竜吟虎嘯
木曜日
第268話 次のライブの献立は?
「じゃ、特に揉めることもなかったんだ」
「ああ、残ってる覇権の連中は疲れたってさ。今ある物資は捨て値でいいから買ってくれと。借金返済にあてるってよ」
「勝手よねえ……」
いいんちょが呆れてて、ミオンもこくこくと頷いてるけど、俺もまあ同意見かな。
前線拠点を独占して、物価釣り上げて、旗色悪くなったら撤退とか。
「覇権のギルマスはめっちゃ謝ってたし、今さら蒸し返して揉めたくもねえし、良しとしようぜ。上の方で勝手にやらかしたことで、責任は自分たちにあるからってよ」
「ああ、なんか知らないうちにそうなってたって人も多いのか」
元々、かなりでかいギルドだったそうで、一番下の方のギルドメンバーは振り回されてただけらしい。
「例の『区画を浄化』もできそうだしな!」
昨日のライブ見たのか。まあ、見てるよなあ……
ちらっとミオンを見ると、やっぱり恥ずかしそうにしててこそばゆい。
「あのライブに来た小さい子が……ドラゴンなの?」
「あ、うん、アージェンタさんはそう言ってたよ。実際に竜になった姿とかは見たことないけど」
白竜姫様が覚醒(?)して精神的に大人モードになることは、伏せるってほどでもないけど話す必要もないか。管理者の指輪の件もあるし。
「てか、疑問なんだけどよ。なんで、ドラゴンだとダメなんだ?」
「プレイヤーよりもMPだって多いわよね?」
と首を傾げているいいんちょ。
「竜族はそもそも女神を信仰してないんだってさ。まあ、それでダメだってのはわかるんだけど……」
部下の竜人族でもダメだったのは謎で、それを美姫に聞いてみたら、具体的な女神の絵姿のようなもの(女神像とか)を見たことがないんじゃって話。
じゃあ、どうやって神官になったんだよって話なんだけど、
「彼らの女神への信仰は、自然崇拝に近いからなのではないか?」
とか言ってた。
月とか
「……ってさ」
「おお、さすが美姫ちゃん!」
「なるほどねえ……」
あとは、そもそも人のために作った女神像なので、人が想像する女神像に近くないと反応しない可能性だとかどうとか……
「ただ、最後にはこう言ってたけどな。『NPCもプレイヤーと交流せねばならんように仕組まれておるのだろう。ゲーム的にの』だってさ」
「「ああ……」」
NPCだけで問題解決しちゃわないよう、できるだけプレイヤーを巻き込むよう設定してあって、それに巻き込まれたのが俺だっていう……
「それはそれとして『名も無き女神像』は足りてるのか? 美姫曰く、有志が回収してくれたらしいけど、その人たちって手伝ってくれるのか?」
「おう。すぐってわけじゃないが、順次来てくれるって話だな。ま、本格的に攻略再スタートは明日か明後日ぐらいからだと思うぜ」
そもそも回収してたのが、俺とミオンのチャンネルのファンの人たちだそうで。
美姫もそうだけど、みんな俺がアレをもらった時から「なんかあるな」って思ってたんだとか。で、実際、俺がライブで翡翠の女神像にしちゃって……
「はぁ……」
「?」
「いや、ワールドクエスト終わるまで、大人しくしてるつもりだったんだけどなって」
俺がそうこぼすと、
「「無理(だろ)(よね)」」
仲良いな、お前ら!
***
「ごちそうさま」
「ワフ」
「「バウ」」
放課後はまずご飯から。
今日はシンプルにベーコンとレクソンの炒め物。オステラソースが加わると、一気におかず感が増してご飯が欲しくなる。
『今日は女神像の続きですか?』
「うん。土曜のライブにお披露目できればなって感じだけど」
『いいですね! あ、そういえば布と糸をもらってますし、発表の前に被せておくのはどうですか?』
「除幕式だっけ? それっぽくなっていいね」
折りたたんだ布は、布団サイズのが5枚分あったし、そのうちの1枚を使えば十分かな?
あれも裁縫スキルで何か作った方がいいんだろうけど。
「あの布で何か作るとしたら、どういうのがいいかな?」
『ルピちゃんやレダちゃん、ロイくんにバンダナとかどうですか?』
「じゃ、みんなお揃いのバンダナでも作るか。ミオンは好きな色とかある?」
『私ですか? いえ、特には』
「そうなんだ。バンダナが白はなんかいまいちな気がするから、染めたいところなんだけど……」
もらった亜魔布は白。
そのままバンダナにするのでもいいけど、白のバンダナってどうなんだろう。やっぱり色がついてた方がいい気がする。
『翡翠の女神様ですし、緑がいいんじゃないでしょうか?』
「りょ。緑なら草木染めでいけそうかな」
島で緑に染められるような植物っていうと……コプティから作ったヒールポーションが緑だし、笹ポはもっと濃い緑だったな。ポーション染でやってみるか。
「トゥルーやセルキーたちも欲しがるかな? 今週は女神像作りで手一杯だけど、来週どこかのタイミングで港へ行かないと」
『あ、ショウ君、椿さんがゲーミングチェアが届いたので、いつ運び入れましょうかと』
おおお、ついに超高級なゲーミングチェアがうちに!
平日はちょっとゴタゴタしそうだし、土日のどっちかだけど、土曜はミオンが習い事だし。
「じゃ、日曜がいいかな。うち来るんならお昼作るし」
『は、はい! 伝えますね!』
涼しい時間のうちに庭の手入れでもするか。
あとは雨が降らなければだけど、昨日梅雨入りしたばっかりだしなあ……
「北海道って梅雨がないんだっけ。ベル部長、今日は何してるんだろ。また写真とか来てない?」
『予定表をもらっておけば良かったですね。あ、先生が来たので少し外しますね』
「りょ」
おしゃべりしながら続けてた木像作り。だいたい大きく型取りはできたし、あとは細かくって感じかな。
今日の夜には完成目前までは行きそうだけど、夜はちょっと気分転換したいところ。
『戻りました』
『こんにちはー、かなりできてますねー。夜には完成ですかー?』
「あ、どもっす。今日の夜に完成まで行けそうですけど、ちょっと気分転換するつもりなんで」
ルピたちと南側をぐるっと回って、教会裏の畑の様子も見に行きたいかな。
染色するために媒染液が必要なんだけど、銅は採掘できるから、自作で銅媒染液が作れるか試さないと。
あとは確か……
「あ!」
『どうしました?』
「いや、豆乳作ろうと思ってて、すっかり忘れてた。染色するのに豆乳を使うよなって思い出したよ……」
豆乳作ればアイスクリーム作れるじゃん。
牛乳だとスウィーたちが食べられるのか微妙だったけど、豆乳ならいけるよな?
『土曜のライブはそれですね』
「りょ」
豆乳ができたら豆腐も作れるし、ちょっといろいろ考えとかないとな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます