第287話 のんびりお散歩ルーティーン

「お、ばっちりっぽい?」


『すごいです!』


 なんかくすんだ灰緑色っぽかった亜魔布のバンダナは、媒染液に浸けるとすーっと深緑色に変わっていく。

 若干くすんだ色合いでちょっと赤みが入ってるのは、やっぱり媒染液のグレイプルビネガーのせいかな?

 パプ酢だったらもっと鮮やかな緑になったのかもだけど、これはこれで。


『もう一回ですか?』


「いや、これだけしっかり色がついてるなら大丈夫だと思う」


 ということで、乾燥の魔法をしっかりかけて乾かして完成!

 色ついたら何か表示変わるかな?


【高品質な獣用バンダナ(仙人笹染め)】

『亜魔布で作られたバンダナ。高品質。仙人笹染め。

 MP回復30秒につき+3。悪疫耐性I』


「……なんかついた」


『ポーションで染めたからでしょうか?』


「だと思うけど、悪疫耐性ってなんだろ」


 鑑定結果から『悪疫耐性I』を再度選ぶと、


【悪疫耐性I】

『HPとMPが回復しなくなる悪疫状態への耐性。

 悪疫を伴う状態異常攻撃に抵抗する可能性が1段階上がる』


「おおお、なんか凄そう……」


『前に部長がキノコのモンスターの胞子の話をしてましたけど、そういうのに効果があるとかでしょうか?』


「なるほど。これ、ベル部長に伝えておかないとかな」


『そうですね。明日のライブで話してしまっていいんじゃないかと』


「りょ。アンデッドもそういうのありそうだもんな」


 ゾンビとかグールとかって死霊都市に出没してるんだっけ?

 それ以外でもアンデッド系って『悪疫』のイメージあるし、染めるだけなら全然アリだよな。

 仙人笹の笹ポでこの効果だけど、コプティのポーションならまた違う効果つきそう。

 レダとロイの分のバンダナは別ので試してみるかな。


「〜〜〜♪」


「あれ? スウィー?」


『あ、雨止んだみたいですね』


 いつの間にか雨は止んで、雲の隙間からうっすらと日も射し始めてる。

 フェアリーズが伏せてるレダとロイに座ってお喋りしてるのが微笑ましいんだけど、晴れたなら晴れたでやっておきたいことが。


「ミオン、今、何時?」


『9時半を回ったところです』


「さんきゅ。じゃ、南側ぐるっと散歩してくるぐらいは大丈夫だよな」


「ワフ!」


 散歩の言葉に反応したルピが、早く行こうとせがむ。

 忘れないうちにパプ酢を作りたいし、パプの実の採集を忘れないようにしないと。


「じゃ、行こう」


「ワフン」


「〜〜〜♪」


 ………

 ……

 …


「ありがとう、ルピ。レダもロイもね」


 フォレビットを狩って咥えてきたルピを褒めて撫でる。

 さくっと解体して、ご褒美のおやつは3人分。レダとロイもちゃんと追い込みしてくれたしね。


「「「〜〜〜♪」」」


「フェアリーズもありがとう」


 フェアリー用の小袋にコショウの実を集めてくれたので、ご褒美のとろとろ干しパプを。

 アージェンタさんとこの獣人さんが作ってくれたやつだけど、フェアリーズもスウィーもいつもと同じように美味しく食べてくれている。


『明日は放課後に港まで移動ですよね?』


「うん、そのつもり。間に合わなかったら、最悪、移動中からライブでもいいかなって」


『そうですね。天気が良ければ外を通りませんか?』


「ああ、それいいね」


 ドラブウルフたちが元気にしてるかも確認したいし、レダとロイもたまには家族に元気な顔を見せてあげて欲しい。


 南西の森を抜けて無人島スタート地点の砂浜へ。

 久しぶりにアレをやろう。レダとロイは初めてのはず。


「ルピ、お手本見せてあげて」


「ワフ!」


 取り出したフライングディスクに目を輝かせるルピ。

 それを投げると、弾丸のように飛び出していって、華麗に空中でキャッチする。


「よ〜しよし」


「ワフ〜」


 その様子を見たレダとロイが目を輝かせる。可愛い。

 どうせなので2人一度にと思い、予備のフライングディスクを取り出す。


「二つ投げるから、ちゃんと分担してキャッチしてね?」


「「バウ!」」


「よし……それっ!」


 2枚のフライングディスクを立て続けに投げると、レダとロイが並行して走っていく。

 2人ともルピよりも一歩の幅が大きいけど、スピード自体はあんまり変わらない感じ? 砂浜に慣れてないのもあるのかな。

 そんなことを思っていると、


「ワフ!」


 ルピの掛け声でジャンプした2人が、それぞれのフライングディスクをキャッチする。


「おお〜!」


『すごいです!』


 スウィーとフェアリーズも思わず拍手。

 2人はそのままルピの元まで駆けてきて、フライングディスクをルピの前へと置く。


「「バウ」」


「ワフ」


「よしよし、みんなよくやった」


 しっかりみんなを撫でてあげて、ご褒美に兎肉を切り分けてあげると……


【投擲スキルがレベルアップしました!】

【調教スキルがレベルアップしました!】


「あ……」


『おめでとうございます』


「さんきゅ。そういえば、最近、投擲はあんまり使わなくなってたなあ」


 砂浜近くのテントで寝泊まりしてる時は、よくルピとこれで遊んでたけど、山小屋を改装したあたりからやってなかったっけ。

 調教の方はレダとロイが増えたおかげ? あんまり何かを仕込むとかなくて、ルピに任せっきりだったせいかな?


『ルピちゃんたち楽しそうですし、また時間がある時にですね』


「だね」


 今日のところはこれでおしまい。南東の密林の方へと進む。

 気配感知をしっかり、ルピ、レダ、ロイにもしっかりと警戒してもらいつつ。

 サローンリザード、サウスネーク、バイコビットはルピたちが狩ってくれるので、フェアリーズも安心してパプの実を採集できる感じ。


「ありがと」


 採ったパプの実を俺に向かってぽいっと投げるのが楽しいのか、次々投げられてくるのを受け取ってはインベントリに放り込む。

 純粋に採集してくれる人手が増えるので、集めるのも楽になったよなあ。


「とろとろ干しパプはもう送らなくてもいいのかな?」


『そうですね。向こうにパプの実もあるようですし、新作ができたらレシピと一緒に渡すのはどうですか?』


「あ、そうだね。向こうに素材があるものなら、レシピ送った方がいいのか」


 パプの実は本土のどこでも採れるみたいだし、乾燥の魔法さえ使えればすぐに作れるもんな。

 片栗粉と砂糖も向こうにあるだろうし、わらび餅の作り方もレシピにして送った方が早い気がする。


「こっちにしかない食材ってなんだろ?」


『フェアリーの蜜はスウィーちゃんたちじゃないとですね』


「ああ、それがあったか」


「〜〜〜♪」


 ドヤ顔するスウィーだけど、これは確かにフェアリーにしかできないことだもんな。

 無理に量を用意するつもりもないし、自分たちだけで使うことにして、アージェンタさんには蜂蜜で代用してもらうことにしよう。

 ……蜂蜜ってあるよね?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る