第250話 石壁の壊し方
「ばわっす」
『ショウ君』
夕飯を終えて、洗い物もしてIROにログイン。
8時前だけど、部室にはミオンだけ……
「あれ? ヤタ先生は?」
『今日はリアルビューで見てるだけにするので、二人でやり切ってくださいだそうです』
「マジか……」
信頼してくれてるんだろうし、何かあったら飛んでくるんだろうとは思うけど、ちょっとプレッシャー……って程でもないか。
前回も最初と最後だけだったもんな。
「んじゃ、行ってくるよ」
『はい。いってらっしゃい』
「……」
『どうしました?』
「いや、なんでも」
俺、本当にダメ人間になってる気がする……
………
……
…
『ショウ君、ちょっと気掛かりなことがあって』
「え? 何?」
『昨日の夜、ワールドクエストの死霊都市に魔王国からもっていう話がありましたよね』
「うん。俺としてはマリー姉が暴走しないかが心配だけど……」
『そのことはドラゴンさんたちは知ってるんでしょうか?』
「あー……」
いや、でも、さすがに知ってるんじゃないか?
「大丈夫な気がするんだけど……一応、連絡はしておこうか。今日はライブからそのまま山小屋に戻るし」
実は知らなかったってオチだったりすると、後で「なんで伝えなかったんだろ」って話になるもんな。それで例の転移魔法陣の回収ができなくなったりしたら……
『そうですね』
さて、荷物は全部持ったかな。
とはいえ、持ってきた野菜や調味料は全部セルキーたちに譲った。自分とルピの分は山小屋の保存庫に十分残してあるし。
あと、食べきれない分のオランジャックを乾燥の魔法で干物にし、さらに燻製にする手順を教えておいた。
いつでも使えるように、倉庫は開けっぱなしにしておくことを伝えると、ソースの壺が1つずつ増えた。
そういえば、セルキーたちって普段は陸に住んでる? 火を使う料理をするんだから陸上生活だよな。いや、料理のときだけ陸に上がるとかもあるのか……
「おっと、行こうか」
「ワフン」
「〜〜〜♪」
インベントリにはソース、オランジャック(アジ)の干物、乾燥ティアルプ(昆布)が詰め込まれ、バックパックにはカムラスの実がいっぱい。
結構、重いな……
『開始まであと5分です』
「りょ。ちょっと急ぐよ」
昼間は大人数のお食事会だった倉庫前を抜けて、灯台のたもとまで。
ここに座って配信の開始待ち。
「ワフン」
ルピがあぐらの中でお座りするので、優しく頭を撫でてあげる。
スウィーも定位置の左肩へ座って、足をぶらんぶらんと暇そうな感じ。
『10秒前……、5、4、……』
自分で配信開始するんだろうし、カウントダウンはいらないような気がしたんだけど、ヤタ先生もいないし、ちょっと緊張してるのかな?
『みなさん、ミオンの二人のんびりショウタイムへようこそ!
実況のミオンです。よろしくお願いします!』
【リクレー】「始まった!」
【ブルーシャ】「ミオンちゃん、今日は探検服!(*^^*)」
【マリオネラ】「いよいよ古代遺跡の謎があきらかに……」
【ミイ】「飯テロあります?」
etcetc...
ミオンの今日の衣装は探検家のやつ。
なんだけど、そろそろそっちも新しいのを用意していい気がする。
『今日は、先週日曜のワールドアナウンスにあった「古代遺跡の管理者」について、ショウ君と解説していきますね』
その言葉に盛り上がるコメント欄。
まあまあ、大事なところは隠すけど、ちょっと寄り道して、火の精霊石についてはオープンにしようと思ってる。
『それでは、島に繋ぎますね。ショウ君、ルピちゃん、スウィーちゃん〜』
「どもっす」
「ワフ〜」
「〜〜〜♪」
コメント欄はルピとスウィーで人気。あとトゥルーがいないのを残念がってる感じかな?
『今日は港ですね』
「うん。お昼はトゥルーやセルキーたちと遊んでからご飯を一緒に食べたんだけど、その様子は……」
『はい。いくつか短編でアップしますので見てくださいね』
【ニクス】「短編助かる〜」
【タラアミ】「飯テロ短編めっちゃお腹空くw」
【マスターシェフ】「新レシピに期待!」
【デイトロン】「<短編掲載料:5,000円>」
etcetc...
今回は飯テロしてる時間なさそうだけど、ソースは紹介したいところ。
いや、最後に展望台のところでわらび餅を食べようかな。天気もいいし。
『ショウ君、今の場所の説明をお願いします』
「うん。えっと……」
視線の先には灯台の入り口が。
【キャリコ】「灯台に秘密が!?」
【ウィズン】「上に行ってみたい!」
【スキンコ】「え? あの上になんかあったの?」
【メラリ】「実は変形してロボになったり……」
etcetc...
「あ、灯台は関係ないっす。また今度見せますけど上に魔導具のランプ? でっかいやつがあるだけで。灯台の向こうに……よっと」
立ち上がって、灯台の裏側へと歩く。
その視線の先にゆっくりと下りていくと、港への入り口が見える。
「あれ、古代遺跡の港の入り口」
『最初に来た時に見つけてたんですけど、時間が無くて入れてなかったんですよね』
「その後、トゥルーに会えたり、アージェンタさんが来たり、てんやわんやだったからね」
すぐに見に行けば良かった気もするけど、それだとマルーンレイスに、いや、その前のベノマスライムに負けてたか……
【ミンセル】「港(陸上)」
【イマニティ】「満潮になると海面になる?」
【シンマン】「ワンダバ?」
【ヴェネッサ】「ホバー用とかですかね?」
etcetc...
あ、潮の満ち引きって可能性があったか。いやでも、通路は特に海水に浸かってた感じはないしなあ。
前は暗かった通路だけど、今はニーナが復活してくれたおかげで明るく、その先にある大きな扉が見える。
それを開けるとさらに広い空間が目の前に現れる。
「実際どういうのだったか、まだ全然わからないんだけど……」
ホーム(?)部分に上がって、視聴者さんにも見えるようあたりを見回す。
「ここに船? が入ってきて、乗り降りしてたのかなって」
【マジプ】「なるほどなるほど」
【スイベル】「遊覧船の発着場みたいね」
【ナーパーム】「周りに島あるんだっけ?」
【ハンナ】「船探しセルキーたちに手伝ってもろて?」
etcetc...
『この先、高いところから周りを見渡せますよね』
「うん。とりあえずそこまで行こうか」
この前、小さく見えた島はよっぽど注意しないとわからないだろうし、ざっくり見渡すだけでいいかな。
「あ、いや、先にこれ」
上への階段へと続く通路の前に、ベノマスライムを倒した残骸が。
コメント欄からどうやって倒したのかっていう質問が来てて、
『魔法で倒したんですよね』
「うん。攻撃したら毒液を吐いて反撃してくるから、石礫で押しやってから落石でぺしゃんこにした感じ」
【クサコロ】「落石?」
【フェル】「ぺしゃんこはえぐいw」
【ギュイドン】「応用魔法学の方か!」
【ディソル】「どうやって片付けるのそれ?」
etcetc...
「応用魔法学<地>の魔法ですね。石壁を空中に出せる感じなんで、MP消費も同じぐらい」
『片付けは今しますか?』
「とりあえず砕いておくよ。ルピ、スウィーは隠れてて」
ルピが足の間に、スウィーはフードへと隠れたのを確認し、
「<掘削>」
ベノマスライムを押し潰した石壁が一瞬にして砕けて砂の山へと変わる。
【モルト】「おおお!」
【ロコール】「え? これマジ強くね?」
【アクモン】「かっこいい!」
【マーサル】「ベルたそに教えてあげてw」
etcetc...
ベル部長はどうだろ?
石壁消すのには便利だけど、これ土木スキルが必要なんだよな……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます