第277話 妖精の円舞曲
すごい勢いで流れてたコメント欄が少しずつ落ち着いていって……ようやく止まった。
小額だけど投げ銭だらけになってて怖い……
<はいー、終わりましたよー>
『お疲れ様です』
「お疲れっす……」
カオスな状態はまだ続いてるけど、とりあえずライブは終わったのでほっと一息。
草むらに腰を下ろして、まだ踊ってるフェアリーズやウリシュクたちを眺める。
楽しそうにしてるし、止めるのはかわいそうかな。
「ワフン」
ルピがあぐらをかいた俺の足の間に収まってくるので、優しく撫でて癒される。
レダとロイも左右に伏せ、妖精たちが楽しんでるのを眺めてる感じ。
「あー、こういう時……」
『こういう時?』
<なんでしょー?>
「これが吹ければなって」
インベントリから取り出したのは、アージェンタさんから送られてきた笛。
古代神楽笛とかいうらしいけど、まさにお祭り向きの楽器だよな……
<音楽は苦手ですかー?>
「っす」
<ゲーム内ならうまく吹けるかもですよー?>
『そうですよ。さっきSPも貰えましたし、音楽のスキルを取りませんか?』
ミオンが結構乗り気……
確かにさっき守護者の褒賞のSPをもらったんだよな。
「ちょっと探してみるか……」
楽器を演奏できるようになってみたいっていう憧れはある。
ただ、普通にできるまでのハードルがめちゃくちゃ高いんだよな、現実世界だと。
メニューを開いて、スキル一覧を検索……音楽? 演奏?
「演奏スキル。これかな」
習得に必要なSPは4のアンコモン。一般的ではないけど、使える人はそれなりにいるっていうレアリティだよな。
<楽器の指定とかはないんでしょうかー?>
「なんともっすね。そもそもこの世界って、楽器たくさんあるんでしたっけ?」
よくあるRPGとかだと笛と太鼓ぐらい? あとハープとかリュートの弦楽器ぐらいがお約束だけど、それは上級スキルで専門になりそうな予感。
『調べてきましょうか?』
「いや、いいよ。取ってみる」
『あっ、無理はしてないですか?』
「してないしてない。演奏できたらなーっていうのはあるし、でも、リアルだと恥ずかしいから、ここで練習してみるよ」
下手なのはこの際しょうがないとして、ゲーム内ならスキルアシストでうまくできるんじゃないかっていう。
<ミオンさんが得意そうですしー、教わるといいと思いますよー>
『任せてください!』
アッハイ……
いや、どうやって教わるのって感じなんだけど、まあいいか。
「んじゃ、ポチッと」
守護者で3増えてて、演奏スキル取って4減って、残りSP14。余らせてる方だよな、これ。
あ、笛を一応鑑定し直し……
【古代神楽笛】
『祭祀に奉納される神楽の演奏用に用いられた横笛。
神聖魔法+1、演奏+1』
「お、ラッキー。演奏+1ついてる」
『演奏スキルの補正って具体的にどうなるんでしょう?』
<謎ですねー>
……確かに謎だ。
戦闘系なら与えるダメージが増えるとか、動きが速くなるとかだよな。
生産系だと作る過程が楽になるとか、出来上がった物の品質が上がるとかだし。
音楽って形に残らないし、その場で消えていくもののレベル補正ってなんだろ?
「とりあえず試してみるか。音ぐらいは出せると思うし」
で、この神楽笛の持ち方って? と思ったところで、スキルアシストさんが構え方を指図してくれる。
やっぱりフルートと同じ感じなんだ……なんか見られてると思うと恥ずかしいなこれ。
構えるところまで終わって、はたと気づく。演奏するとして……何を?
初心者が空で吹けるような曲なんて……なんかラーメンのやつぐらい? それも、どれがどういう音なのかさっぱりなんだけどと思ったところで、
【演奏アシストをオンにしますか?】
という表示が出た。
<なるほどー。全く知らない人でも何か演奏できるんですかねー>
『試してみましょう』
「う、うん」
もう俺の中で、勝手に演奏してくれてもいいやって感じ。
それを体で覚え込む方が早いかもしれないし。
「オンで」
そう答えると、一瞬だけ間があって、
『古代民謡<妖精の
と表示された。
なんか、周りの状況を見て選曲してくれてる感じ? AI判定とかしてるんだろうけど、すごいな。
そんなことを考えているうちに、スキルアシストが演奏開始を促す。
ノリ的には完全に音ゲーで、スキルアシストに沿って指を動かして吹けって仕組み。
ル〜ル〜ル〜♪ ルル〜♪
おお! 演奏できてるっぽい! けど、それどころじゃなく指を動かして吹くのが大変すぎる!
『すごいです!』
<いいですねー>
その演奏が聞こえたのか、フェアリーやウリシュクがわーっと寄ってきて踊り始める。
すごくそれっぽいんだけど、演奏するので手一杯!
なんとか一曲分? ミスもなくフルコン演奏し終わったところで、
【演奏スキルがレベルアップしました!】
あ、うん、1から2はすぐだよな。
『ショウ君、バッチリでしたよ!』
<音ゲーになれば平気なんですねー>
「はは、でも、これ、めっちゃ疲れる……」
音ゲーっぽくはあるんだけど、この指を動かせ的なアシストがバーチャルな体に伝わってくるので、それに集中して追従してればなんとかってぐらい。
選ばれた曲も初心者向きなスローな感じだから良かったけど、レベル上がったら選ばれる曲の難易度が上がるんだろうなあ……
<ところでただの演奏だけですかねー? こういうのは補助魔法的な効果があるのがお約束なんですがー>
『補助魔法ですか?』
ヤタ先生が言わんとするところは俺も思ってて、こういうのってバフやデバフがかかるのがお約束なんだけどなあと。
IROだとアーツになるのかなって気はしてるので、スキルレベルを上げればってとこかな?
この辺はミオンに調べてもらってもいいかもだけど、俺が演奏してバフなりデバフなりすると、誰が前衛をやるんだって話なんだよなー……
「まあ、演奏に関しては、妖精たちとの交流がメインでいいかなと。もう少しレベル上げて、いろいろ演奏できるようになったら、セルキーたちにも聞かせてあげたいし」
『いいですね!』
<そうでしたねー。のんびりするためのスキルだと思いましょー>
だよな。
微妙な時間空いた時にでも練習しよ……
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