第311話 真贋を通して見えるもの

「真贋は何かしら偽られたものに対して発動するから、なかなか使う場所がないと思うんだよね」


「はあ……。じゃ、また変装とか擬態とか、そういう相手が出てこないとダメって感じです?」


「そうなんだけど、ほら。ここにいる僕たちに使ってみればいいんだよ」


 そうニコニコするアズールさん。

 ああ、竜が人に化けてるから、それを真贋で確認しろってことか!

 でも、こういうのって……


「失礼にあたったりしません?」


「一般的にはそうだが、ショウならいいぜ」


「ですね」


「はいはい、サクサクやってやって」


 まずは真贋のスキルを取得しないと。レアスキル、SP9消費して残りSPは7。

 先駆者褒賞がもらえたら真贋スキルはライブで話してしまおう。蒼竜の鱗飾を甘味のお礼にもらったってことにすればいいし。

 鑑定でいいのかな? バーミリオンさんを鑑定で見ると、一瞬、本来のドラゴンの姿に見えてびっくりする。


【ドラゴン:バーミリオン:信頼:擬態中】

『緋竜と呼ばれる神代竜。

 竜族一の武威を誇り、武闘派の竜および竜人族を束ねる』


【真贋の先駆者:10SPを獲得しました】

【真贋スキルのレベルが上がりました!】


「うおっ! 強そう!」


 緋竜っていうだけあって、俺のイメージするドラゴンに一番近いかも。


「いい反応だな!」


 なんか嬉しそうなバーミリオンさん。


「はいはい。次、僕ね!」


 アズールさんは……


【ドラゴン:アズール:信頼:擬態中】

『蒼竜と呼ばれる神代竜。

 竜族一の知識を誇り、元素魔法で彼の右に出るものはいない』


「おおー、綺麗ですね」


【真贋スキルのレベルが上がりました!】


「へっへー!」


 蒼竜の名の通り青い竜だけど、クールで知的なドラゴン。

 その感想にアズールさんも嬉しそうにしてくれる。


「どうぞ」


「あ、はい」


 アージェンタさん、こういうのに乗ってこないタイプだと思ってたんだけどな。っと……


【ドラゴン:アージェンタ:信頼:擬態中】

『銀竜と呼ばれる神代竜。

 白竜姫の懐刀と呼ばれ、実質的に竜族を統括しているナンバー2』


「おおー! やっぱすごい……」


【真贋スキルのレベルが上がりました!】


 地下の大型転送室に転移してきた時は、もう驚くしかできなかったけど、銀色の竜ってちょっとメカっぽい感じもあっていいよなあ。


「フッ」


「「チッ」」


 勝ち誇った表情のアージェンタさんに舌打ちする2人。

 俺の反応で喧嘩するの、やめてほしいんだけど……


「えっと、魔導線のこと、教えてもらえます?」


「あ、そうだったね。えーっと、渡した本にあるんだけど……」


 魔導具関連の本って渡されたけど『基礎錬金術』ってタイトル。

 あれ? これひょっとして錬金術ってスキルがあるのか? いいや、とりあえず先に説明してもらおう。

 本の最初の方をペラペラとめくっていくと、


「あ、そのページ。えっと、ここに書いてある配合比率でインゴットを作るんだけど、鉱石から配合をピッタリ合わせるのは大変だから……」


 いったん、それぞれを純インゴットにして、そのインゴットを比率で混ぜるのがいいらしい。

 それでできた合金インゴットを使って、魔導線を作ると。


「魔導具って簡単に作れるものなんですか?」


「うーん、簡単ではないかなー。今ある魔導具を解析して、構成する全ての魔法を習得してる必要があるからね」


 魔法解析はそのためにあるのか。

 で、魔導具を解析して、構成される魔法を全部使えて初めてって感じか……


「というか、その感じだとショウ君は魔導具作れないんだよね? なんで、魔導線が欲しいの?」


「あ、えーっとですね……」


 ニーナのことって結局話してないままなんだよな。これを機に話しちゃおう。

 ざっくり、本当に簡単に古代遺跡の管理をしてくれるAI……は伝わらないよな。生命体? 精神体? そういうのがいるって話を。


「僕、そのニーナさんと話してみたいんだけど!」


「アズール、待ちなさい。こちらの問題が解決してからですよ」


「えー……」


 アズールさんも知らなかったらしく、めちゃくちゃ食いつかれたんだけど、アージェンタさんの言う通り、今回の件が落ち着いたらだよな。


〖ワールドクエストが更新されました!〗


「あ! っと、すいません。ワー……、天啓があって、ちょっと待ってください」


 バーミリオンさんも気になるのか、三人に囲まれる感じでちょっと怖い。


【ワールドクエスト:死霊都市:第三部「真実」】

『漆黒の森の奥に見つかった廃墟。アンデッドに占拠されたその都市は古代魔導文明が引き起こした厄災の中心地であった。

 アンデッドが巣食う都市内部は、竜族の信頼の証を得た者たちにより浄化され、かつての繁栄をうかがえるほどとなった。

 残る厄災の中心地。最奥の「英知の核」は今、祝福を受けし者たちによる安寧を求め、再び開かれようとしている。

 目的:死霊都市、最奥の「英知の核」を浄化する。

 ・「英知の核」への扉が開かれるまで約15時間

 副目標:死霊都市に潜入している悪魔の討伐。達成:11/13』


 誰かが最奥に到達したっぽいけど、扉があって、それが開くまで時間待ち?

 15時間後ってことは、明日の昼過ぎだよな。


「えっと、最奥というか中心部に誰かが到達したみたいなんですけど、そこにある扉が開くのが明日の昼過ぎらしいです」


「なるほど。ショウ様、明日は他にご予定が?」


「いや、特にはないですし……こっちに来たほうがいいです?」


「可能であればお願いしたく。その中心部がかつて厄災が起きた場所なのです」


 と頭を下げるアージェンタさん。

 バーミリオンさんもアズールさんも、無理にとは言わないけどと前置きした上で、何があっても俺とルピは守るので、万一の時のために来て欲しいとのこと。

 まあ、最上位管理者権限が使えるのって俺だけだもんな。明日は祝日でおやすみなので問題はないし……


「了解です。じゃ、扉が開く前には来ますけど、待機ってことでいいです?」


「そうだね。ショウ君にはいざという時のために、ここで待っててもらうのがいいかな」


「俺はどうする?」


「バーミリオンはゲイラたちと現場へお願いします」


 いろいろと段取りが決まって行ってるけど、俺はその時間の前に来るだけかな。


『ショウ君。そろそろ時間が』


 あ、しまった。


「すいません。今日は時間なんで帰ります」


 ………

 ……

 …


「ただいまっと」


「ワフン」


『おかえりなさい。ちょうど11時になったところです』


 大型転送室に戻ってきて、ほっと一息。時間もちょうどか。

 転移エレベータに乗って上へ。

 山小屋のある盆地に出ると、レダにロイ、スウィーとフェアリーズが出迎えてくれる。


「〜〜〜♪」


「ただいま。何か変わったことあった?」


 スウィーがふるふると首を横に振り、定位置の左肩へと座る。

 ルピもレダとロイから報告を受けてるみたいだし、ちょっと時間オーバーするけど、お留守番のご褒美をあげてからログアウトかな。


「扉が開くのって明日の午後2時になるよね?」


『はい。でも、なぜそんな時間なんでしょう?』


「ちょうど祝日でおやすみだし、できるだけプレイヤーたくさん参加させるためのギミック?」


『なるほどです』


 荷物を置いて、スウィーとフェアリーズにはとろとろ干しパプ。ルピ、レダ、ロイにはオランジャック(アジ)の燻製を温め直してご褒美を。


『そういえば、もらった本でスキルは取れないんでしょうか?』


「ああ、それ、俺も思ったんだよな」


 インベントリから『基礎錬金術』の本を取り出し、それを手に持ってスキル一覧を開く。検索は『錬金』で検索して……


「あった。普通に【錬金術】でアンコモンか」


【錬金術】

『各種合金を作成するスキル。

 前提条件:採掘Lv5、鍛治Lv5、錬金術関連の書籍の所持』


『取りますか?』


「うん。これがあれば魔導炉で魔導線用の合金作るのも失敗しない気がするし」


 ってことでポチッと。

 ちょっと試しに行きたいところだけど、そろそろ時間だし、明日もあるから後にしよう……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る