第314話 ご注文からの即日配送

「俺がですか?」


「はい。以前、小さいながらもかなり精巧な木像を作っておられたようですし」


 そういえば、作りかけのやつ見られたんだった。

 まあ、あの後、教会に飾る等身大サイズのを作ったし、それがちゃんと聖域というかセーフゾーンを作ったから、プレイヤーメイドな女神像を祀ろうって話になってるんだけど。


「厳しいということであれば、ここのことを話しても良い方を紹介いただけますか?」


「いや、俺が作るので良ければ、それで」


 というか、紹介する人がいないし、話を持っていくのにいろいろと説明しないといけないことが多すぎて……うん。

 地下室のこともいずれバレそうな気がするけど、できるだけ時間を稼ぎたい。


「ありがとうございます」


 いっそのこと教会に置いてあるやつをこっちに持ってくるかな? で、教会の方は新たに作り直す? いや、もうあの女神の木像には『島を見守る女神ミオン』ってつけちゃったしなあ。

 今さら名前の変更するぐらいなら……


『ショウ君。島の教会の地下にある「名も無き女神像」を持ってくるのはどうですか?』


「やっぱりそれか」


 これなら、万一見られても「アージェンタさんが持ってきたやつを翡翠の女神像にして渡した」を一回やってるから大丈夫な気がする。


「ショウ様?」


「あ、いえ。そんなに時間かからずに用意できると思うんで」


 問題はあの等身大の名も無き女神像を、翡翠の女神像にちゃんとできるかってぐらい?

 サイズ的にも結構なMPを消費しそうな気がするけど、ゆっくりとやる分には回復もあるから大丈夫かな?


『ショウ君、そろそろ扉が開く時間になります』


 というミオンからの報告に続いて、部屋の外、塔の外から「おおお……」というようなざわめきが聞こえてきた。

 そして、


「アージェンタ、アズール、外へ出ましょう」


 いきなり覚醒した白竜姫アルテナ様が、座っていた椅子からおりる。


「「はっ」」


 当然というか、俺とルピも後に続いて外へと出ると、


「うわっ!」


『すごいです!』


 死霊都市の真上から光の柱が降りてきて、やがてそれは中心へと刺さる。

 そして……


【祝福を受けし者たちよ。

 今ここに厄災の地の封印を解きます。

 長く不浄に囚われた者たちが救われんことを……】


 澄んだ声が響き渡る。

 ワールドアナウンスじゃなくて、女神様(?)から本物の神託っぽい。


「月白の声を聞くのもあの時以来かしらね」


「お姫様、今回は無理をなされませぬように」


「ええ、そのつもりよ」


 白竜姫様やアージェンタさん、アズールさんにも聞こえてたみたいだし、NPCも含めて全員に聞こえてた模様。

 今、死霊都市にいないプレイヤーとか、島のスウィーたちには聞こえたのか、ちょっと気になる……


『扉が開きます』


 やっぱり中に待ってるのは、リッチとか、ワイトとか、デュラハンとか出てくるのかな? でも、デュラハンは妖精扱いの方がIROっぽい気もする。


『ショウ君! すごい数のアンデッドが扉から出てきて、部長たちが押されてます!』


「えっ!?」


「どうされました?」


「あ、いや、なんか扉からすごい数のアンデッドが出てきてるらしくて、かなりヤバいんじゃないかっていう……」


 ミオンに中継してもらってるのってゲーム的にいいのかな?

 でも、プレイヤーもセーフゾーンなら配信見れるんだっけ。ということは……


「アージェンタ様!」


 そう声を上げて駆け寄ってくる竜人さん。

 アージェンタさんの前に跪いて頭を下げる。


「報告を」


「はっ! 南側の人族より連絡があり、中心部から大量のアンデッドが出現! 建物の外へと溢れ出る可能性があるので気をつけられたしと!」


 うわ、連絡早い! 何かあった時の情報伝達とか考えてたのか?

 いや、セスならその辺は念入りに準備してそうだし……


「後方の警備部隊を招集し、中央への入り口前に待機させるように」


「アージェ、竜人たちに女神像を集めさせなさい。あれがあるだけで違うはずよ」


「はっ」


 対策に動き始めたアージェンタさんたちだけど、俺はどうしたもんだかなあ。


『部長たちは部屋につながる通路まで下がって応戦中ですが、押し寄せる数が多くて』


「外まで撤退かな?」


 周りがバタバタしてる間に、ミオンとこそこそ話し合う俺。

 状況がわからないことには動きようがないし。


『はい。南側はセスちゃんが「後退行動」というのを指示しているみたいです。東側も同じような指示を出してます』


 セスとベル部長はもうナットやポリーいいんちょと合流して南側。北東側は魔王国が絡んでるだろうし、マリー真白姉もそっちか?


「北西側はどう? バーミリオンさんいる?」


『はい。でも、全力は出せないみたいですし、こちらも後退するようです』


 ブレス一発とか言ってたけど、それやると建物の中にいるプレイヤー全員蒸し焼きになるもんな……

 うーん、通路を利用して敵を削っていく感じだろうけど、狭い場所よりも外に出して陽の光を利用した方がいいのか。


『ショウ君。セスちゃんが「外の聖域を利用する」って』


「ああ、なるほど……」


 いや、そうなるとこっち側、北西側って教会に女神像が無いから厳しいか?

 まずいな……


「ショウ君、どうかした?」


「あ、えっと……ちょっと島へ戻って女神像持ってきます!」


「え!?」


「もう、教会に飾れるサイズの女神像があるんです」


 その話をしてたのに、扉が開いて始まっちゃったせいでどっかに行っちゃってた。

 今から急いで取りに行けば、バーミリオンさんたちが出てくるころには間に合うはず!


「ショウ様、お願いします! アズール、ショウ様について行ってサポートを!」


「オッケー」


「助かります! ルピ、行くよ!」


「ワフッ!」


 あの地下に眠ってる『名も無き女神像』を翡翠の女神にすれば、しっかり三方揃ってアンデッドが出てくるのを叩き潰せるはず!

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