第321話 一歩前進?

 夜。

 ベル部長は今日はライブの日で、ちょうど始まったぐらいかな?

 死霊都市のワールドクエストの打ち上げを王国に戻ってやるそうで、レオナ様とのコラボ配信をしてるらしい。

 あと、死霊都市でゲットしたアイテムで、いまいち使う人がいないものを売りに出すそうで、その告知も兼ねてるとのこと。


「ごちそうさま」


「ワフン」


 放課後はワールドクエストの後始末の話を聞いてて終わっちゃったので、改めてルピたちとご飯を食べた。

 ランジボアのバラ肉とレクソンの玉子炒め、要するに肉と玉子の炒り付けなんだけど、ご飯がすごく欲しくなる味……


『美味しそうです……』


「じゃ、また日曜にかな」


『はい!』


 とはいえ材料用意して、炒めるだけだからなあ。

 献立に困ったときはこれって感じ。美姫も好きだから文句言わないし。


『あ、先生が来られました』


「りょ。俺もそっち行くよ」


『はい。すいません』


 イメージキャラの件で、ヤタ先生と椿さんを交えて相談。なんだけど、IROプレイしたままだと、会話の内容が運営側に先にバレちゃうかもということで。

 ルピたちには、後でまた戻ってくると伝えて、ゴロンとベッドに横になってログアウト。

 ちなみに椿さんはもうスタンバイしてスタジオにいるらしいけど、全然喋らなかったのかな……

 改めてミオンがいるスタジオへ入る。


「ばわっす」


「こんばんはー」


「お手数をおかけします」


 良かった。椿さん、ちゃんといた。


『ショウ君』


 スタジオの脇に置かれているソファー、2人掛けのいいやつだけど、それがもう一つ追加してもらってある。

 ミオンに呼ばれて隣に座ったんだけど、俺とミオン、ヤタ先生と椿さんっていうのはいいんだろうか……


「では、改めて、簡単に経緯から説明いたします」


「お願いしますー」


 椿さんがサクサクと説明してくれる。

 ちなみにヤタ先生と椿さんは、収益化の話の時に会って話したことがあるそうだ。


「熊野先生の方から、バイトでの芸能活動は校則的に問題はないとお伺いしておりますし、雫様からも澪お嬢様の希望通りにと言われております」


「なるほどですー。それで、ミオンさんはどうしたいか決まりましたかー?」


『えっと、具体的なお仕事の中身と、こちらの条件さえ守ってもらえれば、やってみたいなって……』


 最初から拒否してなかったし、ミオンがなんとなくだけどやってみたいんだろうなっていうのは感じてた。

 ただ、その条件のところがポイントというか……


「なるほどですー。ちなみに条件はなんでしょー?」


『私がIROをプレイすることがあっても、勝手にPVに採用しないで欲しいんです』


「あー、確かにそれは……」


 俺もPVにちょくちょく出されるけど、あのノリで使われたら嫌だよなあ。イメージの問題もあるし。


「そうですねー。どういう役なのかをー、ちゃんと説明してもらってからでいいと思いますよー」


『はい』


「そのあたりは私の方でも確認いたします」


 てか、実際、何するんだろ。

 イメージキャラってことだし、公式のプロモムービーに出たりするんだろうけど……それ以外って?


『ショウ君は何かないですか?』


「俺? うーん……希望みたいなのでもいいです?」


「いいと思いますよー。どんどん言っちゃいましょー」


「はい。無茶なものでなければですが、ショウ様なら問題ないかと」


 無茶なこと言うつもりはないです。


「ミオンのお仕事の内容によるけど、その現場に俺も立ち会えると安心かなって」


『お願いします!』


「う、うん……」


 椿さんがいるから大丈夫だろうとは思うけど、知ってる人が周りに多い方がいいよねっていう。

 あと、どういう感じなのか見てみたいっていう、興味もあったり……


「それは全然問題ないと思いますよー?」


「はい。ショウ様にはご一緒していただこうと思っていましたので」


 まあ、そう言うことならいいのかな。


「ちなみに、どういう感じの仕事になるかとかわかります?」


「そうですね。これはあくまでリアル寄りの現場のお話になりますが……」


 椿さんが説明してくれたのは、リアルよりの現場だけどフルダイブ空間を使うパターンで、アバターを使ってミュージックビデオやドラマなんかの撮影をする場合のことを話してくれた。

 単純に現場がバーチャル側にあって、そこで撮影するというだけの話。


「フルダイブの黎明期には本人とアバター分離していた時期もあったんですがー、アバター側が単独で違法な使われ方をしてー、いろいろと法整備されたんですよー」


 ヤタ先生がその辺りに詳しいらしく、いろいろと教えてくれて勉強になる。

 今の時代、他人のアバターを不正にコピーするなんてことはできないけど、昔はタップ一回でコピー、AIで適当にアレンジしたものを使って……なんてこともあったらしい。


「自分のアバターを知らない誰かが使うのは勘弁っすね……」


「今回の場合は、ゲーム内のキャラクターに扮するということになりますが、それでも本人がベースとなっておりますので……」


「ちゃんと本人が動かす、つまり、ミオンが演技しないとってことっすね」


「そうなります」


 大丈夫かな? とミオンを見ると……


『頑張ります!』


「あんまり無理しないでいいんじゃないかな」


「そうですよー。できないことはできないというのが大事ですー」


 ヤタ先生、それは正しいんだろうけど、励まし方としてどうなんだろう……


「では、ひとまずこれで返事をするということでよろしいでしょうか?」


 ミオンと頷き合ってオッケーを。

 それで終わりかなと思ったんだけど、


「向こうの方と一度面談はするんですよねー?」


「はい。軽い挨拶と仕事の内容の説明も含めて、バーチャル上で会う機会を設けることになりますが、よろしいでしょうか?」


 と椿さんの視線が。いや、ミオンもヤタ先生も?


「えっと、いいと思います。……俺もいた方が」


『お願いします』


「りょ。じゃ、日時のセッティングとかは……」


「お任せください」


 と椿さん。

 こちらから候補日を伝えた方がいいということで、でも、ヤタ先生に平日昼とか夜遅くはダメって言われて、


「土日の昼しかない気がするんですけど」


「学生のバイトですしー」


「そうでした……」


 部活の時間にってのも微妙だよな。先生は立ち会ってくれないって話だし。

 土曜だとミオンの習い事があるけど、それは時間をずらすとかできるらしい。


「では、日時が決まり次第、お伝えいたします」

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