第307話 特殊な事情、特殊なビルド

『ショウ君とまずは先生に相談しようということに』


『なるほどですー。そう来ましたかー』


 ちょっと早めの7時半にバーチャル部室へ。

 今日はベル部長とセス美姫はライブなので、早々にIROへと行った。

 緋竜バーミリオン・・・・・・・・が悪魔を捕獲した・・・・らしいって話で盛り上がる二人を、ポーカーフェイスで見送る俺……

 で、俺もIROにログインし、スタジオではミオンがヤタ先生に例のイメージキャラクターの件を相談中。


『学校で問題になったりしないでしょうか?』


『そちらは問題ないと思いますよー。ベルさんの時にいろいろ調べたんですがー、芸能活動をバイトとして認めていた過去の事例がありましたしー』


「へえ……」


 俺は二人の話に合いの手を入れつつ、ご飯を作っているところ。

 今日のご飯はシンプルにパーピジョンの胸肉ステーキ。トリテキは皮がパリッと香ばしくないとだよな。

 ルピ、レダ、ロイが既にしっぽふりふりして待機中……


『ショウ君はどうですかー?』


「どうって……うーん……」


 ミオンがやってみたいっていうならアリだと思うし、それを縛るようなことは言いたくはない。

 ただ、気になることがあって、


「今後、ミオンがIROを遊びづらくなるのは困るかな……」


『有名になるとショウ君の島に行くのも難しくなりますね』


「それもあるんだけど、翡翠の女神ってイメージキャラをやってると、俺の島に来て遊んでるのが許されるのかとか……」


 ミオンはIROのゲーム部分よりも、ルピとかスウィーたちと遊ぶのを楽しみたいんだろうけど、それができなくなったら本末転倒だよなあと。


『やっぱりお断りしましょうか?』


「あ、いや、そういうのが許されるんなら全然いいかなって思うし、そこはミオンが思うように決めていいよ」


『そうですねー。条件面での希望をしっかりと先方に通す方がいいですねー。お二人はまだまだ、楽しくないことを無理にやる必要はないですよー』


「じゃ、そのあたり椿さんとも詰めようか」


『はい!』


 ヤタ先生的には『部活』じゃなく『仕事』になっちゃうのはダメという線かな? 俺もそれは同意っていうか、ミオンと二人でのIROを楽しめなくなりそうだし。

 最終的にはミオンが決めたことに反対しないつもりなので、俺は俺で向こうに行く前に済ませておきたいことが。

 焼き上がったトリテキを切り分けるために魔銀ミスリルの包丁を手に持つと、


【短剣のスキルレベルが上限を突破しました】

【短剣の上位スキルが獲得可能になりました】


 よし。上位スキルは後にして肉を切り分ける。


「はい。熱いから気をつけろよ〜」


「ワフ」


「「バウ」」


 ルピたちの分は塩コショウは少なめ。その分、自分のには後から追加で。


『そういえばー、今日は部室に配信してませんがー?』


『あ、えっと……』


「これから死霊都市に行くんで。ベル部長たちには内緒にしてもらえると」


 ヤタ先生にはミオンを迎えに行く相談もしたので隠す必要もないかなと。

 昼のうちに何があったかは、ざっくりとミオンに説明してもらって、俺はご飯を食べて片付けも手早く。


『なるほどー。面白いことになってますねー』


『ショウ君、大活躍でした!』


「まあ、あれはバーミリオンさんやゲイラさんたちもいたから……」


 バックスタブが完璧に決まらなかったのは、結果的に捕獲に繋がったから良かったけど、バーミリオンさんがいないと逃げられてたよな。


『さっき短剣スキルが上限突破しましたよね。上位のスキルはどれを取りますか?』


「えーっと、ちょっと待ってね。先にキャラレベ上がった分をステータスに振るから」


 悪魔ギエロとの戦闘でちょっと速さが足りないかなという気がしたのと、この先の工芸全般を考えて、AGIに6、DEXに4を振る。BPはもしもに備えて10余らせた状態を維持。


「で、えーっと短剣の上位スキルは【短剣マスタリー】【双剣マスタリー】【特殊剣マスタリー】の3つか。剣鉈ってどれに当てはまるんだろ?」


 それぞれ、解説を見ても『短剣の熟練者による、○○をより専門的に扱うスキル』となってて、うーんって感じ。


『微妙なところですがー、どれかを取ったせいでー、他が取れなくなるわけでもないですよねー?』


「そのはずですけど……」


『でも、レアスキルは取得にSPが9ですよね?』


「そうなんだよなー」


 選択肢としては、無難に短剣マスタリーか、曲者っぽい特殊剣マスタリーのどっちか。

 双剣は盾スキルを捨てるようなもんなのでパス。あと、レオナ様が取得して先駆者褒賞もゲット済みのはずだし。


「特殊剣にしようかな」


『今の剣鉈は特殊っぽいですよね』


『そうですねー。まー、もっと特殊な剣はありますがー』


 ヤタ先生がマンゴーシュ、ジャマダハル、ソードブレイカーといった変な剣をミオンに説明してるけどスルーしとこう。

 この剣鉈がどうなのか不明だけど、違うなら違うでヤタ先生が挙げてるような剣を作ればいいし。

 ということで、SPを9消費して【特殊剣マスタリー】を取得。

 先駆者褒賞はもらえるならもらっとけが基本らしいので、もう遠慮はしない方向で。けど、もらえるかな? とりあえず素振りでもしてみるか。


「ルピ、ちょっと危ないから離れててね」


「ワフン」


 剣鉈を抜いて構え、イメージを練る。相手は昼に戦った悪魔。

 逃げていく奴の延髄を打つ!


【特殊剣マスタリーの先駆者:10SPを獲得しました】


「よし!」


『やりましたね!』


 誰か取ってるかなって思ったけど、セーフだったっぽい。

 やっぱりまだ魔銀ミスリルを量用意するのが大変なんだろうなあ。


「あとは隠密関係のアーツ確認しないと」


『いろいろありましたけど、他のスキルとの複合ですね』


「そうそう。いろいろ一気に増えたの確認しないと……」


 気配感知&調教アーツの<感知共有>から。


【感知共有】

『自身と相棒の気配感知を共有する。ただし、相棒は自身の気配感知範囲内にいる必要がある。

 消費MP:相棒1体につき毎秒4。クールタイム:なし』


 えー、これ、めっちゃ範囲広がる気がするんだけど気のせい?

 いや、毎秒4だと結構MP食う……けど、俺は回復も早いんだよな……


【詠唱隠蔽】

『パッシブアーツ。隠蔽中は詠唱に声を出す必要がなくなる。

 消費MP:なし。クールタイム:なし』


 元素魔法の詠唱って別に長くはないけど、隠蔽したままでいられるのは大きいか。

 で、次がちょっとヤバそうなやつ。


【ポイズニング】

『確実に、かつ、より効果的に毒効果が現れる箇所を攻撃する。ただし、毒無効を持つ相手には効果なし。

 消費MP:60。クールタイム:1分』


 なるほど。毒用の急所攻撃って感じかな。

 悪魔にも麻痺毒は効いてたけど、これ使えばもっと効果出てたかもか……

 最後が、


【潜伏】

『相棒も隠蔽状態となる。ただし、相棒は手の届く範囲にいる必要がある。

 消費MP:相棒1体につき毎秒10。クールタイム:なし』


 おお! これが一番嬉しいかも?

 これってルピだけじゃなく、レダとロイにも使えるよな。

 まあ、MP消費が激しいから、ここぞって時に使うことにしよ……

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