それが使えるようになるかもって話っすか」


「ええ、ショウ君は実際、古代遺跡の設備を使えてるのよね?」


「うーん、古代魔導炉も火床も、施設を再起動する前から使えてたのでなんとも。今はもうMP消費すらいらなくなってますけど」


 うちの古代遺跡、ニーナの役目はマナリサイクルだし、火山を通じてマナの供給が潤沢だったからかな?

 MP消費がいらなくなった話は初めてだったからか、ベル部長が驚いててごめんなさいって感じ。


「使えないままなのは、何か別の要因かしら……」


『でも、島のニーナさんは、扉を壊されたこともあるので』


「あ、そうか。まあ、島は無人島スタートの分、ちょっと特殊で参考にならないかも?」


「そうね。いずれにしても、非常用の魔晶石を見つけないことにはよね」


 ニーナの非常用魔晶石よりさらに大きいのとかって、そもそも存在するのかな?

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