月曜日

第312話 最重要ポジション

 月曜だけど祝日でおやすみなので、ほどほどに寝坊してから起床。

 美姫も昨日はやっぱり遅くまでやってたっぽく、俺がすっかり目が覚めた頃に起き出してきた。


「朝と昼と一緒でいいか?」


「んむんむ……」


「……顔洗ってこい」


 自分の分も含めて、トースト2枚。ベーコンエッグにサラダはレタスとトマトでいいか。

 そういえば、オリーブオイルが手に入れば、フレンチドレッシング作れるようになる気がする。オリーブオイルにお酢、砂糖、塩だったかな。

 醤油があれば、和風ドレッシング、ごまドレッシングとか作れるんだけどな……

 美姫が顔を洗い、着替えを終えて戻ってくる頃には、ちょうどいい具合に朝昼飯の準備完了。


「おはよう、兄上!」


「おはよ。目は覚めたっぽいな」


「うむ!」


 しっかりといただきますをして、そういえば飲み物出し忘れてたのに気づく。面倒なのでオレンジジュースをグラスに注いで終わりだけど。

 いそいそとトーストにバターを塗り始める美姫。なんとなく昨日のこと聞いておくか。


「ワールドクエストの更新情報見たけど、今日の午後2時からなのか?」


「2時に開くので、1時にはログインしておかねばの。参加人数も多かろうし、場所の取り合いになるであろう」


 美姫の話だと、ナットに化けてた悪魔――俺も見てたやつだけど――がいてそれを倒し、その後も奥へと進んで大きな扉に到達。

 そこで手を触れると、例のワールドクエスト更新があったらしい。


「扉に砂時計のような表示が現れての。それと同時にワールドクエストの更新アナウンスがあったのだ」


「ま、最後だから参加できるプレイヤーみんな来いって感じか」


「うむ。ワールドクエストのラストをトッププレイヤーだけでクリアしました、では不満も出よう」


 一緒にいたベル部長やレオナ様、マリー姉、ナットにいいんちょ、他の人たちも「まあ、そうだよね」ってことで納得してお開きになったらしい。


「ふーん。あれ? でも、昨日遅くまでやってたんだよな?」


「まだ悪魔が残っておるのではないかという話になっての」


 まっすぐではなく、あちこち捜索しつつ帰ったと。

 ただまあ、ほどほどにして日付が変わる前には撤退したらしい。同じパーティのベル部長たちも。

 どうせ本番は明日だから、今これ以上頑張ってもって感じだよな。


「戻ってきたところで悪魔の総数が13とわかっての。今日は残り2体にも気をつけねばのう」


「なんでわかったんだ?」


「ゲームドールズのファンに竜人と交流のある御仁がおるそうだ。ちょくちょく情報交換をしておるとのことでな」


 ……俺のことってバレてないよな?

 ちょっと不安なんだよな。竜人族ってバーミリオンさんの管轄っぽいし。

 そういえば……


「前に話してた死霊都市の教会ってどうなったんだ? 南側にあるんだよな?」


「……ふむ。雷帝の座の皆が紅緋の女神の銅像を作成して設置したぞ。レオナ殿によく似ておるやつをの」


 銅像かあ。レオナ様のギルドのドワーフさんたちだし、木工よりは鍛冶でって話になったんだろうな。

 しかし、レオナ様に似せるって……俺のせいな気がする。いや『名も無き女神像』のせいだよな。うん。


「で、うまく行ったんだよな?」


「うむ。これも兄上のおかげよの」


 そう得意げに話してくれるのは嬉しいんだけど、


「教会に女神像がなかったら、飾ってみようかって思うんじゃないか?」


「憶測の段階で行動に移せるものは多くないと思うがのう。兄上が木像で成功しておったからこそ、そこに時間と労力をさけようというものよ」


 俺がやって成功してるしってことか。

 あれ? 俺がそんなことしなかったら、教会に女神像が置かれるっていう状況にはならなかった?

 いや、今回のワールドクエストが最初から順調に進んでれば、俺より先にそれを試す時間とかもあったよな……


***


「ちわっす」


『ショウ君』


 バーチャル部室にはミオンだけ。

 先に行ったセス美姫は当然いないし、ベル部長も既にIROプレイ中。

 ヤタ先生は……例の扉が開く頃には現れるかも?


「ベル部長はもうIRO行ってるっぽいけど、その前に会った?」


『はい。今日でワールドクエストを終わらせるって意気込んでました』


「あはは」


 午後2時スタートだし、夕方までに終わる感じ? それか、何か起きて夜まで引っ張るかもかな。


『ショウ君、今日、向こうではどうするつもりですか?』


「いざってときの待機だけど、多分、暇になりそうだから魔導書持っていって読んでようかなって」


『なるほどです』


 ぼーっと待ってるのもあれなので、応用魔法学<水>、空間魔法、基礎錬金術の本は持っていくつもり。

 ミオンにはレオナ様あたりの配信を見てもらって、それで状況を把握しつつ、俺が最上位管理者の指輪でどうにかしないとって話なら、その時は覚悟を決めようかなというところ。

 また厄災が起こると、島にいるスウィーや妖精たちも危ないんだろうし……


「じゃ、いってきます」


『はい。いってらっしゃい』


***


「っと。こんにちは」


 転移してきた俺に気がついた警備の竜人さんが一礼し、バーミリオンさんを呼びにいってくれた。

 この部屋の外も随分と慌ただしい感じがするし、やっぱり午後2時の扉の開放に合わせて準備してるのかな。


「おう、バタバタしててすまんな!」


「いえいえ。俺は待機なんで気をつかわないでもらえると」


 場所を移して、昨日と同じ部屋に入ると、


「やっほー」


「あ、ども」


 アズールさんが出迎えてくれた。


「ゲイラは準備に出ちゃってるから、僕から今日の予定を説明しておくね」


「あ、はい」


 昨日一緒に行動したバーミリオンさん、ゲイラさん、竜人さんたちは、例の扉の場所へと向かうらしい。

 アズールさんと俺はここで待機し、何かヤバいことがあった時に出動という手はず。

 夕飯に戻る必要はあるけど、また午後7時くらいには来れることは伝えておく。


「じゃ、俺は行ってくるぜ。ショウ、すまんがそいつの相手をしててくれ」


「ひどいなあ」


 そう言いつつもニコニコ顔のままのアズールさん。

 魔法が得意っぽいし、持ってきた本でわからないことがあったら聞くことにしよう。


「そういえば、今日はアージェンタさんはいないんですか?」


「もう少ししたら来ると思うよ。姫を連れてね」


「白竜姫様、ここに連れてきて大丈夫なんです?」


「別にトラウマとかはないから平気だよ。無理をさせるつもりはないけど、君が来てるって聞いたら、ついてくるんじゃない」


 カムラスのコンポート持ってきておいて良かった……

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