歌舞優楽

第319話 代表に相応しいのは誰か?

「夕飯の時、大変だったよ……」


『セスちゃんですか?』


「うん、ワールドクエストのラストバトルの話とか」


 俺がミオンの家に遊びに行って、そこからIROをやってたことは正直に話した。

 ただ、ラスボスバトルのことはミオンの実況でしか聞いてないということで、どんな感じだったか説明してもらったんだけど。


「すっごいテンション高くてさ」


『ショウ君に話したかったんですよ』


 気持ちはわかるんだけど、来年は高一なんだし、そろそろ落ち着いてほしい……


「ちなみにあいつ、貢献度ランキング3位だったって」


『すごいですね!』


 ちなみにベル部長は18位でレオナ様の次だったらしい。さっきバーチャル部室でちらっと話を聞いた。

 当然、その前に死霊都市の翡翠の女神像について聞かれたんだけど、


「アージェンタさんに頼まれたんで」


 と答えて納得してもらった。……嘘はついてない。

 あと、貢献度ランキングの順位については黙秘で。

 水曜のライブでオープンにするかもだけど……


「まあいいや。今日はのんびり畑作業しよう」


『ゆっくりしましょう。ショウ君、頑張りすぎです』


「あはは。でもまあ、これであとは死霊都市が国になってくれればかな」


 現時点で俺ができそうなことはやったし、向こうの転移魔法陣、というかあの一帯は教会も含めて竜族が確保し続けると約束してくれた。

 こっちの転移魔法陣は地下の大型転送室に置いたし、使う時以外は石壁の蓋をしてあるので、万一ということもないはず。


『あ、部長たちの会議が始まるみたいですよ』


「りょ。まあ、結果だけわかればいいから」


『はい。ちゃんとショウ君を見てますから』


 あ、うん、はい……


 ………

 ……

 …


 ご飯を食べてから、みんなで教会裏へ。


「リュ〜♪」


 パーンが出迎えてくれ、ヤコッコの玉子とエクリューミルクを渡してくれる。


「いつもありがとうな」


「リュリュ!」


 エヘンと胸を張るパーンが可愛い。

 フェアリーズが畑へと飛んでいって、水やりの手伝いをしてくれるっぽい。スウィーは……グレイプルに行っちゃったか。

 俺も畑の手伝いをと思ってたんだけど、ちょっと思い出したことがあって、それを先に確認するためにパーンたちが下りてくる崖下に来た。


『上に行くんですか?』


「あ、いや、ここに階段を作りたいなって思ってて」


『なるほどです』


 神樹の樹洞うろを通れば来れるけど、それはスウィーがいないとだし、そうなるとハシゴってなって、ルピは背負えてもレダとロイがついてこれない。

 なんだかんだ階段あった方が、パーンたちも楽だろうし……真下から少し距離をとったこのへんが上り口かな?


「この辺りから岩肌にそった階段を作ろうかなって」


『石壁を積むんですか?』


「それも考えたんだけど、量がすごいことになるし、万一崩れたら教会に被害が出そうだから、螺旋階段みたいなのを考えてるんだけど」


『えっと、どういうものでしょう?』


 口で説明するだけだとピンと来ないよなあ。

 どういう感じかは見せた方が早そうなので……


「岩肌に深めの穴を開けるんだけど……<掘削>っと」


 横30cm、縦5cm、奥行き1m弱の四角い穴を開ける。


「この穴に鉄板を差し込んでステップにする感じ」


『なるほどです! あ、でも、鉄だと錆びちゃう気が……』


「うん。それなんだけど、錬金術の本をもらったから、それで良さそうな合金を探してかな」


 アルミでもいいんだろうけど、たしかアルミ合金ってあったよなあと。

 錬金術の本、ちゃんと読まないと……


『そうですね。魔導線を作る話もありますよ』


「ぐぐぐ、死霊都市に行ってたせいで、またタスク溢れてる気がする。ちょっと何があったか教えてくれる?」


『はい!』


 ざっくりとリストアップしてもらったんだけど、


ゲーム内

・空間魔法でフードプロセッサー

・魔導線を作って山小屋まで。錬金術の本を読む?

・楽譜が載っている本を読む

・トゥルー君の集落へ行ってみる

・教会の崖上に行く階段を作る。New!


 こういう感じらしい。

 うん、フードプロセッサーとか完全に忘れてた……


「明日はフードプロセッサー作ろうかな」


『簡単に作れそうですか?』


「うーん、容器と回転させる刃の部分を作れば良さそうだし、アルミの加工に慣れるのにちょうどいいかも」


 容器はアルミにして、刃の部分は鉄がいいかなあ。

 でも、アルミって鋳型に流し込む作り方だろうし……。あ、石工で容器の型を作ればいいのか。


「まあ、今日はいいや。階段はまたにして、グレイプル集めするよ」


『そうですね。向こうでお世話になったみなさんにお礼を贈りましょう』


「うん。バーミリオンさんがワイン欲しいって言ってたし、ゲイラさんや竜人さんたちも飲んでくれるよね」


『どっちかというと、独り占めされないようにした方がいいかと思いますよ』


「だね……」


 そっちは注意書きした上で、アージェンタさんにちゃんと差配してもらうってことで。

 水やりを終えたフェアリーズにも協力してもらって、グレイプルを収穫していく。途中のつまみ食いはお駄賃としては格安。


『あ、水曜日のライブはどうしますか?』


「トゥルーのところへ行ってワイン作らないとだし、カムラスも採集しないとだし、あっちでご飯にしようかなって」


『いいですね!』


 で、木曜あたりにトゥルーたちセルキーの集落にお邪魔できないかなと。

 神樹があれば、スウィーにお願いして行き来できるようになるかもってのも。


『あ、部長たちの会議が終わったみたいです』


「おお、どんな感じになったかわかる?」


『えっと……、北東側は魔王国の管轄になるそうです。北西のショウ君が行った場所はドラゴンさんたちがそのまま。残りの南側はプレイヤーさんたちで管理するそうです』


 魔王国、そのまま居座るのか……

 アージェンタさんには、転移魔法陣が動かせないうちは維持してもらうように頼んでたし、そこは竜の都(?)の出張所みたいな扱いのつもりだったんだけど……教会の地下の話もあるしなあ。

 南側がプレイヤー連合らしいけど、これは誰かがトップに立つのかな?


「へー……って国にはならなさそう?」


『みたいです』


 うわー、転移塔の周囲を取ってもらったのって失敗だったかなあ。

 魔王国が引かないのもそのせいだったり? うーん……


「ごめん。ミオン」


『ショウ君が謝ることじゃないですよ。現実ではいつでも会えますから』


「あー、うん」


『あ、プレイヤーさんたちの代表ですが、部長たちはゲームドールズのハルネさんを推薦したみたいです』


「は?」

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