第264話 女神像制作ライブ!

 ライブに備えて早めのログイン。

 放課後に伐採した樹は、結構太いやつを2本。

 これでも等身大で作るには、木材同士を組み合わせた方法――寄木造りっていうらしい――でやらないとだけど。


「こんなもんかな」


『大変なんですね。大きな樹から削り出すのかと思ってました』


「それだと俺の倍ぐらいぶっとい樹を切らないとだからね。それはちょっともったいないっていうか、運ぶの厳しそうだし」


 それよりは間伐になる普通の樹の方が、端材も含めて使いやすいと思う。

 スウィーもそっちをおすすめしてくれたし。


<ショウ君はその作り方のことを調べたんですかー?>


「あ、はい。リアルの木像の作り方ってどうなのかって」


『すごいです。それにゲーム内で女神像を作ったのはショウ君が最初なんじゃないですか?』


「うーん、どうかな。陶工も俺が思いつく前にジンベエ師匠がやってたし、彫像とか作りたいって人はいそうだけど……」


 そういや、今さらだけど、石工の方が楽だった気がするんだよな。

 石壁の魔法でどーんとでかい石の塊を出して、それを削っていく感じ。

 土木スキルで部分部分の強度も確認できるし……


『あ、ショウ君。ライブまで5分です』


「りょ。ルピ〜、みんなも来て〜」


「ワフ!」


 森の手前で遊んでたルピ、レダ、ロイが駆けてきて、その後ろからはスウィーたちフェアリーズが飛んでくる。

 今日のライブは山小屋の隣にある石造りの蔵の前。天気が悪い日は蔵の中で作業することを考えての場所。


「ワフン」


 ルピがあぐらをかいて座ってる俺の足の間にすぽっと収まる。定位置。

 レダとロイは左右に控えるように伏せ、その背中にはフェアリーズが。

 最後にスウィーが左肩に座って、スタンバイ完了。


<ライブ開始まで1分前ですよー>


『はい』


「りょっす」


 さすがにもう緊張しなくなったかな。

 まあ、ルピを撫でてるとすごく癒されるから、そのおかげかもだけど。


「ワフ〜」


 うーん、今度、ルピたち用のブラシとか作ってみよう。

 ランジボアの毛とか使えそうだし。


<10秒前……、5、4、……>


 今日はヤタ先生のカウントダウンが復活。

 多分、暇だからなんだろうけど……


『みなさん、ミオンの二人のんびりショウタイムへようこそ!

 実況のミオンです。よろしくお願いします!』


【ノンノンノ】「いえ〜い!」

【シェケナ】「今日も可愛い♪」

【ブルーシャ】「♪───O(≧∇≦)O────♪」

【ガーレソ】「キマッテタ」

 etcetc...


 今日のミオンの衣装はボーダーのパーカーとオーバーオールの組み合わせ。

 可愛さ重視で女神像とは全然違う印象の方にしてもらった。

 俺が作ったミニサイズの木像は、例の翡翠の女神像と同じローブ・デコルテを着てるし、アバター衣装も似たのを探した方がいいのかな……


『今日のライブは、ショウ君が翡翠の女神様の木像を作るライブです。

 のんびりと作業をしつつ、いろいろと会話メインになりますが、最後までよろしくお願いします』


【リンレイ】「ついに女神像!」

【ミイ】「翡翠の女神様でしたっけ?」

【ロガッポ】「今日は飯テロありますか?」

【ルネード】「教会に飾るやつ?」

 etcetc...


『えっと、いただいた質問の答えは、さっそく島のショウ君に聞いてみましょう。ショウ君、ルピちゃん、スウィーちゃん』


「ばんわっす」


「ワフ!」


「〜〜〜♪」


 すごい勢いで流れるコメント、これをチェックするのは無理だよなと思いつつ、まずは新メンバーの紹介から。


「えっと、まずは新たにルピの部下として、一緒に行動することになった2人を紹介するよ」


『はい!』


「ワフ」


 ルピの号令で伏せていた2人がすくっとお座りモードに。


「レダ」


「バウ!」


「ロイ」


「バウ!」


 ちゃんと挨拶ができた2人の頭を撫でる。

 グルグルと嬉しそうにする喉を鳴らしてる姿が可愛い。


【ガフガフ】「おおお!」

【マリオネラ】「もふもふ増量!」

【シャズン】「ルピちゃんの部下?」

【ストライ】「多頭飼いできるんだ……」

 etcetc...


『紹介ありがとうございます。では、今日の予定を教えてください』


「うん。今日は翡翠の女神様の木像を作るんだけど、その前に小さいのを試しに作ったのがこれ」


 まずは小さい、と言ってもスウィーと同じくらいの木像の方を公開。


【ナタイ】「ミニサイズ!?」

【エレック】「翡翠の女神ミオン様!」

【フェル】「あ、やっぱりw」

【シェケナ】「愛だね〜(*^▽^*)」

 etcetc...


 やっぱバレるよな!


「まあ、なんていうか、自然とそうなっちゃったっていうか……」


『もう、ショウ君ったら……』


【ミナミルゲ】「糖分高すぎて溺れるわ!」

【ジョント】「はいはい爆発爆発」

【ブルーシャ】「いいよいいよ〜(*'▽'*)」

【ウタゲテー】「壁が何枚あっても足りない件」

 etcetc...


 ダメだ。話を進めないと、俺が何度爆発しても収拾がつかない、これ。


「で! これ作ったときに木工スキルが10レベルになって、上限突破できたのはこれのおかげなんだけど……」


 中サイズのノミを手に取って鑑定結果を見せる。


【最高品質のノミ(中)】

『木材に使用する中サイズのノミ。魔銀ミスリル製で最高品質。

 木工+1、工芸(木工)+1、大工+1』


【リンレイ】「ふぁっ!?」

【モルト】「何じゃその贅沢工具……」

【デイトロン】「<工具代:5,000円>」

【マルサン】「複数のスキルに補正つくの!?」

 etcetc...


 コメントが一気にそっちに傾いてほっとする。

 どうせだから、いろいろ他の道具も見せておいた方がいいよなってことで、カンナ、小刀、彫刻刀などを鑑定して見せていく。あと魔銀ミスリルのインゴットも。

 細かい内容はアーカイブで見直してもらうで良いと思うし、ざっくりと。

 おっと、見慣れない工芸(木工)スキルに反応してる人がいるな。


『工芸(木工)スキルは、上限突破して取れるようになったスキルですよね』


「うん。まだちょっと検証とかはしてないし、どういうことができるかもわからないままなんで」


 視聴者さんたちから、あれやこれやと意見が出てきて、なかなか参考になりそうな。

 ちなみに、2本持ったら+2になるのって話も出てきたので、これはちゃんと否定しておく。


「ああ、カナヅチも魔銀ミスリルで作ったんだけど、ノミとセットで持っても+2にはならなかったっす」


【モルト】「オール魔銀ミスリルの……カナヅチじゃと」

【ガルデン】「あああ、1割で良いから分けて欲し〜」

【クショー】「魔銀ミスリル鉱床が復活したから?」

【シデンカイ】「武器防具の前に工具を作るあたりがショウ君らしい」

 etcetc...


 多分、明日ぐらいに魔銀ミスリルの鉱床は復活するし、その分でまたいろいろ作ろう。

 ワールドクエストが終わるまでは、大人しくしてるつもりだけど、教会の外へと出る準備は進めとかないとだよな。


「さて、んじゃ、そろそろ作業に取り掛かるよ」


『はい』


「ルピたちは好きにしてていいよ」


「ワフ」


 しばらくは大きく削り取る作業がメインだし、近くでお昼寝にはちょっと向かないと思う。

 それを知ってるのか、スウィーたちと泉の方へとのんびり歩いていく。


『ショウ君、質問を受け付けながらでいいですか?』


「うん。合間合間になるんで、のんびりね」


『はい!』


 さて、今日はどんな質問が来るかな?

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