第256話 集まるものもの

「こんなもんかな……」


 ノミを大中小。カナヅチ、カンナ、小刀。彫刻刀を平、丸、三角の三種類。

 カナヅチとカンナは木工と大工に+1、小刀は木工+1、彫刻刀は細工+1。

 で、


「ノミとカナヅチ!」


 ……ダメか。


『違う道具ならと思いましたけど……』


「手に持つもの同士は被らないようになってるのかな。だとすると、服とかアクセで上げるか、更に良い鉱石があるとかだよな」


 木工用の服とかアクセって思いつかないんだけど。

 それこそ、いつぞやにヤタ先生が言ってた作務衣とか?


『でも、+1でも十分すごいと思います。木工はあと1で10になりますし』


「だね。やっぱり魔銀ミスリルのおかげかな?」


『鍛治スキルが高いからとかはないですか?』


「高いかなあ……。9は高いか。でも、生産メインならこれくらいあるよね?」


 いろいろ作ったから、いつの間にか上がってた感じ。

 でも、白銀の館の生産メインの人なら10とかでも不思議じゃない。


『ショウ君の場合、古代魔導炉でインゴットにしてるのもあるんじゃないでしょうか?』


「あ、そっちか!」


 インゴットに精錬するところで品質に差が出る可能性あるな。

 そういえば、インゴットそのものを鑑定したことなかったなと思って、


【良質な魔銀ミスリルインゴット】

魔銀ミスリルのインゴット。純度が高い。

 鍛治:魔銀ミスリル製品に加工が可能』


「あ、これか……」


『すごいです!』


「剣鉈とかもいい感じだったのは、インゴットからして良質だったからか」


 インゴットの品質が良くて、それを高い鍛治スキルで加工すればいいのかな。

 となると、精錬自体にも良し悪しがあって……


「レオナ様の双剣って、NPCドワーフの人が手伝ったりした?」


『あ!』


 他種族から技術を学んで行くのも交流の一つとかなんだろうな。

 帝国は巨人? 公国はエルフ? 共和国は……フェアリーだったはずだけど、今はうちの島にいるもんなあ。

 あれ? フェアリーたちが育ててくれたグリーンベリーとかカムラスってひょっとしてやばい奴?


「ワフ!」


「お、ルピ、ちょうど終わったとこだよ。って、レダとロイは?」


「ワフワフ」


 ん? ついて来てって感じ? レダとロイに何かあった?

 出来上がった道具類をインベントリにしまい、慌てて立ち上がると、ルピが早くと急かすように先を行く。


『どうしたんでしょう?』


「深刻そうな感じでもないから、大丈夫だとは思うんだけど……」


 最初はレダとロイに何かあったのかと思ったんだけど、必死さとかそういう感じはしないし。

 ほどほどに、俺が普通に走ってついていけるレベルで先を走るルピ。

 丁字路を直進し、そのまま南西側へと出る。


「ああ、何かでかいのを捕まえたとか?」


『あ、鹿さんとかですね』


「そうそう」


 さすがに大きな鹿になると、3人じゃ運べないよな。

 セーフゾーンの草むらも駆け抜けて、そのまま森を南西方面へと走っていくと、


「ワフ!」


「「バウ!」」


「ええっ!!」


 レダとロイがお座りしてる前には、結構でかいランジボアが……

 これ、3人で倒したってことだよな。


『ルピちゃんたち、すごいです!』


「いや、ホントすごいな。解体すればいいんだよな?」


「ワフン」


 ドヤ顔ルピ可愛い。

 思わず撫で回したくなるのを我慢してサクッと解体。

 見た感じ、ランジボアの突進を避け、岩にぶつかったところをレダとロイで左右から拘束。

 ルピのクラッシュファングで首をゴキっとやった感じかな……


「はい。まずはルピにご褒美な」


 一番良いヒレ肉を厚めにスライスしてルピに。

 次にレダとロイの分も同じぐらい厚めに切って渡す。


「レダとロイもご苦労様」


「ワフ」


「「バウ」」


 ルピの合図で食べ始めるあたり、小さくてもしっかりボスしてるのがわかる。

 まだまだレダとロイの方が大きいけど、ルピもそれなりに成長してるし将来が楽しみ。

 確か体長は1mを超えるとか書いてあったけど、どれくらいまで大きくなるんだろ……


 ………

 ……

 …


「ただいまっと」


 山小屋に戻ってきて、まずはランジボアの肉を保存庫にと……


『光ってますね』


「返事早いな。死霊都市に魔王国側からって話で何かあったのかな?」


『調査がうまく行ってないんでしょうか?』


「あー、アージェンタさんたちも同じハマり方してるかも」


 とりあえず先に肉を保存庫へ放り込んでから、転送箱と向き合う。

 ルピも自分のおすわり台に陣取って興味津々。何か手紙以外に入ってる予感でもするのかな?

 ともかく、箱を開けると……


「手紙と……これは布と糸?」


【高品質な亜魔布】

『マナを多く吸収する上質な亜魔を加工することで得られる亜魔糸で織られた布。

 裁縫:衣服の材料となる』


【高品質な亜魔糸】

『マナを多く吸収する上質な亜魔を加工することで得られる亜魔糸。

 裁縫:衣服の材料となる』


「うわあ……」


『服が作れますね!』


「そうなんだけど、これどういうつもりなんだろ。手紙の方を読めばわかるのかな」


 布と糸はとりあえず置いて、手紙の方に目を通す。


『ショウ様


 先日は急な訪問にもかかわらず、大層なおもてなしをいただき、誠にありがとうございます。

 また、魔王国が死霊都市の調査を行おうとしている件、こちらでも察知はしていたものの確証に至っていなかったため、大変助かりました。


 目立った進捗はありませんが、今後のために死霊都市の地図と各勢力の布陣状態を記したものを同封しておきます。


 また、一緒にお送りした布と糸は亜魔という植物から得られるもので、お姫様より先日の甘味のお礼の品となります。

 亜魔布、亜魔糸から作られた服はマナ吸収力に優れますので、今後の活動のお役に立てばと。


 追伸。可能であれば、先日の透明な甘味を追加でいただきたく……』


 白竜姫様、わらび餅も気に入ったっぽい。

 いや、それはいいとして、もう一枚の方を見よう。


「これが死霊都市の地図か」


 昔からあったやつじゃなくて、アージェンタさんが描いたのかな?

 都市全体を壁が覆ってるのはPVで見た通り。

 その壁の外側、南西側の端の○印が例の覇権ギルドが独占してる前線拠点。南東側の端に○印がベル部長たちの魔王国ルートの前線拠点ぽい。

 北側にドラゴンの頭みたいな印が描かれてるのは、アージェンタさんが言ってた竜人族がここからってことなのか……

 そのドラゴン印から矢印がまっすぐ下へ、北の門をくぐってから、少し左よりの場所へと向かっている。

 11時の方向にあるから第11号? 調査予定地と書かれてるので、まだ到達はしてない感じか。


「これが転移魔法陣の先なんだろうなあ……」


『このまま行くと三つ巴になるんでしょうか?』


「さすがにそれは無いと思うけど……」


 あんまりプレイヤーと揉めたりはしないで欲しい。

 ただ、セスはともかく、マリー姉はなあ……

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