第276話 お約束いろいろ

 教会裏の休憩場所に戻ってきて……


「〜〜〜!」


「あ、ごめんごめん。ご褒美デザートね」


 レーズンアイスができたので、それを木皿に盛って小さいスプーンを並べると、スウィーとフェアリーズが一斉に群がった。


「〜〜〜♪」


 スウィーがまず一口食べてだらしない顔に。女王の威厳はどこへ。

 ルピとレダ、ロイには採れたてライコス(トマト)の砂糖がけを。

 みんなが美味しそうに食べてくれてるのを見つつ、崖の方に目をやる。


「あの上、行けたんだなあ」


『行ってみないとですね』


【マッチルー】「ウリシュク村あるのかな?」

【ムシンコ】「気になるわ〜」

【ジョント】「まあまあ、今日はのんびりよ〜♪」

【ルマミール】「まずは友好関係を築かないとですね」

 etcetc...


 ウリシュクたちが静かに暮らしたいって話なら、無理に押しかけたりはしたくないけど、友好的なら行ってみたいところ。

 ただ、


「あの崖、どうやって登ろう?」


【マユタン】「無難なのはしごですか?」

【バイタミン】「ショウ君の木工技術なら、はしごぐらいは楽勝だよな」

【バンジョ】「頻繁に行き来するなら、階段欲しいところ」

【サブロック】「崖沿いに階段とかあるといいよね」

 etcetc...


 手っ取り早いのははしごかな? 持ち運びのことを考えると折り畳めるやつ?

 そのあと、常に行き来するようになるなら、階段も考えないと。


『まずは、はしごを作るのはどうですか?』


「そうだね。はしごなら、ここ以外でも使い勝手あるし、できれば折り畳めるやつとか作りたいかなって」


【クショー】「またすごいはしごの予感……」

【ミンセル】「え? 折りたたみって?」

【ネルソン】「すごいフラグ来た!」

【グランド】「登攀+1とかそういうやつ?w」

 etcetc...


 折りたたみって言っても、なんかスライドするような凝った作りじゃなくて、蝶番をつけた二つ折り、いや、四つ折りぐらい?

 蝶番つけるくらいなら、鉄で作ったほうが良さそうだけど、重くなりそうだし……

 ああ、そういえば、


「採掘場で別の金属が掘れる話って、ライブでしたっけ?」


『あ、してないかも……です』


 その話にコメント欄がすごい勢いで流れ始める。

 別の金属って言っても、魔銀ミスリル以上にすごい魔法金属ができるとかいう話じゃないことを説明。

 鉄と魔銀ミスリル以外にも、金、銀、銅、軽銀の鉱石ができるように設定できるって話をしたら、またすごいことに……

 特に金の希少価値が高いらしく、本土でもめったに見つからないんだとか。


「へー、全然知らなかったっす……」


『島ではお金の意味がないですもんね』


「そうなんだよなー。金箔とか作って木像に張るくらい?」


【ルネード】「また、やばい発想をw」

【モルト】「なるほど。金箔……」

【キラル】「ショウ君、仏師になる。既になってたかw」

【ユノスケ】「細工師たちがアップを始めました」

 etcetc...


 金に関しては視聴者さんたちにおまかせでいいかな?

 俺としては、


『明日には魔銀ミスリルの鉱床も復活してそうですよね』


「うん。それで円盾ラウンドシールドを新しくしたい」


 流れていくコメント欄を眺めていると、やっぱり本土ではまだまだ魔銀ミスリル鉱石は希少みたいで、ちょっと罪悪感が湧く。

 その後は、軽銀=アルミニウムなら軽い食器や調理道具なんかを作れそうだとか、そういう話をして、そろそろ延長時間も終わりかなって……


「ワフ!」


「ん?」


 ルピがすくっと立ち上がって、崖の方を見る。


「えええ……」


『ウリシュクさんたちが!』


【ベアメン】「キタワ〜〜〜♪」

【シューメイ】「多い! 多いぞ!」

【ロッサン】「ショウ君が最大ギルドなのでは?w」

【クショー】「島民いっきに獲得チャンス!」

 etcetc...


 ぞろぞろとやってきたのは、さっきのウリシュクなんだけど……何人いるんだろ。

 一番前に跪くのは、このウリシュクたちの長ってことでいいのかな? 他のウリシュクに比べて、体も角もちょっと大きい。


「えっと……」


 みんなして来てくれたってことは、セルキーたちの時と同じで、島民になってくれるってことでいいんだよな。長が俺のアクションを待ってるっぽいし。

 何かしないとなんだろうけど、トゥルーの時はハイタッチしたらだったし、要は手を合わせれば成立?


「これからよろしく?」


「リュ!」


 差し出した右手の手のひらに、ウリシュクの長が手を重ねてくれる。


【ウリシュクの守護者:3SPを獲得しました】


『おめでとうございます!』


「あ、うん、さんきゅ。えーっと……」


 メニューから確認すると、島民が92人になってる。

 前が確か56人だったから、36人増えたってことだよな。

 まあ、もう細かいこと気にしてもしょうがないか。


『ショウ君、ウリシュクのリーダーさんに名前をつけませんか?』


「え? あ、ミオン考えてくれてる?」


『はい!』


 ミオンはすっかりそのつもりでいるっぽいけど、一応こういうのは本人の同意を得てからだよな。

 トゥルーの時もそうだったし、スウィーに確認してもらおう。


「リュ!」


「〜〜〜♪」


 ぜひお願いしますって感じ? ニカっと笑うウリシュクと、サムズアップを返す女王様。ということで、ミオン先生、お願いします。


『パーンでどうですか?』


「おけ! 君の名前は『パーン』、よろしく!」


「リュ!」


 キリッとした返事を返してくれるのが頼もしい。


【ウリシュク(族長):パーン:信頼】


 信頼ってまたちょっと違う感じなんだ。

 何にしても、島民になってくれたのは嬉しい。

 その分、俺ができることをちゃんとやらないとな。


【ディーエス】「いいねいいね!」

【アシリーフ】「ギリシャ神話からかな?」

【ルコール】「パーン君かわよ〜」

【カンカンポ】「トゥルー君とはまた違ったタイプ!」

 etcetc...


 コメント欄もミオンのネーミングに満足してくれてるみたいだし、良かった良かった。

 で、それはいいんだけど……


「〜〜〜?」


「え? 俺から何か一言ってこと?」


 スウィーがうんうん頷いてるんだけど困ったなあ。っていうか、通じるの?

 でも、ちらっとウリシュクたちを見渡すと……期待の眼差し。

 一言、一言かあ……


「えーっと、俺はこの島でのんびり楽しく暮らしたいから、みんなもそうだと嬉しいかな。困ったことはお互い助け合っていこう!」


「ワオォォォ〜ン!」


「「オオ〜ン!」」


 ルピの遠吠えを機に、レダとロイが吠える。

 フェアリーとウリシュクたちが輪になって踊り始め、どんどんとカオスになっていく……


「「「〜〜〜♪」」」


「「「リュ〜リュリュ〜♪」」」


【デイトロン】「<祝!新規島民!:10,000円>」

【プレマル】「<めでたい!:500円>」

【ブルーシャ】「<お祭り〜♪:1,000円>」

【シェケナ】「<妖精祭開催中♪:1,000円>」

 etcetc...


 投げ銭もすっごい飛んでるし、これ、どうやって収拾つければいいの……

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