第275話 (求)島民(出)料理
『何を話してるんでしょう?』
「さあ? ともかく、スウィーへのご褒美の用意でもしようか……」
会話してるスウィーとウリシュクたち。それを見張ってるルピ、レダ、ロイ。遠巻きに見守ってるフェアリーズ。
俺ができることは、みんなにおやつを作るぐらいだよな。
豆乳アイスのおかわりに、ドライグレイプルを混ぜたレーズンアイス(?)を用意してるところ。
フェアリーズがそれに気付いたのか、こっちをチラチラと見始めてる……
「〜〜〜♪」
「話はまとまったの?」
左肩へと戻ってきたスウィーがうんうんと頷く。
そして、視線はレーズンアイスの方へ……
「終わってからね」
「ワフ」
ルピの号令で2人がそろそろと立ち上がり、先行するルピに続く。
彼らの後ろからレダとロイが目を光らせてる感じ?
『どういうことでしょう?』
「わかんない」
【ガフガフ】「畑に何か欲しい野菜があるとか?」
【ナーパーム】「美味しそうなにおいがしたので、とかでしょうか」
【ウタゲテー】「喧嘩してた理由。コレガワカラナイ」
【ルコール】「ウリシュクたれ耳かわよ〜」
etcetc...
野菜とか料理とかなら、言ってくれればいくらでもなんだけど。
そんなことを考えてると、ルピはそのまま裏手をスルーして、教会の反対側へと進む。
「ワフ」
止まったのは馬小屋、ヤコッコ小屋の前。
「クケー!」
団体さんが来たからか、雄のヤコックの方が張り切ってるんだけど、それを見たウリシュクがくずおれた。
「これ、どういうことなんだろ?」
【ターバン】「玉子が欲しかった?」
【ティーエス】「ヤコッコが元々どっちかの家畜だった説!」
【ソルカイ】「お互いがお互いをヤコッコどろぼうだと勘違い?」
【ニュード】「ヤコックの方もじゃない?」
etcetc...
……
「あー、お互いがお互いのヤコックかヤコッコを盗んだって喧嘩してたの?」
「〜〜〜!」
スウィーが「正解!」ってサムズアップして返す。
うわー、これって俺が悪いのかな? ヤコッコは崖の上に自力で戻れないし不可抗力ではあるけど……
でも、原因が俺なのは申し訳ないし、いないと困るんだよな。喧嘩するぐらいに。
「2羽とも返すのがいいよね?」
『そうですよね』
玉子が取れなくなるのは惜しいけど、今後のことを考えたら、元の持ち主に返して、以降はちゃんと購入……物々交換とか交流できるといいんだけど。
「スウィー、ヤコッコたちが崖から来て保護したって話はしたの?」
「〜〜〜♪」
「じゃ、2羽とも返すからって伝えてくれる?」
頷いて飛んでいくスウィー。
ウリシュクたちに声をかけると、顔を上げて話を聞き始める。
「〜〜〜?」
「リュ?」
「リュリュ〜!」
なんか、2人とも「いえいえ」とか「そんなそんな」みたいな身振りが入ってるんだけど、これは返さなくてもいいです的な?
スウィーが「受け取れないってさ〜」って顔にお手上げのジェスチャー付きで俺を見る。
「えー、どうしよ?」
【サクラー】「女王様の部下がいいんじゃないでしょうか?(*´ω`*)」
【カリン】「交易しよう交易!」
【アサナサン】「とりあえずご飯で胃袋掴もうw」
【シュンディ】「セルキーみたいな雇用がいいんじゃない?」
etcetc...
交易はさっき考えてたけど、雇用もありっちゃありなのか。
でも、あれはセルキーの呼び笛っていうアイテムありきの話だしなあ。
『ショウ君。まずはトゥルー君やセルキーさんたちみたいに、島民になってもらうのはどうですか?』
「なるほど。物々交換とかお仕事頼んだりするにも、まずは島民になってもらう方がいいか」
ウリシュクたちが嫌でなければ、お願いしたいぐらいなんだよな。農場と家畜の世話が得意って書いてあったし。
「スウィー、ちょっと聞いてみて欲しいんだけど……」
この島の島民に加わってもらって、良ければここの畑やヤコッコの管理をしてもらいたいことを伝える。報酬は現物支給に加えて、肉や魚や調味料などなど。
当然、嫌なら断ってくれれば良くて、その時は物々交換でやり取りできれば嬉しいことも伝えてもらう。
【ノウリング】「ワシも島民になりたい人生じゃった」
【ペーター】「破格の待遇なんですが!」
【クサコロ】「ショウ君、建国宣言して……」
【イマニティ】「島民になりたいぃ〜!」
etcetc...
「〜〜〜?」
「リュ?」
「リューリュ」
なんか急に真面目な顔(?)して話し合いを始めてるんだけど、そんな深刻に受け取られてもっていう。
俺としては、この島で楽しく暮らす仲間が増えてくれればってぐらいなんだけどなあ。
「「リュ!」」
「〜〜〜♪」
頷き合った二人がすくっと立ち上がって、俺に向かって礼をする。
どういうことなんだろう?
スウィーに目をやると……スウィー自身を指差す。フェアリーたちのところへ行って話して、フェアリーズが全員手を挙げる。俺のところへ戻ってくる……
『一度、話し合ってくるとかそういうことでしょうか?』
「ああ、なるほど! 仲間? 部族? 持ち帰って相談して決めてくるってこと?」
「〜〜〜♪」
また「正解!」って感じのサムズアップ。
うんうん、仲間がいるなら自分だけで決められたりはしないよな。
そういうことなら一度戻ってもらってってことで、また崖下に来たんだけど……
「……この崖、登れる?」
「「リュ!」」
え? 登れるの?
さすがに無理だろうと思ったんだけど、崖にある僅かな出っ張りを使って、ひょいひょいと登っていく。
【イザヨイ】「さす山羊!」
【シェケナ】「あああ、帰っちゃう……(´・ω・`)」
【ニクス】「また来いよ〜♪」
【リーパ】「お仲間連れてくるんやで〜」
etcetc...
一番上まで登ったところで、振り向いてぺこりと頭を下げてから去っていく。
『また来てくれるといいですね』
「だね。遊びに来てくれるだけでもいいかな」
セルキーたちみたいにご飯会とかできると嬉しいけど。
この教会の場所もセーフゾーンになったし、正門を開ける前に彼らの住処の方に行くのが先かな? あ、地下の話があるんだった……
「おっと、そろそろライブ終わる時間?」
『あ、あと5分ぐらいです』
「りょ。じゃ、ちょっと延長して9時45分ぐらいまでにしようか」
『はい!』
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