第266話 頼りになるお兄ちゃん
白竜姫様、1人で来たの? 保護者のアージェンタさんはいないの?
いろいろと頭の中でぐるぐると、思考の迷路とかいうのに迷い込んで……
<ミオンさんー、ショウ君の映像が視聴者さんに見えてるか確認をー>
ああ、そうだった!
ヤタ先生の一言で現実――仮想空間だけど――に戻れた。
『えっと、みなさん、ショウ君の様子は見えていますか? 以前はアーカイブに残らなかったので確認です』
コメント欄に「見える」って言葉が流れていくのを確認。
今日のこれは完全に想定外? いや、ライブならいいけど、アーカイブはダメって線もあるか。
『良かったです。ショウ君、視聴者のみなさんに紹介をお願いします』
「あ、うん」
駆けてきた白竜姫様は、テーブルにおいたオムレツに興味津々で、肩にかけていた鞄を置いてご着席。
なんだけど、大人用の椅子だから背が足りてないな……
「えーっと紹介します。白竜姫アルテナ様です」
コメント欄が滝になってて、もう何が書かれてるのかもさっぱり。
「い〜〜!」
「〜〜〜!」
スウィーと睨み合っている白竜姫様。雰囲気的にも覚醒モードじゃないっぽいな。
ミオンが2人はちゃんと仲良しなことを説明してくれてて助かる。あれは挨拶みたいなものだろうし。
「姫様、椅子高くしますよ」
「うん」
椅子を降りてくれたので、その場所に石壁を敷いて底上げ。
座り直してもらって、大丈夫そうかな?
『ショウ君。落ち着いたら説明してもらっていいですか?』
「りょ。ちょっと待ってね」
俺の分のオムレツをガン見してるので、早く食べさせてあげた方が良さそう。
新しいスプーンを取り出して、
「はい。どうぞ」
「ありがとー」
そう答えてオムレツを食べ始める白竜姫様。
「〜〜〜!」
「はいはい。女王様はこっちね」
グリーンベリーの果汁に砂糖を加えてから凍らせたフローズン。
フェアリー用の小さなスプーンを並べて、みんなで召し上がれ。
「〜〜〜♪」
「お待たせ。えっと、白竜姫様が最初に島に来たのはアージェンタさんが一緒だったんだけど、古代遺跡の管理者になった件を相談した感じかな?」
『ドラゴンさんたちは、管理者のことを知らなかったんですよね』
「そうそう。なんでまあ説明して、この島は俺しかいないし、そのままでって話になった感じ。その時にわらび餅を振る舞ったんだけど……」
このゲームの住人、甘い物好きすぎる気がする。
まあそんな感じのことを話し、例によってアーカイブに保存されなかったことも伝えておく。
今日のこれはどうなんだろ? ライブ中は見えてるけどとかありそう。
【イヤスド】「チョロゴンやわ〜(*´∀`*)」
【イマニティ】「女王様だけでなく、お姫様まで!」
【アスモ】「ショウ君、既に世界を手中に納めてる説」
【シェケナ】「女神様がいるから今さらよね〜♪」
etcetc...
そういえばアージェンタさんがそばにいないけど大丈夫なのかな?
まあ、小さいとはいえ竜なんだから、ここらにいるモンスターは雑魚なんだろうけど。
「姫様。今日はアージェンタさんは?」
「あーじぇはお仕事」
そう答えてもぐもぐ再開。
うん、ゆっくり食べてもらった方がいいかな。
『食べ終わるまで待ちましょうか?』
「だね」
コメントも白竜姫様のもぐもぐに癒されてるみたいで、少し落ち着いてきた感じかな。まあまあ読めるくらいにはなってきたし。
白竜姫様用にグレイプルジュースを用意してあげつつ、もぐもぐを見守る。
【ドライチサン】「うわ〜、かわいい〜」
【ルコール】「もぐもぐかわよ〜」
【ツチグモ】「ショウ君、面倒見良すぎ」
【ブルーシャ】「子煩悩なパパになりそう(≧∇≦)b」
etcetc...
アージェンタさんに内緒で遊びに来たとかかな。
それくらいならサプライズってぐらいでいいんだけど。
「おいしかった!」
「うん、ありがとう。今日は遊びに来たの?」
そう聞くと、何かを思い出したように足元の鞄を、
「ワフ」
「ありがとー」
ルピが差し出した鞄を受け取って中から取り出したのは、いつぞやに送ってもらった『名も無き女神像』と……煤けた紙片?
「あのね。これね。書いてあるとおりにしても、あーじぇもみんなもうまくできなくてね。お兄ちゃんに試してほしいの」
書いてあるとおりに? こっちの煤けた紙片の方だよな?
「ああ、これ説明書?」
『説明書ですか?』
紙片の方を見てみると、書かれてるのは『女神像のまつりかた』というタイトルとその手順。
これもう今から内緒ってわけにもいかないし、さくっと読んじゃおう。
「えーっと、
1. まず女神像を手に持ってください。
2. 次に心を落ち着けて女神様を思い浮かべましょう。
3. そのままゆっくりマナを捧げてください。
って書いてある」
俺がアージェンタさんに説明したのに、2が抜けてた気がする。
やっぱり女神様を信仰してない竜族だとうまく動かない? いや、でも、部下の
『やってみますか?』
「えーっと……大丈夫?」
『はい。大丈夫ですよ』
ミオンの像になっちゃうよって聞いてみたつもりだけど、オッケーがもらえたならやるしかないよな。
コメント欄に「来るぞ……」とか「ざわ……」とか流れてて、うん、はい……
「えっと、ちょっと光るっぽいんで気をつけてね」
そう伝えると、白竜姫様が小さな手で目を覆う。いつの間にかその肩に座ってたスウィーも同じく。
「じゃ、やってみるよ」
女神像を両手で持ち、
ゆっくりと、魔晶石の時と同じ感じでマナを入れていくと、淡い緑色の光が女神像を覆う。
結局、これってどれくらいMP消費するんだろうとか思ってると、これ以上は注げない感じになって、やがて光が収まっていき……
あの時と同じ、そして木像とも同じ、ミオンそっくりな翡翠の女神像が現れた。
『ショウ君。鑑定を』
【翡翠の女神像】
『古代魔導文明の時代に各家庭に置かれていた女神像。
捧げられた信仰心によって、心身の平穏と自然の恵みをもたらしてくれる翡翠の女神像へと変化した。
マナを注ぐことにより、女神の加護による聖域を作ることができる』
鑑定結果も当然同じ。
前は精霊の加護が複数掛かってたのもあって翡翠の女神なのかなって思ってたけど、そういうわけでもないのかな?
「これでいい?」
「うん!」
受け取った女神像と紙片をかばんにしまい直す白竜姫様。
それはいいとして、やっぱりアージェンタさんに許可もらって来たわけじゃなさそうだよなあ。
うまく行ってないのを見かねて、一人飛び出してきちゃったってあたり?
「えっと、アージェンタさんには内緒で?」
「うん……」
あー、うん。そうだよな。
「じゃ、おみやげ用意するから、それまではこれどうぞ」
「〜〜〜♪」
木皿にいっぱいのとろとろ干しパプをテーブルに。
スウィーがそれを真っ先に取って……はんぶんこするらしい。
そういうところは、ホント気の利く女王様だよ。
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