第273話 工芸作家デビュー作

「なんとか間に合った」


『良かったです』


 昼の準備でライブ用の料理が間に合ってなかったんだけど、夕飯を早めに終わらせることでなんとか。

 豆乳アイスは現地で作るかな。火はいらないし。


「さて、移動しようか。あと15分ぐらい?」


『はい。スタートは教会の中ですか?』


「うん、そのつもり」


 昼にあったことは全部説明済みで、ミオンもアーカイブを確認してくれてたので、問題は起きないはず。

 出来上がった翡翠の女神の木像もオッケーもらえたし、教会の中が明るくなったのは古代遺跡と繋がってたからで、そんな驚かれるほどのことじゃない……よな?

 教会の地下に関しては、話すか話さないかは流れ次第、調査は後日にする方向で。明日はミオンと椿さんがゲーミングチェアを持ってきてくれる予定だし。


「お〜い、行くよ〜!」


「ワフ!」


「「バウ!」」


 呼びかけにルピとレダ、ロイが答えてくれ、スウィーやフェアリーズがそれに気づいて飛んでくる。


「今日は新作の甘味があるから期待してて」


「〜〜〜♪」


「「「〜〜〜♪」」」


 その言葉に湧き立つスウィーとフェアリーズ。

 さくっと女神像の除幕式をして、あとはのんびりおやつタイムライブで行こう。


 ………

 ……

 …


『みなさん、ミオンの二人のんびりショウタイムへようこそ!

 実況のミオンです。よろしくお願いします!』


【キンコン】「<祝!ワークエ参加!:1,000円>」

【セイキ】「白竜姫様、今日は来る?」

【シェケナ】「<ワールドクエスト参加おめでとー♪:1,000円>」

【チョコル】「今日は女神像お披露目です?」

 etcetc...


 いつも以上にコメントの流れる速度が速いし、いきなり投げ銭が怖いんだけど!?

 前回のライブがいろいろありすぎたからなあ……

 ミオンが今日のライブの流れを軽く説明してくれて、島へと繋ぐいつもの流れ。


『では、島に繋ぎますね。ショウ君、ルピちゃん、スウィーちゃん〜』


「ようこそミオン」


「ワフ〜」


「〜〜〜♪」


 今日のスタートは教会の中。

 長椅子の一番前に座って、隣にはお座りしてるルピ、いつもの左肩にスウィー。

 レダとロイ、フェアリーズには女神像の側にスタンバイしてもらってる。


『今日はいよいよ女神像の公開ですね』


「うん。じゃ、さっそくでいいかな?」


『はい!』


 ルピの頭を軽く撫でると、それで察してくれたのか、長椅子を降りて女神像の前へと。俺も立ち上がって後ろに続く。

 向かう先には真っ白な亜魔布が被せられた木像と左右にレダとロイ。その背中に座るフェアリーズ。


【ラッセーラ】「除幕式! 本格的!」

【ベアメン】「なんかもうこの時点で神々しい……」

【カロナル】「ドキドキしてきた」

【モウチョー】「こうして見ると結構大きいね」

 etcetc...


「じゃ、ルピ、そっちお願い」


「ワフン」


 ライブカメラは正面に、俺が右側、ルピが左側を持つ。


『では、お願いします』


「おけ。せーのっ!」


 ばさっと布が取り払われて、翡翠の女神の木像が現れる。

 ……違う像が現れたりしなくて一安心。


【ジョント】「うわ〜、可愛い〜♪」

【デイトロン】「<祝! 女神像完成!:10,000円>」

【ブルーシャ】「<おめでと〜♪:1,000円>」

【ヨソロー】「すごい! マジ女神!」

 etcetc...


 すごい勢いで流れるコメントをなんとか追いかけて……好評っぽくて良かった。

 ホッとしたところで、フェアリーズが花冠をそっと頭に被せてくれる。

 それを見てまたコメントがすごい勢いで流れ始める。


『ショウ君。鑑定をお願いできますか?』


「あ、うん」


 そういえば作り終わった後、自作複製ってアーツを覚えたのにビックリして鑑定するの忘れてたな。

 えっと……


【(仮)翡翠の女神像】

『心身の平穏と自然の恵みをもたらしてくれる翡翠の女神を再現した木像。

(解説修正、追加可能)

 作品名:(未定) 作家名:ショウ 製作年:月白暦2466年』


「は?」


【エレック】「おお、芸術品扱い?」

【モーネ】「作品名決めないと!」

【デイトロン】「<鑑賞料:5,000円>」

【カティン】「ショウ君、工芸家デビュー作やね!」

 etcetc...


「いやいや、作品名とか考えてなかったし。なんかいいのあります?」


 その言葉にコメント欄がドバーッと滝のように流れて……これは読めないな。


『ショウ君。皆さんのアイデアは後で確認させてもらいましょう』


「あ、うん、そうだね。アーカイブの方にコメントしてもらうのでも大丈夫?」


『はい!』


 ということで、除幕式はここまで。

 残りの時間は教会裏に場所を移して、のんびりとご飯会しつつ質問タイムかな。

 とはいえ、前回のライブに白竜姫様が現れた件とか、聞かれても答えようがないんだけどなあ……


『今日はお料理自体はなしですよね?』


「うん。作り置きっていうのも変だけど、ライブ始まる前に作ったやつだから」


 インベントリから大きな鍋を取り出して、石机の上に置く。

 自分の分の木皿と、ルピ、レダ、ロイの分のランチプレートを用意。


「もうちょっと待ってな」


「ワフ」


 蓋を開けるとふわっと甘い香りが漂う。

 中にあるのは野菜とベーコンの豆乳スープ。


【ユウセン】「ファ? シチュー!?」

【ジョント】「美味しそう!」

【マスターシェフ】「これは豆乳かな?」

【ストライ】「腹減ってきた……」

 etcetc...


『シチューではないんですよね?』


「うん、小麦粉ないから豆乳スープ。今回、パーピジョンの鶏がらスープも試してみて、美味しくできたよ」


 四人分をよそって準備完了。

 スウィーとフェアリーズには、ひとまずとろとろ干しパプを。


「じゃ、いただきます」


「ワフ」


「「バウ」」


 まずは厚切りベーコンをぱくっと……


「うん、美味しい。まろやかさと塩気がちょうどいい感じ……」


【シェケナ】「ぐぎぎぎぎ……」

【モルト】「ビールおかわりじゃ〜い!」

【デイトロン】「<豆乳スープ代:5,000円>」

【マスターシェフ】「パンに合いそうだし、小麦粉欲しいねえ」

 etcetc...


 オーダプラ(じゃがいも)もホクホクだし、レクソン(クレソン)もしなっとしつつ、ほろ苦さも混じってて良し。

 パーピジョンの骨から作った鶏がらスープ。少しだけクルーぺソース(魚醤)を隠し味に入れたのも良かったかな。


『ショウ君。食べながらでいいので、質問コーナーでいいですか?』


「うん。食べ終わったら、ちょっとデザート作るけど、気にせず話しかけてくれてオッケーだから」


『はい!』


 コメント欄にずらずらと質問が流れていくけど、白竜姫様の質問よりも、魔法と工芸の方の質問の方が多いかな?

 工芸のアーツの話は早めにしておいた方がいいかな? あれが他の生産スキルでもできるようになれば、開拓とか死霊都市の再建とか役に立ちそうだよな。

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