第274話 女王様のお仕事

 豆乳スープも食べ終わったので、のんびりと質問タイム中。

 ルピ、レダ、ロイはお昼寝かな? でも、耳がぴくぴくしてるので、寝入っちゃってるわけじゃないっぽい。

 今の質問は魔法を料理にどう使ってるかって話。


「温めるのと冷ますのはすごい楽になったっすね」


『加熱の魔法もあって、お湯を沸かすのは早くなりましたよね』


「そうそう。その温度で維持するのは火の精霊に頼んでるけど、いったん沸かすところまではすぐ」


 応用魔法学<水>を習得したことで、加熱と冷却ができるようになって、料理が楽になったって話を。


『冷却の魔法で冷たいデザートも増えましたし』


「うん。あ、そろそろデザートを」


 スウィーとフェアリーズからの「新作まだ?」って視線も感じてたし。

 インベントリから豆乳が入った壺を取り出す。

 そこにフェアリーの蜜と塩をほんの少し入れて、


「<冷却>」


 少しずつ固まっていくそれをスプーンで混ぜていき……カチコチになる前によそって小皿へと。

 その上から青蜜ときな粉を垂らして完成。


【アクモン】「青蜜きな粉豆乳アイス!」

【ムシンコ】「ヘルシー! ヘルシー?」

【レーメンスキー】「コンビニ行くかな……」

【デイトロン】「<豆乳アイス代:5,000円>」

 etcetc...


 自分の分とルピたちの分もよそって、まだ半分余ってるけど、スウィーたちがおかわりする時にもうひと工夫予定。


『美味しそうです……』


「じゃ、また今度作ろうか」


『はい!』


 明日はうち来るから、その時かな。ゲーミングチェアの搬入の後に時間あるだろうし。

 コメント欄がいつも通りなのをスルーして、自分も一口ぱくっと。

 うん、いい感じ。豆乳アイスはさっぱり系で口当たりも良く、青蜜きな粉の濃い目の味と相性抜群。


「あ、次の質問お願い」


『はい。えっと、次は「他の女神像も作りますか?」です』


「あー、それなんだけど……」


 翡翠の女神像がミオンそっくりになっちゃったのもあるし、他の女神よりもルピ、スウィー、トゥルーを彫ろうかなって話を。

 それも特に急いでというわけじゃなく、雨の日だったり、ちょっと時間が空いた時に進める予定なのを話しておく。他にもやりたこと結構あるし。


【ガフガフ】「ルピちゃん木像売って欲しい!」

【ラカン】「いいねいいね!」

【ガリソンヌ】「スウィー様フィギュア飾りたい〜」

【ワヌフェ】「木工スキル取るか……」

 etcetc...


 アージェンタさんを通せば本土の方に輸出もできなくはないんだろうけど、ルピの木像とかは大事にしてくれる人じゃないとなあ。

 それこそ転売のネタにされたらたまったもんじゃないし……


「木工スキル楽しいんでおすすめっすよ。俺はよく知らないけど、納品クエストみたいなのもあって、稼ぎもできるんですよね?」


 こっちからの質問に、木工プレイヤーの視聴者さんたちがいろいろと答えてくれる。

 最初は木箱や矢が簡単で納品クエストも多く、なれてきたら椅子やテーブル、訓練用の木剣なんかを。

 最終的にはキャビネットなんかの複雑な家具とか大小の弓を作るのがいいらしい。

 そういえば、弓のスキル取って、直した弓もあるのに全然使ってないな……


『次の質問いいですか?』


「りょ」


『では、「以前、名も無き女神像を持っていたと思いますが、それも翡翠の女神像にしましたか?」です』


 本当の順番的には、元々俺が持ってた方が先に翡翠の女神像になったんだけど、それをわざわざ言うつもりもないし。


「うん。もう、翡翠の女神像になってます」


 インベントリから取り出したそれを石のテーブルの上に。

 スウィーとフェアリーズが一斉に女神像を確認して、なんだデザートじゃないんだって感じでアイスに戻る。

 なんか、まだ実物を見たことがない人もいて、鑑定結果を見たいということなので……


 ガサガサガサッ! ドサッ!


「え? なんだなんだ!?」


「ワフ!」


「「バウ!」」


 ルピを先頭にレダとロイが走る。

 その先は教会の横手。ヤコッコが落ちてきた崖がある方。


「スウィーたちはここで待機してて」


 セーフゾーンになったはずだし、モンスターが来ることはないと思ってたんだけど、あの崖上から落ちてくる可能性は0ではないわけで。

 建物の角を曲がったところで目に入ったのは……


「リュー!」


「リュリュ!」


 え? これって子供じゃない、よな?

 服を着てるのはいいんだけど足がシカっぽいし、短い角が耳の上に一本ずつ。って耳もなんか毛が生えてて垂れ耳っぽい感じ。

 とりあえず、喧嘩してるのを止めたいんだけど……とルピを見ると、任せてとばかりに頷いてくれる。


「バウッ!」


「「!!」」


 ルピとその左右に控えるレダ、ロイに気づいた彼らが、一転、抱き合って、目を閉じて震えている。


「えええ……」


『ショウ君、鑑定を』


「あ、うん」


【ウリシュク:恐怖】

『山羊の妖精。高地にすむ妖精で農場や家畜の世話が得意』


【レジェリー】「ウリシュク!」

【ブルーシャ】「可愛い妖精の追加よ〜(*‘ω‘ *)」

【ラッカサン】「え、こんな妖精いるんだ……」

【ワサンコ】「ドラム缶かぶってないの??」

 etcetc...


 なるほど妖精なら納得。背丈とか雰囲気はトゥルーに近いもんな。っていうか、この島、妖精多すぎじゃない?


『スウィーちゃんを呼んだほうがいいかもですね』


「ああ、女王様を呼ぼうか。ルピ、見といてね」


「ワフン」


 ちょっとかわいそうだけど、言葉が通じないことにはどうにもならない。

 教会の裏手が見えるところまで戻って、スウィーたちに声をかける。


「スウィー、みんなもちょっと来てくれる?」


「〜〜〜?」


 呼びかけにすぐ反応して飛んでくるスウィーたち。

 アイスを食べ終わったらしく、空っぽになった皿まで持ってくるし。

 で、抱き合ってるウリシュクを見て、


「〜〜〜……」


「いや、そんな顔されても。スウィーの知り合いとかじゃないの? 白竜姫様とも知り合いだったでしょ? アイスのおかわり出すから頼むよ」


 そう伝えると「しょうがないなぁ」みたいなにやけ顔で飛んでいく。


「〜〜〜?」


「ワフ」


 スウィーからお願いされたのか、ルピが吠えることでちらっとこっちを見て……くわっと目を見開いてから平伏する。何これ。


【コックリ】「女王様のおな〜り〜♪」

【リーパ】「妖精にも上下関係あるん?」

【フェル】「女王の威厳が出たw」

【サーデスト】「ただし甘味には弱い」

 etcetc...


「〜〜〜!」


「リュ……」


「リュリュ……」


 ちょいおこなスウィーに謝ってる感じ?

 普段はアレな感じのスウィーだけど、本当に女王様だったんだなって……

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