第290話 魔法を使って楽々お料理

 コメントも落ち着いたところで、


『さっそくご飯ですね』


「うん。でも、新しいのは一品だけなんで、そんな期待はしないでもらえると」


 立ち上がり、倉庫の方へと向かう。

 既にセルキー女子たちが、カルパッチョや南蛮漬けを作り始めてて……


「キュ?」


「キュ〜♪」


 出来上がった分をテーブルへと運んで行ってくれる。

 他のセルキーたちは、まだかなまだかなって感じになってるし、さくっと仕上げないとだよな。


「じゃ、メインディッシュを作るよ」


『はい!』


 とはいえ、そんな難しい料理というわけでもないし、そのままお刺身でも美味しいだろうこの、


【ピュアラス】

『沖合から沿岸部に生息する50cm前後の魚。食用可。

 料理:焼く、煮るといった調理が一般的』


【タイコスキー】「鯛!」

【モルト】「日本酒の出番か!?」

【メタルジーグ】「お刺身?」

【スイベル】「シンプルに塩焼き?」

 etcetc...


『大きい鯛ですね!』


「うん。俺もこんな大きなの初めて見るよ」


 リアルだったら一万円は下らない、もっとお高くなりそうな立派な真鯛。

 これを捌いて塩コショウし、少しグレイプルワインをかけたあと、片栗粉を軽く塗してからフライパンへと。


『ソテーですか?』


「ポワレかな? カリッとするまで焼くのがポワレでいいんですよね?」


【ネルソン】「ソテーとかポワレとか難しいよね」

【マスターシェフ】「ポワレだね。まあ、どっちでも大丈夫だよ♪」

【エムデイク】「日本語でおk」

【ウッディ】「既に美味そう……」

 etcetc...


 コメント欄から合ってるようなコメントが来たので一安心。

 美味しければなんでもいいやって感じなので、あんまり気にしないけど。

 

「皮目をパリパリに、しっかり焼き目がついたところで野菜も」


 メランザ(ナス)、クルビータ(カボチャ)、キャロッタ(ニンジン)、ケーパ(タマネギ)を薄く切ってから、加熱の魔法をかけて温野菜状態のものを炒める。

 あ、野菜の種類が増えてるので盛り上がってるし、あとでまた話さないとな。


「じゃ、取り出してソースを作るよ」


『そのフライパンで作るんですね』


「うん。いい味が出てるからね」


 入れるのは豆乳とグレイプルワインを少し。

 塩コショウで味を整えれば豆乳ホワイトソースが出来上がり。


「これをさっき焼いたやつにかけて、最後にグリーンベリーの輪切りを添えて完成!」


【料理スキルのレベルが上がりました!】


「あ、なんか久しぶり?」


『おめでとうございます!』


【カルセルン】「料理スキルのレベルいくつ?」

【デイトロン】「<真鯛のポワレ代:5,000円>」

【プレマル】「<スキルアップおめ〜:300円>」

【マスターシェフ】「<お見事!:1,000円>」

 etcetc...


「どもども。これで料理スキルは9ですね」


 あ、そういえば、魔銀ミスリルで包丁作ればと思ってたの忘れてるな。


「キュ?」


「うん、お願い」


 あとはセルキーの子たちにおまかせでいいかな。

 ルピたちもお腹空かせてるだろうし、さっそく食べよう。


「おまたせ」


「キュ〜♪」


「〜〜〜!」


「あ、ごめん。スウィーたちにはこっちね」


 スウィーとフェアリーズには、豆乳と片栗粉で作った豆乳もちを。

 作り方はわらび餅とほぼ同じだけど、豆乳で練っただけでまろやか風味の優しい味わいになった一品。


【フェル】「ちょw さらっと新作デザートw」

【アシリーフ】「え? お餅じゃないよね?」

【ヴェネッサ】「しらたまですか?」

【アイエイ】「初めて見る……」

 etcetc...


「あ、これは豆乳もちですね。わらび餅を豆乳で作ればできるんで簡単っすよ」


 きな粉と青蜜をたっぷりかけて準備オッケー。


「じゃ、いただきます!」


「ワフ」「「バウ」」


「〜〜〜♪」「「「〜〜〜♪」」」


「キュ〜♪」「「「キュ〜〜〜♪」」」


 さて、まずはピュアラスのポワレ。

 豆乳ソースをしっかりまとわせてからぱくっと……


「美味い……」


【ピューレ】「あーあーあー」

【ノンノンノ】「そりゃ美味しいよねえ……」

【マスターシェフ】「魚介のうま味が染み出してそうだ」

【マルタイ】「パンが欲しくなるやつ」

 etcetc...


「意外とちゃんとホワイトソースっぽい感じっすね。これならシチュー作れるかな?」


『あ、ショウ君。ヤギさんが来たことをみなさんに』


「ああ、そうだった! パーンたちが島民に加わってくれたあと、エクリューっていうヤギを連れてきてくれて……」


 まだ乳搾りとかしてないから、エクリューのミルクも手に入ってないんだけど、とりあえずバターを作りたい。

 あとはチーズ? チーズって魔導醸造器で作れたりするのかな? 作れたとして、どういう出来上がりになるのか気になるけど……


「バターって、基本的に牛……じゃないエクリューミルクを振ってればできるんですよね?」


『え、そうなんですか?』


【フェムラ】「マジで!?」

【マリオネラ】「牛乳は調整乳だとダメだよね?」

【サブロック】「搾りたてなら問題なし」

【シェケナ】「エクリューバター美味しいよ〜♪」

 etcetc...


 コメント欄で教えてくれたのは、リアルだと低脂肪乳はもちろん、脂肪分を均質化したやつだとダメだとかそういう話らしい。

 ただ、エクリューから採れたてのミルクなら、当然そんなのはないので大丈夫だそうで、割と簡単にできるとのこと。


「蓋をした瓶に入れて、冷やしながら振り続ける、か。ありがとうございます」


『冷やすのは冷却の魔法ですか?』


「そうだね。あと振るのも魔法を使えばいいかなって」


『魔法ですか?』


 手でやってもいいんだけど、どうせなら空間魔法の訓練になるあれ。


「えっと、これを……<回転>」


 手にしたコップをくるくるっと回してみせる。

 これ、ライブでも初めてだろうし、紹介するのにちょうど良かった。


【ガーレソ】「ふぁ!?」

【ジューザ】「これはハンドミキサーがわりになりそう」

【ラカン】「これって空間魔法?」

【マスターシェフ】「フードプロセッサー作ろう!」

 etcetc...


「ああ、フードプロセッサー! ちょっと作ってみます」


『ショウ君。その回転の魔法ってMPはずっと使うんですか?』


「うん。固定と同じで作用してる間はずっとかな」


 コップが小さいからかMP消費は少ない感じ。

 回すものが大きくなったり、抵抗があれば増えるかも?

 ただ、MP自然回復が強化されてるし、ペンダントにMPを貯めてあるから余裕余裕。


【アクモン】「空間魔法、他にはあります?」

【ワサンコ】「回転はいろいろ応用効きそう」

【アシリーフ】「モーターが手に入ったって考えるとやべえ!」

【ディーエス】「魔導書どこだー!」

 etcetc...


 モーターって考えると、いろいろとあれこれあるなあ。

 ドリルとか作れそうだし、ギアが作れれば電動……じゃない魔動トロッコとかも。


『空間魔法の魔導書、みなさんも手に入れられればいいんですが』


「そうだね。あー、でも、俺のがアージェンタさんからもらったやつで、竜族が古代都市を管理してたりするから、やっぱり死霊都市かなあ?」


 元素魔法の上位って確か、結界魔法、空間魔法、重力魔法だっけ。

 ワールドクエストが終わったら解放されるぐらいが順当な感じ?


『ショウ君、空間魔法のもう一つを紹介してください』


「あ、測位もあったんだった。えっと、この魔法は多分、単体で使う魔法じゃないと思うんだけど……」


 指定した空間を測位して、その情報を保持できるって話。

 コメント欄でも転送や転移のための魔法じゃないかって話になってるし、早く空間魔法のレベル上げないとだよな。


「あ、ちなみにその測位で記録できる情報って、共有とかできないんで」


『できたとしてもダメですからね』


「はい……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る