第239話 スウィー・ト・タイム

「さんきゅ」


「「「〜〜〜♪」」」


 育った野菜を丁寧に収穫。

 ちょっとした雑草を抜いたり、水やりをしてくれたりはフェアリーたちが手伝ってくれてあっという間に畑仕事終了。


「〜〜〜♪」


「いや、スウィーは見てただけじゃん」


 ドヤ顔するスウィーに思わず突っ込むと、てへぺろで返してくれるお茶目な女王様。


【キラル】「良いボケ、ツッコミ、そしててへぺろ」

【サテナー】「女王様まじ可愛い〜♪」

【マネン】「ボケもできるとは……やりおるw」

【シェケナ】「100万回保存した〜♪」

 etcetc...


 スウィーも人気だよなあ。

 お茶目で愛嬌もあるし、本当に嫌なこととかはしない子だから、当然なんだろうけど。


『ショウ君、フェアリーさんたちにご褒美を』


「うん。じゃ、おやつにしようか」


「「「〜〜〜♪」」」


 いつもの木陰に座り、ルピは定位置のあぐらの中へ。

 インベントリから取り出すのは、まずはブルーわらび餅。


【ウタゲテー】「おお? 何それ?」

【ジョント】「わらび餅だ」

【ニレノ】「え、なんか青いんだけど……」

【マスターシェフ】「お、それは……さすがだね」

 etcetc...


「えっと、わらび餅が正解で、オーダプラから抽出した片栗粉から作ってます。掛けてあるのはグリシンを挽いたきな粉、この青いのはブルーガリスから作った空砂糖を煮詰めた青蜜」


『とっても美味しいそうですよ』


 フェアリーたちの目が厳しいので、そろそろ……


「はい。お手伝いありがとうな」


「「「〜〜〜!」」」


【シェケナ】「なごむ〜♪」

【メッセレン】「ホント島は癒しよ〜」

【サブロック】「いいね! さっそく作ってみないと!」

【デイトロン】「<わらび餅代:5,000円>」

 etcetc...


 あれ? スウィーが……肩に座ったまま待機してるの珍しいな。いつもなら真っ先に食べに行くのに。


「スウィー食べないの?」


「〜〜〜♪」


 手のひらを上にくいっくいっという仕草。

 くっ……新作の方に気付いてるのか。


「ブルーわらび餅はちょっと前に作ったんだけど、こっちが今日作ったやつ」


 取り出したのはグリーンベリージャムを練り込んだグリーンわらび餅。こっちはまだ青蜜を掛けてない。


「女王様、まずはそのままどうぞ」


「〜〜〜♪」


 一欠片を手に取ってぱくり……

 うん、その顔見れば、美味しいのはわかるよ。


「ワフ!」


「うん、ルピにもな」


【ターバン】「その緑はジャム?」

【マスターシェフ】「グリーンベリージャムかな?」

【リンレイ】「うわあ……」

【ガリソンヌ】「女王様の恍惚顔いただきました〜」

 etcetc...


『美味しそうです……』


「グリーンベリーは実際にはないからなあ。でもまあ、ちょっと酸っぱい野いちごのジャムって感じかな?」


 グリーンベリーの酸っぱさは煮込むとほどほどに飛んでいくので、これだけでもトーストに乗せて食べたいぐらい美味しい。


「〜〜〜!」


「はいはい。青蜜はほどほどにね」


 好みの量になるように、皿の端っこに少し垂らすと、ちょいちょいとつけてからぱくっと……

 美味しそうに食べてくれるのが嬉しい。


『ううう……』


【ホンショ】「ミオンちゃん爆発するよ?w」

【ガフガフ】「やばいやばい!」

【シェケナ】「これはミオンちゃんにも作ってあげないとねえ(ニヤニヤ)」

【ミイ】「島の女神様のはお怒りですよ?」

 etcetc...


『今度一緒に作るから大丈夫です!』


 はいはい。爆発しときますよ……


 ………

 ……

 …


 おやつを終えて、一輪車作りを開始。

 ルピはギコギコ、コンコンするのは気にならないのか、隣でくつろぎモード。

 スウィーやフェアリーたちは、それには興味がないみたいで、花や畑の周りをふらふらと楽しそう。


 まったりペースなので、質問も受け付ける方向で、まずは木材を切り揃えて行く。

 作るのは、ハシゴの片方に車輪、もう片方が持ち手ってシンプルなやつ。

 あとは、荷物がずり落ちないようのガイドと、停車用の支え足が必要なぐらいかな。


『ショウ君、最初の質問です。「コショウについて教えてください」です』


「あー。えっと、今持ってたかな……」


 確かインベントリに微妙に残ってたレッペリンの実が……あった!


「これこれ」


【レッペリンの実】

『レッペリンの果実。熟す前、後によって加工方法が異なるが、いずれも辛みを持つ調味料となる。

 素材加工:香辛料の原材料となる』


【ガーレソ】「コショウの実!」

【ドンデン】「どんなところに生えてた?」

【イマニティ】「金貨と同じ重さ!(島に貨幣はありません)」

【マスターシェフ】「白コショウは自作かい?」

 etcetc...


 のんびりムードだったコメント欄が一気に流れ始めてびっくりする。


「えーっと、場所は島の南側。木に巻き付いてる蔓草に赤い実がなってて、なんで今まで気づかなかったんだろうって」


『ショウ君が植物学スキルを持ってるから見つけたかもなんですよね』


「そうそう、気付いたのはそれのおかげかも。でもまあ、赤い実を注意深く探せばあるんじゃないかな」


 コメント欄が「あっちにあるかも」「いや、こっちだろ」的な流れになってて、それはまあお任せしますで。

 ベル部長やナットにはもう少し詳しく教えたからか、割とあっさり見つけたっぽいんだよな。いや、ディマリアさんとかは植物学持ってそう。


『白コショウは自作ですよね』


「うん。ちょっとリアルの方で調べて、水に晒してから果肉を取ればいいらしいって。そのまま試したら上手くいった感じ」


 おかげで赤く熟した実も使えて良かったっていう……あれ?

 本土は黒コショウしか出回ってないんだっけ。俺の鑑定結果だと『熟す前、後で』って書かれてたのは、植物学とか素材加工とか関連してるのかな。


 木材を切り揃えつつ、いくつかの質問――だいたい料理関係だけど――に答えていく。

 フレームの基本部分が揃ったところで、まずは仮置きしてみて、バランス的にもサイズ的に問題ないのを確認。

 質問をちょっと中断してもらって、さくさくと釘で固定していく。


「よし。後は車輪と車軸かな」


【ススギ】「形になってきた!」

【ガーレソ】「楽しそう。俺も木工取るかな……」

【ティーエス】「生産系のおすすめは木工?」

【ドウミン】「木工スキルのレベルいくつ?」

 etcetc...


「木工スキルは今9だったかな。木箱、椅子、いろんな道具の柄の部分とか、ロフトベッドもそうか。いろいろ楽しいんで生産系ならおすすめっすね」


 お役立ちという意味では素材加工が一番なんだけど、本土だとNPCがいてやってくれるスキルでもあるしなあ。


『ライブ中に完成しそうですか?』


「うーん、ぎりぎりかな? 試作の動作確認とかできるといいけど」


 車軸も車輪も丸くするところが大変だからなあ。

 まあ、やすりがけを頑張れば、良い感じのができると思うけど……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る