第282話 島インフラ延伸計画?

 さくっと地下室の確認だけで済むはずだけど、ニーナに聞いておきたいことがあったのも思い出した。


「ニーナ、ちょっといい?」


[はい。ご用でしょうか?]


「質問なんだけど、この教会って……施設の外になると思うんだけど、なんでニーナが管理できるの?」


[地下に埋設された魔導線が教会の地下室につながっているためです]


 魔導線……電線みたいなものなのかな?

 ニーナがリサイクルしてるマナを共有できる先だから管理もできる?

 いや、でも……


「地下室だけならわかるんだけど、この教会部分もできるのは?」


[教会の壁や屋根裏部分にも魔導線が通されているためです]


「マジか……」


 思わず右側の壁まで近づいて、コンコンと軽くノックしてみるんだけど、魔導線とやらが入ってるかどうかは全くわからない。


『その線は細いものなんでしょうか?』


「ニーナ。魔導線ってどれくらいの太さ?」


[地中魔導線の直径は約2.0mmです]


 2.0mmって結構太い方?


「それって、俺が作れたりする? 必要な素材とかわかるかな?」


『え?』


 ミオンが驚いてるけど、不可能じゃない気がするんだよな。

 もちろん素材さえあればだけど、採掘場と製作室があるってことは、作れるんじゃないかと……


[……。魔導線の作成方法について、該当する情報がありませんでした。必要な素材は魔銀ミスリル、銅、軽銀です]


「むむむ……」


 今ある設備の情報はあるけど、それ以外ってなるとダメか。

 保全状態になって、その手の情報もリセットされちゃったのかもだけど、素材なら今あるのからわかる感じ?


『ショウ君、作り方はドラゴンさんに聞いてみてもいいかもですよ』


「なるほど。アージェンタさんなら知ってるかもか。知らなくても、手がかりになりそうな本とかあればだよね」


『はい』


 っていうか、必要素材が採掘場で見事に揃ってるし、製作室もそのためにあるような気がしてきた……


『でも、ショウ君、どうしてそんな話を?』


「あ、うん。それが自力でできるんなら、山小屋まで魔導線を引けないかなって」


『なるほどです!』


 階段の出口から山小屋まで30mほどだし、魔導線の材料はさっきの話だと問題なさそう。

 ニーナと連絡も取りやすくなるし、1階にある保存箱にマナ補充もしてくれるようになるし。


「〜〜〜?」


「ワフ」


「っとごめん。地下室調べないとな」


 教会の地下室って何があるんだろ……


 ………

 ……

 …


『思ったより狭いですね』


「うん。山小屋の地下よりも狭い」


 教壇を退けると、地下への入り口を開くための取手があって、それを引き上げると1mほどの地下への階段が続いていた。

 ニーナ曰く、地下にモンスターがいたりはしないそうでーーもうセーフゾーンだしーー気楽な感じ。一応、ルピが先に下りてくれたけど。


「〜〜〜♪」


 スウィーがふらふらと飛んでいき、左の壁沿いに置かれている木箱? を興味津々で覗き込んだり。

 2つある木箱のどちらも布が掛けられてて、布はこれただの麻布? ……亜魔布だこれ。

 雑に被せられてるせいか、ちょっと劣化してる感じだし、そこまでお高いものが入ってるわけじゃなさそう。

 左手の一番手前にある木箱の亜魔布をどけると、中に現れたのはアンティークっぽいランプ。


「っと鑑定」


【魔導常夜灯:利用不可】

『マナを利用して光る常夜灯。手に持って、もしくは吊り下げて利用される。

 基礎魔法学:魔晶石(極小)を設置することで、利用可能になる』


『あかりですか?』


「うん。ランタンって感じかな」


 サイズ的には手持ちのランタンで、持ち手が上についてて、引っ掛けて設置することも可能って形状になっている。

 教会の中を照らしてたやつの予備か、外を照らすためかな?

 それが3つ。隣の木箱も同じような箱でそっちにも3つ。


「極小の魔石は確か……あった」


 腰に吊ってあった巾着袋に入れっぱだった魔石を一つ取り出す。で、浄化して魔晶石に。

 普通のランタンはガラスの風よけとかがついてるんだろうけど、魔法で光るならそういうのいらないよなと。

 中央の台座部分にお誂え向きなくぼみがあったので、そこに魔晶石をすぽっとはめる。


「あとはマナを注いでかな? ……あ、点いた」


 ちょっと眩しいし、やっぱりこういうのはすりガラスとかはまってる方が雰囲気あるよなあと。 


『オンオフとかはないんでしょうか?』


「なさそう。多分、こうやって……」


『なるほどです』


 逆さにして魔晶石を取り出せば、当然あかりも消える。シンプルでわかりやすい。

 ここで眠らせててもしょうがないし、回収していこう。ただ……


「どこか使う場所あるかな?」


『トゥルー君やパーン君が使ったりしませんか?』


「ああ、そっか。聞いてみよう」


 普段の生活で使えそうなら、セルキーやウリシュクに渡しちゃう方がいいな。

 あと、セルキーとかウリシュクがどんなところで、どういう生活してるのかは気になる。

 ウリシュクはヤコッコやエクリューを飼育してるみたいだし、カナヅチが使えたりもするし、崖の上にはいろいろありそう。


「よし。じゃ、あとはこの奥の……え? これなんだろ?」


 奥にあるのは横に長い木箱だと思ってたんだけど、亜魔布をどけるときっちりと蓋がされていて……微妙に棺桶っぽい感じが。

 これ開けたら吸血鬼? バンパイア? そういうのいたら怖い……


「鑑定してもただの蓋つきの箱だな。あ、そうだ、罠チェック……ないっぽい」


『何が入っているんでしょう?』


「ニーナ、本当にアンデッドとかもいないよね?」


[はい。不浄なマナも検知されておりません]


 不浄なってそういう判定もしてるんだ。

 それなら安心? 多分……。でも、一応、


「ルピ、スウィー、下がってて」


 その言葉に2人が渋々だけど、階段のところまで下がってくれる。精霊の加護も掛けて準備よし。

 蓋に手をかけてぐっと上へと持ち上げると、その中に横たわっていたのは……


「ど、どうしよ?」


『と、とりあえず、そっとしておくというのはどうですか?』


「りょ……」


 てか、なんでこんなところに等身大の『名も無き女神像』が……って、そういうことか。


「教会を見つけたときに、この地下室も見つけて、この名も無き女神像を設置するっていうのが本来の手順?」


『なるほどです。でも、教会に地下室があるなんて、ニーナさんがいなければわからなかったんじゃないでしょうか?』


「確かにそうなんだよな……」


 ともかく、これは見なかったことにしよう。少なくともワールドクエスト終わるまでは……

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