第308話 どこかで見たもの、聞いた声
ヤタ先生はベル部長のライブが始まるということでスタジオから退出。
ちなみに今日のベル部長のライブは8時から9時半までやって、そのあとはレオナ様のところで続きになるらしい。
それっていいの? って感じだけど、ベル部長に出演料とかが出てなければオッケーだそうで。
『忘れ物はないですか?』
「うん。大丈夫」
「ワフン」
すでに向こうで顔見せはしたので、ルピは白ルピになってもらっている。
スウィーがあれからやってきて、レダとロイを連れてお見送りを。というか、教会裏に遊びにいくので途中まで一緒にって話だけど。
「じゃ、あとは任せたよ」
「〜〜〜♪」
サムズアップを返すスウィーと別れ、転移エレベーターを下りる。
大型転移室に着いて、出たすぐ左には転移魔法陣。
「ニーナ。また行ってくるのでよろしく」
[はい。了解しました]
悪魔から何か情報を引き出せてて、死霊都市の方も解決してくれるといいんだけど……
………
……
…
「よっと」
転移魔法陣が作動し、周りが昼間見た一室へと変わった。
警護にあたってくれていた竜人さんたちが気づいて跪くんけど、これ毎回やめてって言わないとダメなやつ? と思ったら、すぐに立ち上がって、
「バーミリオン様に連絡してきます」
そう言って部屋を出ていく。走る足音が聞こえるけど、そんな慌てなくても……
『ショウ君、今のうちに』
「あ、ちょっとこの転移魔法陣、調べていいです?」
「は、はあ……」
ピンと来てなさそうだけど、オッケーはもらえたってことで、さっそく魔法解析を開始。
対象をマナで覆うんだけど、乗ったままやると転移しちゃうかもだし、ちゃんと降りてからやらないと。
「ルピ。後ろにいてね」
「ワフン」
魔法解析の完了で鑑定結果が更新されたので、さっそく確認。
【転移魔法陣】
『MPを注ぐことで乗っている人や物を、対となる転移魔法陣へと転移させる。
ただし、魔法陣の上に障害物などがあるときは安全の問題があるため発動しない。
個体番号:F1F52C45-B451-486C-BA0A-F8E92D0AE295
<解析結果>
構成魔法:測位、その他不明。
現在の指定空間の固有識別番号:EABC101E-B85D-46E9-94BB-E1225F6AC023』
「やっぱり。で、これを……」
【指定空間の固有識別番号を取得し登録しました。保存名は変更可能です】
とりあえず【死霊都市】にしとこう。
ここが解放されたら呼び名が変わるかもだけど、その時に変えればいいし。
【魔法解析スキルのレベルが上がりました!】
『やりましたね!』
ミオンの声に小さく頷く。竜人さんが不審に思いそうなので。
これで将来的に転移魔法が使えるようになれば、島と本土を行き来できるし、転移魔法陣がダメになってもミオンを迎えに行くこともできる……はず。
この場所っていつまでも竜族で抑えておけるものなのかな。知らないうちに誰かの家とかになってたりするとまずいし……
「おう、待たせた!」
「あ、どもです」
迎えに来てくれたのはバーミリオンさんだけでなくゲイラさんも。というか、別に俺が呼びに行った竜人さんについていけば良かったような? まあいいか……
「捕まえた悪魔の方はどうです?」
「どうにも口が固くて手こずっております」
と申し訳無さそうなゲイラさん。だが、
「ですが、アージェンタ様がアズール様を連れて、こちらに向かっておりますので、しばらくお待ちいただければと」
アズール様? 様がついてるってことはドラゴン? アズールっていうと青だっけ?
それとバーミリオンさんがなんか渋い顔してるのは……青だとすると相性悪そうな感じ?
ともかく俺はしばらく待機でいいのかな。
「ショウ様、今日はどれくらいおられますか?」
『今、8時半をまわったぐらいです』
「えーっと、2時間ぐらいですね」
ベル部長のライブが始まってるだろうし、いつもは11時に終わってるし、帰りの時間も考えて10時半をリミットにかな。
「ショウ。すまんが昼の続きに付き合ってくれるか。アージェンタが来るまでの1時間ほどでいい」
「ええ、それはかまいませんけど、俺がなんか役に立ちます?」
「俺たちじゃ開かねえ扉があるだろうからな。あと、お前、結構強いぞ?」
ああ、扉、祝福を受けし者=プレイヤーじゃないと開かない扉があるか。
それは納得なんだけど、俺って強いかな? 初見殺しってだけだと思うんだけど……
「こういう事態でなければ、一度手合わせ願いたいところですな」
「ははは……」
「おう。竜の都に招待しねーとな」
前も言ってくれたけど、社交辞令じゃないっぽいんだよな。
行ってみたくはあるんだけど、島で残ってるタスクもあるし、ライブのこともあるし……
「まあ、今回の件が落ち着いたらで」
「じゃ、さっそく行くか!」
………
……
…
昼に悪魔を捕まえた場所まで戻ってきて、改めて周りを確認する。
部室ぐらいの広さの部屋で、来た通路の対面に登り階段が見えるけど、敵がいる気配はなし。
それよりも、何か見たことあるような感じの机が壁際にあるんだよなあ。
『ショウ君。これってニーナさんの部屋にあったのと……』
「うーん、やっぱりそうだよな……」
「どうした、ショウ?」
「この壁の机みたいなのって、古代遺跡の管理ができる部分に似てるんですよね」
その言葉に驚くバーミリオンさんとゲイラさんたち。
ただ、うちの島の遺跡のとはちょっと違うのは、例のマナを注ぎ込む非常用魔晶石が無いこと。あのでかいサイズの魔晶石があった場所は空っぽになっている。
「ショウ。これをお前さんが使えるようになれば、厄災は二度と起こせなくなるってことだよな?」
「そうだといいんですけど、ここに収まるサイズの大きな魔晶石がなくて」
今の死霊都市全体って、ニーナが言うところの『保全状態』だと思う。
だから、誰かが管理者として登録されれば正常動作するんだろうけど、その正常動作が厄災を起こすことだったら困る。
なので、ここに魔晶石がなくて、保全状態を解除できないほうが安全かもしれないんだよな。
「ショウ様。ひとまず先へ行きませんか? ここの件はアージェンタ様にも報告ということで」
「あ、そうですね」
ゲイラさんの言う通りだよな。
ここで考えててもしょうがないし、先へ、上へ行ってみるしかないか。
………
……
…
階段を上ってしばらく進むと扉が。これも多分、俺じゃないと開かないやつ。
「俺が開けます」
「ああ、すまん」
この扉は権限付きのやつっぽい。というか、この通路って偉い人が逃げ出すために用意してあったとかそういう?
【祝福を受けし者のアクセスを確認しました。最上位管理者権限を確認しました。解錠しますか?】
やっぱり。これは用心した方が良さそうな気がする。
振り返るとゲイラさんたちがうなずいて、戦闘態勢を整えてくれる。
「はい」
【気配感知スキルのレベルが上がりました!】
【気配感知スキルの基礎値が上限に到達しました。返還SPはありません】
ん?
「バーミリオンさん。この先に人がいるっぽいです」
「マジか。どうする?」
「俺とルピは隠れてますんで、あとはお願いできますか?」
「おう、もちろんだ。ゲイラ、行って来い」
「承知しました」
バーミリオンさんは俺の護衛が絶対ってことで離れるつもりはないらしい。
扉を半開きにしたまま、ゲイラさんたち近づいていくのを見ていると、その先から声が聞こえて来た。
あれ? これって……
『ショウ君、部長です』
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