第318話 当然の結果

 階段の上へと様子を見に行っていたアズールさんが戻ってきた。


「本当に帰っちゃったよ」


「もう大丈夫かと」


 アージェンタさんの言葉に隠密と気配遮断を解いて、部屋へと戻る。

 隠れてるのめっちゃ疲れる。あ、MP消費してるからか。ルピの分もあるもんな。


「どもっす。あれが……魔王国の王女様なんです?」


「はい。現在の魔王国の王女ネメアです。後ろにいたのは親衛隊と思われますが、隣にいた人物は……ご存知ですか?」


「知り合いっていうわけじゃないですが、有名人なので……」


 ルピがまた見張りに行ってくれるのを見送りつつ、氷姫アンシアについて、今のIROでの情報を伝えておく。

 まあ、俺が知ってるのって、共和国の南の開拓地で領主をやってるとか、魔王国と交易して稼いでるとか……


「たいしたことはなさそうね」


「お姫様ひいさま……」


「次って言ってたのが気になるかな〜。ここに来てる悪魔をやっつけたいだけなら、わざわざ彼女が来る必要ないしさ」


 たしかに次に行くとか言ってたな。

 東側はもう手中に収めてるだろうし……


「南側の制御室に向かった?」


「なるほど。どういたしましょう?」


「今はほうっておくしかないわね。魔王国も竜族を敵に回すほど愚かではないでしょう。それよりもアズール、ここについてもう少し調査なさい」


「はい」


 そう返事をして、制御室のコンソール部分(?)に戻るアズールさん。

 どうやら大規模な魔法解析をかけるらしく、手伝えることはなさそう。


「あの王女様ってなんか普通の人っぽかったですけど……」


「あれは擬態よ。私たちと同じように人の姿を取れるだけで、本来はアージェと同じぐらい大きいぬえね」


「鵺……」


 なんか関西弁っぽい喋りもそのせい?

 西洋ファンタジーだと思ってたけど、魔王国は和風なのかな……


「じゃ、後ろにいたのは、やっぱり鬼なんですね」


「はい。生まれつきマナによる身体強化を習得しており、非常に戦闘能力が高い種族ですね」


 その代わりというか、元素魔法も精霊魔法も苦手だそうで。


「もう1人はダークエルフ?」


「かつてはそう呼ばれていましたが、悪魔の追放と共に『セピアエルフ』と呼ばれるようになりました。晦冥神を嫌ってのことですね」


「へー……」


 今の魔王国は蒼空か紅緋の女神を信仰するのが一般的らしい。

 多種多様な種族が住んでるけど、どれも一癖ある感じで……次のアプデで魔王国スタートって話があるけど、選択できる種族増えそうだなあ。


「友好的って感じでもなかったですよね」


「厄災を引き起こした巨人族の若者も、悪魔にそそのかされたせいだと言われていますので」


 うわ、なんかすごい複雑だなあ、それって。

 巨人族は竜族の庇護下だけど、厄災を引き起こすきっかけは悪魔のせい。悪魔は元々は魔族なのでっていう……


『ショウ君。大きなスケルトンが全て倒されました』


 おっと、そろそろ上も終わりかな?


「だいたいわかったよ〜。結論から言うと、この魔導施設だけで厄災は起こせないね。他の2つが揃ってもね」


 その言葉にホッとした表情を浮かべるアージェンタさん。


「普段はこの都市の一部を管理してて、いざという時には中心部分の塔、例のマナ集積装置を強制停止する仕組みが入ってる」


「え? じゃあ……」


「うん、厄災が起きる前に非常用の魔晶石が抜き取られてたんだと思うよ」


 と空っぽの場所を見て言うアズールさん。

 入念な計画をしてたんだろうな……


「そこまで知っていて来たのでしょうか?」


「どうだろうね〜。王女様直々に来てるのは、他にも何か狙いがあるんだと思うけど」


 狙い……


「都市の管理って部分? 俺と同じように転移魔法陣が欲しいとか」


「なるほど」


 一緒にいたのがアンシア姫だからなあ。

 リターンがないことはやらなそうだし、かといって過度なリスクは避けるタイプ。


「魔王国側にも転移魔法陣はあるだろうし、そっちはもう制圧されてるかな〜」


 ここに対になってるやつがあれば、俺と同じで回収したくなるよな。

 でも、厄災の前の魔王国ってどっちだったんだろ?


〖複数のアライアンスの協力により、子爵級悪魔アルボラスを討伐しました!〗


「あ……」


「どうしました?」


「っと、悪魔がまた1体倒されたっぽいです。子爵級のアルボラスってやつですね」


 そして、


『ショウ君。悪魔はレオナさんに倒されました。もうすぐ終わると思います』


「そろそろ上も終わるんじゃないかと」


 残ってるのはリッチだけかな?

 悪魔がなんでいたのかは不明だけど、その辺はあとでミオンに聞こう。ベル部長やセスの視点からの話も聞きたいし。


「なら、私たちも戻りましょう」


「はい。この場所は引き続き?」


「ええ、設置できる魔晶石がない間は問題はなさそうだけど、バーミリオンを置いておきましょう。魔王国への牽制にもなるわ」


「かしこまりました」


 アンシア姫もいたし、どこからか非常用魔晶石を調達してくる可能性もあるよな。

 バーミリオンさんに頑張ってもらって、その分はワインでも送ろう……


 ………

 ……

 …


〖ワールドクエストが終了しました〗


「あ、終わったみたいです。えっと、天啓がありました」


 教会まで戻って来たところでワールドアナウンスが入る。

 それを伝えると、白竜姫様が最前列の長椅子へと腰掛け、少し眠そうにしている。


「厄災の危機は去ったと見て良いのでしょうか?」


『ベル部長たちがいろいろと調べているみたいですが、施設はほとんど壊れちゃってるみたいです』


 なるほど。

 まあ、壊れてなかったら動かしてたんだろうし、リッチもあの場所に縛られてたって感じなのかな。


「多分、大丈夫なんじゃないかと」


 ああ、そうだ。リザルトが出てるはず……


【ワールドクエスト:死霊都市】

『祝福を受けし者たちによって、厄災の原因であった「英知の核」は浄化された。

 今ここに厄災は真の意味で終結し、死霊都市と呼ばれたこの地が、かつての繁栄を取り戻す日も近いだろう。

 しかし、明らかになった悪魔の介入が人々の心に与えた影響は少なくない……


<リザルト>

・第一部:竜族との交渉:完了

・第二部:死霊都市の解放:完了

・第三部:英知の核の浄化:完了

・副目標:死霊都市に潜入している悪魔の討伐。達成:12/13』


 この「英知の核」っていうのがなんだったのか気になるけど、浄化されたって話なら問題ないんだろう。気になるのは、悪魔を1体取り逃してるぐらいか……

 ま、島には関係ないかなとクエスト画面を閉じると、


【女神褒賞:ワールドクエスト達成褒賞:15SPを獲得しました】

【女神褒賞:ワールドクエスト貢献トップ100褒賞:15SPを獲得しました】

【ワールドクエスト貢献度ランキングは1位でした!】


 ……えっ?

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