第251話 あとは流れで

 港からバルコニー、動力部監視室へと寄り道した後、資料室を抜けて制御室までやってきた。

 動力部監視室、例の火口にできた岩棚では火の精霊石の話をして盛り上がり、資料室では応用魔法学の残り<水><火><風>をゲットしたことでうらやましがられたり。

 資料室までの通路でマルーンレイスを撃破したことは、なんとなくぼかして「結構強いレイスにギリ勝ちした」って話だけに。

 翡翠の女神像は、まあ、うん。俺も恥ずかしいし……


「この先、あの左手に扉が見えるあたりが崩落してた感じすね」


 制御室と転移エレベーターにつながる廊下に到着。


【マッチルー】「繋がった!」

【チャリンボウ】「意外とシンプルな作り」

【アシリーフ】「崩れてた理由とかわかった?」

【ナーパーム】「扉を出ると展望台のところですか?」

 etcetc...


 本土の古代遺跡、ダンジョンとか塔とかに比べるとすごいシンプルだなとは思う。

 この島が本当にエンドコンテンツなら、もっと複雑な構造な気がするんだけど……どうなんだろ?


「崩れてた理由はわかんないままっすね。あの扉が展望台の真ん中に出るんで、そこが崩れてたってことだとは思うけど」


『ショウ君、外に出てみませんか?』


「うん。出て休憩にしようか」


 ライブは残り15分ぐらいかな? 質問&おやつタイムでいいと思う。

 念の為、解錠コードが漏れ聞こえないように音声をミュート。


【シェケナ】「PVの場所!(*^▽^*)」

【コージ】「ここが『行こうか』のシーン」

【デイトロン】「<PV出演料:10,000円>」

【シデンカイ】「ナイス出演料!」

 etcetc...


 ここに来たら、まずはルピのお母さんのお墓にお祈りを。

 スウィーがいつもと同じように小さな白い花を供えてくれる。

 それを見て、お花代みたいな300円ぐらいの投げ銭がばんばんと……


「うわ、すいません」


『あ、ありがとうございます』


 一通りコメント欄が落ち着いたところで、展望台の真ん中に腰を下ろす。

 あ、そうだ、ここなら呼べるよな。


「ルピ、ドラブウルフたちを呼んであげて。お裾分けしよう」


 すっと歩み出たルピが


「アオ〜〜〜〜ン〜〜〜」


 と綺麗な声で遠吠えすると、その音がこだまして山間へと溶けていく。


【ドラムン】「ふつくしい……」

【ルコール】「ルピちゃんかっこよ〜」

【デンガナー】「鳥肌たったわ」

【ムシンコ】「ボスの風格やん」

 etcetc...


 ほどなくして現れたドラブウルフたち。

 嬉しそうに尻尾を振りつつも、ルピの前に伏せの状態で待機してくれる。


「美味しいもの手に入ったからお裾分けな」


 インベントリから出したオランジャックの干物。あとで味付けすることを考えて、塩分は控えめ。

 まずは一番大きいやつをルピに渡し、次にそれぞれの家族に4枚ずつ渡す。


「ん、食べていいよ」


「ワフッ!」


 ちゃんとルピの号令があってから食べ始めるドラブウルフたち。

 美味しそうに食べてくれてるのを見て一安心。


「〜〜〜!」


「はいはい。スウィーにはこっちね」


 バックパックから大きめのカムラスの実を一つ取り出して渡す。

 港に持ち込んだ甘味は余らなかったから、今日のところはこれで勘弁してもらおう。


「〜〜〜♪」


『ショウ君、残り15分は質問タイムでいいですか?』


「うん。よろしく」


 俺もカムラスを一つ口に入れ、甘味を味わいつつ流れていくコメントを追いかける。

 古代遺跡の管理者の成り方の話がやっぱり多いな……


『まずは「管理者にどうやってなりましたか?」ですけど……』


「なんとなく? 制御室に来て、光ってる場所に手を置いたらって感じ」


【ワサンコ】「ほうほうほう!」

【ディション】「なんか登録する感じなのか……」

【ロッサン】「最初にタッチするのが重要っぽいなあ」

【リーパ】「早い者勝ちなのかねえ」

 etcetc...


 それを皮切りに、いろんな推測が出てきてなるほどなーって。

 その中で面白かったのが、将来的に『攻城戦』的なギミックになるんじゃないかっていう話。

 どれぐらいか不明だけど、一定期間を過ぎると管理者じゃなくなって、次の管理者争奪戦が始まったりするのかもとか。

 確かにそういうゲームはMMORPGじゃなくてもあるもんなあ。


『次の質問です。「管理者でできることってなんですか?」です』


「その辺はまだ全然で。でも、魔銀ミスリルの鉱床は復活するようになったかな。それが一番嬉しいかも」


 あそこは当然だけど俺が独り占めしてるわけで、ほぼ無尽蔵に魔銀ミスリルが使えるんだよな。

 コメント欄もうらやまコメが流れていくんだけど、たくさん取れたからって、誰かに売ったりもできないからなあ。

 ま、これからいろいろ作るつもりだし、その時に使えればいいか。


『次の質問に行きますね。「新しい食材は見つかりましたか?」です』


「ああ、そうそう。お昼にセルキーたちとご飯食べたんだけど……」


 クルーぺソース(魚醤)とオステラソース(オイスターソース)を取り出して、鑑定結果を見せる。


【ケダマン】「え? 新種のソース!」

【ルウミイ】「オイスターソースじゃないかな!?」

【デイトロン】「<調味料代:5,000円>」

【マスターシェフ】「<情報ありがとう!:3,000円>」

 etcetc...


「これはセルキーたちにもらったソースで、魚醤とオイスターソースっすね。味もほぼそのまんま」


『お昼に作ってたのは、お魚のオステラソース炒めですか?』


「うん。ブリのオイスターソース炒めをゲーム内で作ってみた感じ」


 セリオラはもうちょっと脂が乗ってると良かったんだけど、それはそれでオステラソースのうま味がいい感じだった。


「今度、ランジボアの肉で回鍋肉とか作ってみたいなあ」


【アマツノユ】「回鍋肉……(*´﹃`*)」

【レーメンスキー】「キャボロって島にあるんだっけ?」

【マスターシェフ】「ネギの変わりはキトプクサかな?」

【シュンディ】「白米が欲しいねえ」

 etcetc...


「港の倉庫に燻製室を作ってベーコンもつくったし、玉子もあるし、ベーコンエッグとかもシンプルに美味しそう」


 コメント欄から燻製ネタがいろいろ上がってきて、燻製玉子とかも確かに美味しそうだなあと。


『ショウ君、最後の質問です。「ワールドクエストについて一言!」です』


「えー、俺って不参加扱いだし、一言とか言われても……」


【マツダイラ】「ショウ君を参加扱いにしてフォロー欲しいな……」

【ディソル】「ワークエなあ」

【コックリ】「俺らだって様子見だもんね〜」

【ミナミルゲ】「このライブ見てる方が楽しいまであるw」

 etcetc...


 なんかみんな冷めちゃってて、運営頭抱えてそう。

 そういえば、ワークエの進捗ってどれくらいだろう?


「お、なんか12%まで上がってる」


【キンコジ】「日付変わるころが最大だね」

【フェル】「朝になったらまた一桁に戻るよw」

【ラッカサン】「アンデッドを駆逐しても、そこを維持できてないらしい」

【チョーサン】「だめだこりゃ」

 etcetc...


 例の先行して独占してる人たち、うまく行ってないってことだよな。

 セスやベル部長が魔王国方面からって話が動いてるんだろうけど……いろいろと大丈夫かな?

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