第317話 斜め上のさらに向こう
「わざわざお
とアージェンタさんが困り顔。
今は覚醒モードだけど、お子様モードに戻ったりすると大変だよなと。
「心配はいらないわ。2、3時間は平気よ」
やっぱり、さっきカムラスのコンポートをたくさん食べたから?
「ですが……」
「姫様がそう言ってるんだから、そうすべきだよ。アージェンタ」
アズールさんが急に真面目な口調で話し始めると違和感が……
ただ、じゃあすぐってのはちょっと早すぎる。
「すいません。バーミリオンさんたちが行っちゃってからでお願いします」
「ええ、そうね。アズール、悪魔たちが制御室とやらで何を企んでいたか、もう少し詳しく話しておきなさい」
「はい」
………
……
…
悪魔たちが企んでいたことを白竜姫様にざっくりと説明するアズールさん。
その説明で改めて知ったのは教会の地下から進んだ先にある部屋のこと。
やっぱり制御室らしいんだけど、悪魔の話ではメインの制御室ではなく、サブというかバックアップというか、そういう場所らしい。
俺たちがバーミリオンさんと見つけた場所以外にも、それぞれの教会の地下にサブ制御室があり、それを3つとも支配下に置くことで厄災を起こせるのでは……って狙いだったとか。
「あと2つも教会の地下から行けたんですね」
「なんだけど、僕たちはここ以外は手が回らないし」
「確かに」
そんなことを話しながら、教会へと移動。
「ご苦労様〜」
「は、はっ!」
アズールさんが先頭、俺とルピが続き、白竜姫様とアージェンタさんっていう並びに、教会の前で警備していた竜人さんたちが硬直している。
自国の姫様と重臣がぞろぞろ現れたら、そりゃ緊張するよなと……
教会の中にも地下へとつながる階段の左右に2人の警備兵さんたち。さらに降りた地下室の通路へとつながる場所にも2人いて、見たことのある魔導常夜灯が置かれている。
「扉はどうしてあるの?」
「中心部へとつながる奥の扉は施錠、手前の扉は開放したままになっております」
アージェンタさんが説明してくれる。
祝福を受けし者だけが開閉できるということで俺がやったんだけど、教会側なら竜人さんたちが警備してくれるということで。
「〜〜〜♪」
「あら、ありがとう」
通路が暗いのであかりを出そうかと思ったら、スウィーに先を越されてしまった。
『ショウ君。部長たちが中心部に着きました。かなり大きなスケルトン3体と戦っていますし、その後ろにリッチっていうのがいるそうです』
おおー、ラストバトルって感じ。やっぱりというか、アンデッドでボスっていうとリッチだよな。
そんなことを考えながら歩いてると、遠くから微妙に振動が伝わってきた。
『すごい魔法が飛び交ってます!』
「どうやら戦闘が始まってるみたいだねえ」
とアズールさん。緊張感とかないのかな……
ほどなくして、向こう側にあかりが見える。
「ご苦労様〜。ちょっとこの部屋でいろいろ調べるから、引き続き警戒よろしくね」
「はっ!」
ここにも2人が警備についていて、その先を警戒してくれてる感じ。ホント、ご苦労様です。
「ワフ」
「ん? ああ、階段の上を見張っててくれる?」
「ワフン」
ルピが張り切ってるので、お願いしておこう。っと、せっかくだし感知共有もかけておこう。こっちなら平気なはず。
ルピが階段を上り切ったところでお座りし、奥の扉がある方を警戒してくれている。
「ねーねー、ショウ君が言ってたのは、この装置のことだよね?」
「あ、はい。えっと、島の古代遺跡だと……」
本来なら予備の魔晶石が設置されている空っぽの空間。俺が手を置いて管理者となったコンソール部分を説明。
それ以外の場所は正直どういう意味なのかニーナに聞いてないので不明……
「うーん、なるほど。その予備の魔晶石って、ショウ君がいる島のを持ってきてもダメ?」
「あー、その方法が。いや、サイズが足りてないかな……」
ニーナのやつはバレーボールぐらいあってカテゴリー的には特大サイズだと思う。
それよりもさらに一回りぐらい大きくないと……いや、ラグビーのボールみたいな楕円形とかならいけるのかな?
「ふむふむ。管理者になった時ってどういう感じだったか、ちょっと詳しく教えてもらえる?」
「はい。えっと……」
アージェンタさんに報告はしたけど、あんまりちゃんとは説明してなかったなと。ニーナのことも隠してたわけじゃないけど、この際全部話してしまおう。
あの時の状況を一から説明し、ニーナが保全状態になってたから、管理者情報が初期化されててというような話をしていると、
「ん?」
「どうしたの?」
「扉が開きました。誰か来ます」
俺がそう伝えるのと同時にルピが戻ってきた。
警備の竜人さんたちが槍を構える。
「通路の方へ」
「すいません」
アージェンタさんの気配りがありがたい。
こんなところでバレると洒落にならない……ってスウィーこっちこっち!
スウィーが慌てて飛んでくるのをフードに回収して教会側の通路へと隠れる。気配遮断に隠密もかけて無になる俺……
【気配遮断スキルのレベルが上がりました!】
【隠密スキルのレベルが上がりました!】
「止まれ!」
階段を下りる足音に竜人さんが叫ぶ。が、
「竜に先越されてますやん。どういうことやの?」
「どうと言われても、私がお約束したのは東側の一箇所だけですよ」
そんな会話が聞こえ、そのまま歩いてくる。
竜人さんたちが交差させる槍の向こうに見えたのは……
「あら、久しぶりね、ネメア。魔王国の王女ともあろうあなたがこんなところにいて良いのかしら?」
「いややわー。なんで白竜姫様いてはるの?」
魔王国の王女? 魔王の娘? あのなんか変な関西弁っぽいしゃべりのお姉さんが?
そして、隣には氷姫アンシア。2人の後ろには二本角の鬼(?)と褐色肌のダークエルフ(?)がいる。
「王女様はここを取りに来たの?」
そう問いかけるアズールさんの声に圧がある。
「せやったけど、竜族が責任持って変なことせん言うなら引き下がります」
「じゃ、帰りなさい。それとも厄災を止めた私がまた同じことをするとでも?」
「それは思わへんけど……この後もここちゃんと管理してくれるん?」
「ええ、それはお約束いたしますよ」
とアージェンタさん。
やりとり自体は緊張感があるけど、敵対してるっていう感じではないのかな。
「ほな、おまかせしましょか。あ、せや。そっちで捕まえた悪魔ってまだ生きてます?」
「うん、一応ね。そっちに渡そうか?」
「いや、いりまへん。でも、ちゃんと処分しといてな?」
そう手をひらひらと振り、アズールさんが頷いたところで、一段と大きな揺れが起きた。
これは上の方で決着がついたのかな?
『大きなスケルトンの1体が倒されました』
ミオンの報告に頷いて返す。
1体減ればあとは随分楽になりそうだし、あとは流れでかな? 第二形態とかそう言うのがあるかもだけど。
「上も進んでるみたいやし、自分らも次行きましょか?」
「はい」
「ほな、また」
そう言い残し、魔王女様(?)御一行は本当に帰ってしまった……
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