第240話 いろいろな重さ

 車軸と車輪を作りながら、島の植生についての質問に答えてると、ライブも終わりの時間に近づいてきた。


『ショウ君、そろそろ時間ですけど、どうですか?』


「うーん、もうちょいなんだよなー」


<お二人の判断で延長して良いですよー。10時には切れますけどー>


 と天の声が降ってきたので、乗らせてもらうことにしよう。


「もうすぐ試せそうだから、5分か10分延長で」


『はい!』


【ニクス】「やった!」

【ルマミール】「なんか緊張してきました」

【ハジキリー】「果たしてうまく動くのか……」

【ギュイドン】「どきどき……」

 etcetc...


 9時半終わりの予定だけど、9時45分ぐらいには終われるはず。

 フレームの片側から車軸を入れ、車輪を通し、フレームの反対側も通す。

 車軸が抜け落ちないように、抜けどめのピンを差し込めば……


「よし、これで行けるかな?」


 両手で持ち手を握って引き上げる。

 前後にコロコロと……良さそう?


【ロッサン】「おお、すげえ!」

【デンガナー】「バッチリやん!」

【ヒエン】「荷物乗せてみよう!」

【リソッス】「耐荷重どれくらいなんでしょう?」

 etcetc...


 確かに何か荷物を乗せてみないことにはだよな。

 ってことで、集荷用の木箱を取り出してフレームの上に置く。

 あとは荷物だけど……


「ルピ」


「ワフ」


 俺の隣でのんびりしていたルピに声をかけて、


「ここに入ってみて」


「ワフン」


【シデンカイ】「いい!」

【ルコール】「かわよ〜」

【ドラムン】「なんだこの可愛い絵面!」

【ジュウロウ】「子連れ狼だ!w」

 etcetc...


 ルピが木箱にイン。

 うん、大きくなったし、重くなったし、強くなったよなあ。


「最初はゆっくりな」


「ワフ〜」


 教会裏は地面が露出してるし、それなりに小石とかもあるので、ごろごろといった感じで上下に揺れているが、箱の中にお座りしてるルピは楽しそう。

 そのままごろごろと畑の周りを巡ってると、気がついたフェアリーたちがやってきて、どんどんと木箱へと収まっていく。


【シェケナ】「可愛すぎ……」

【ヒカルン】「うわー!」

【ルコール】「かわかわよ〜」

【アマツノユ】「萌え死ぬ〜(*´ω`*)」

 etcetc...


 最後に真打登場とばかりにスウィーが飛び込んできて、


 バキッ!


「あ……」


『そ、それでは今日はこの辺で。またお会いしましょう! さようなら〜』


「ま、また〜」


「ワフ〜」


「「「〜〜〜♪」」」


 ………

 ……

 …


<はいー、お疲れ様でしたー>


『お疲れ様でした』


「お疲れっす」


 そう答えつつ、スウィーに目をやると、


「〜〜〜;;」


「いや、別にスウィーのせいじゃないから」


 うるうる半泣きで両手を合わせて謝られると怒るに怒れない。

 というか、耐荷重が全然足りてないんだな、これ。


「ちょっと壊れたところ確認したいから、外に出てくれる?」


「ワフン」


 ルピがぴょんと飛び出て、それについていくスウィーとフェアリーたち。

 木箱を退けて嫌な音がした場所を確認……


『どこが折れたんですか?』


「車軸。まあ、しょうがないよな。やっぱり鉄で作らないとダメか」


<車軸を鉄にするとー、今度はフレームの車軸を通してる部分が折れると思いますよー>


 とヤタ先生。確かに……


『全部作り直しですか?』


「いや、足回りだけかな?」


 車軸と車軸が通る部分のフレームを鉄にするか。

 その上に、木のフレームをきっちり接続する感じで行けそうな気がしてきた。


「〜〜〜?」


「大丈夫、すぐ直せるから。ほら、これ食べて元気出して」


 珍しく反省中のスウィーにドライグレイプルを一粒渡す。

 それを受け取ったスウィーが、いつもの左肩へと座って……


 チュッ


「え?」


『……スウィーちゃん?』


 ミオンの生声が……怖い。

 それが聞こえてないのか、スウィーは美味しそうにドライグレイプルを食べてるんだけど。


<ショウ君は無意識でやってますからねー。ミオンさんは注意した方がいいですよー>


『はい』


「え、どういうこと? 今の俺が悪いの?」


「ワフ」


 ルピまで頷いてるし。

 どうすりゃいいんだよ、全く……


 ………

 ……

 …


【鍛治スキルのレベルが上がりました!】


 鉄棒を作って曲げてで車軸を支えるフレームを作り、そこに通す鉄の車軸も作った。

 ヤタ先生のアドバイスもあって、今度の車軸は短めに。確かに長いとテコの原理で折れやすくなるよなと。


「ふう、こんなもんかな?」


『完成ですか?』


「うん。これを木のフレームにしっかり固定すれば、今度は大丈夫なはず。っと、そろそろ11時?」


『はい。あと10分ほどです』


「りょ。じゃ、そろそろ上がるよ」


<二人とも真面目ですねー>


 今日は平日だし、ヤタ先生がいる状態で遅くまではさすがに……


「そろそろ、鉄インゴットも減ってきたし、また採掘しないとかな」


『明日の部活の時にしますか?』


「いや、明日の部活の時間は資料室に転がってたアイテムを鑑定しようかと。スウィーたちが集めてくれたやつ、ライブ前にまたってのが怖くて放置してたから」


『あ、そうでした!』


 今も左手にある蒼月の指輪よりもすごいものとか出てきたらどうしよ?

 いや、その前に呪われてる可能性があるんだった。ベル部長に聞いておかないと。


 後片付けを終えて帰り道を歩いてると、南西の森で遊んでたルピたちが向こうからやってくる。

 俺が上がる時間はいつもだいたい同じだし、それに合わせて戻ってきた感じかな?


「ワフ〜」


「よしよし」


 飛び込んでくるルピを受け止めてモフることしばし。

 スウィーが定位置に座ったところで帰宅再開。


<そういえばー、ワールドクエストはどれくらい進みましたかー?>


「あ、えっと……」


 メニューを開いてワールドクエストを確認すると進捗は6%。

 あんまり進んでないじゃん……


「やっぱ進み悪いよなあ、これって」


『部長が言ってた問題があるからでしょうか?』


「まあ、コストかかりすぎるのわかってて、でも、リターンがよくわかんないからなあ。みんな様子見してるんじゃない?」


<どういうことですかー?>


 ヤタ先生は今日は職員会議だったから聞いてないんだっけ。

 ミオンがざっくり説明してくれてるのをたまにフォローしつつ、階段を上っていく。


<なるほどー。MMOらしいことになってますねー>


『どうにかする方法はないんでしょうか?』


<そうですねー、その独占を崩すしかないんじゃないでしょうかー>


 独占を崩すって言われてもなあ。

 それができるなら、白銀の館の人たちが既に着手してそうなんだよな……

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