第230話 つなげる物、つながる場所
ベル部長はそれで納得したのか、白銀の館の人たちに連絡するとIROへ。
俺たちは崩落した場所がちゃんと修復されたかの確認に向かってるんだけど、山小屋の盆地から階段を降りてる途中で、
[よろしいでしょうか?]
「うわっ!」
びっくりして足を踏み外すところだった……
今の声は古代遺跡のAIなんだろうけど、指輪からだよな?
『指輪ですか?』
「多分? まずは下りるよ」
『はい』
小走りで階段を下り、改めて指輪に向かって、
「えっと、何?」
[はい。問題のあった箇所の修復は全て完了しました。現在は通常稼働中です]
「うん。今から確認に行くから」
[はい。了解しました]
どういう理屈かわからないけど通話できるらしい。いや、魔法だよな。
音を伝えるってなると、
「やっぱり風系統の魔法なのかな?」
『そうですね。音を転送してるとかでしょうか?』
「なるほど……」
古代遺跡の中なら通話できるとかなのかな?
かなり便利な気がするんだけど、ここだと古代遺跡AIと話すぐらいしかないよな。
十字路を右へ。転移エレベータで上に来た先はもう……
「おお! 綺麗になってる!」
『すごいです!』
ゆっくりじっくり通路の左右、天井を眺めながら進む。
そういえば、解錠コードの扉の先、今までは暗かったのも直ってたなと。
右手側に扉があって、ここから展望台に出れるんだろう。その手前に開けた抜け道も塞がれてるな……
「この扉を中心に崩れ落ちてたんだな」
『原因ってなんでしょう?』
「うーん、多分だけど……」
厄災が起こって逃げてきた人たち、どうにかして外に出たかったんじゃないかな?
マナが無くなるって、空気が無くなるような感じだろうし、外に出ればっていう僅かな望みに賭けたらみたいな。
『怖いですね……』
「外へ出れてれば、厄災が終わった後に何とかなったかもなあ」
解錠コードの扉が開かなかったから、無理矢理ってやったんだろうけど……
「この扉、修復されたんだと思うけど、解錠コードが必要な方だよね?」
『です』
以前のコード、例の数字で設定されてるのかな?
一応、確認しておくか。
【祝福を受けし者のアクセスを確認しました。解錠コードを入力してください】
「4725」
【解錠コードが合致しました。解錠しますか?】
「はい」
やっぱりというか当然というか同じだった。
せっかくだし、先にお墓参りを終わらせておこう。
ちょうど出たところが展望台の中央で、まっすぐ進むとルピのお母さんのお墓がある。
スウィーが花を供えてくれて、三人で黙祷……
「じゃ、あとは制御室行ってかな」
「ワフ」
扉をしっかり閉めて制御室へ。
入った向かい側、サイドテーブルのようなものは制御板って感じなのかな。
スウィーがふらふらとその上を飛んで眺めてるけど、意味わかってるわけじゃないよな?
「えっと、元々どうだったか知らないんだけど、通路はちゃんと直ってたし、扉の解錠コードも前のままだったよ」
[はい。なお、各所の扉について、本施設はいっさい関知いたしません]
「え? それっていいの?」
[はい。私自身の機能停止や不具合によって、扉の状態が固定化されることを回避するため、切り離された管理となっています]
うーん、そういうものなのかな。
何かあったら開けっ放しになる方が正しい気が……
[よろしいでしょうか?]
「あ、うん」
この部屋の中だと、ちゃんと制御板から聞こえてくる気がするな。
そういや、指輪の通話ってどの範囲まで届くんだろう? 古代遺跡の中だけ? まあ、後で聞いてみるか。
[確認いただいた以外の修復箇所ですが、大型転送室の床の一部が陥没していたのを修復しました]
大型転送室って確か地下だよな。アージェンタさんが転移してきた。
床の一部が陥没……? ああ!
「スケジェネの足元を掘削したやつか!」
『あ、埋め忘れてましたね』
あの日は時間ギリギリで慌てて戻ったし、その後に一度も行ってないんだよな。
転移魔法陣以外には特にって感じだったけど、もう一度調べに行くか……
[修復前の状態の方が良ければ、そのように戻しますが?]
「あ、いや。直してくれてありがとう。それ以外に何かある?」
[はい。現在、施設は通常どおり運転しております。マナの再利用処理も実行可能です]
「ああ、それだ。マナの再利用処理って何?」
[マナの再利用処理とは、マナを含有している廃棄物を焼却処分し、魔晶石への充填、本施設での利用、大気中へと還元することを指します]
へー、そんな施設だったんだ。
マナを含有している廃棄物っていうと魔石? 魔導具? あとは
『焼却処分ってどうしてるんでしょう?』
「焼却処分って……火口に放り込んでる?」
『あ!』
[はい。本島で活動中の火山は、地脈に流れるマナを大気へと放出しています。本施設はその仕組みを利用した再生処理施設です]
なるほど。
廃棄物を放り込めば、物は焼却されるし、マナは再利用できると。
「あれ? 廃棄物を用意しないと、またマナが足りなくなって、保全状態になったりするの?」
[いいえ。本施設の基本的な稼働には、火山活動で放出されるマナのごく一部を回収するだけで問題ありません]
じゃ、特に廃棄物を放り込まないといけないわけでもないか。
逆にそれを用意しないとまずいとか言われると、結構困ってたところだけど。
「あと、この指輪で通話できる範囲って? 制限はあるよね?」
[はい。施設内部のみ通話可能です。屋外では使用できません]
ふむふむ。まあ、予想通り。
質問はそんなとこかな……
『ショウ君、ニーナさんに聞いてほしいことがあります』
「ニーナさん? ああ、このAIのこと?」
『あ、はい。すいません……』
「ううん、すごくいいと思うよ」
ああ『古代遺跡のAI』って呼びづらいもんな。さすがミオン。
……名前の設定とかできるかな?
「MR-217って呼びづらいから、ニーナって名前でいい?」
[はい。呼称を『ニーナ』に変更しました]
「おお! で、何だっけ?」
『あ、はい。転移魔法陣の行き先がどこなのかです』
あ、確かに。
あれも設備の一つなら把握してるはず?
「えっと、転移魔法陣の行き先が知りたいんだけど。この部屋にあったやつで、今は山小屋にあるやつってわかるかな?」
[いいえ。ですが、転移魔法陣の情報については、個体番号で問い合わせが可能です]
あのやたら長い個体番号か。
うん、当然、覚えてるわけもなく……
『ショウ君。番号伝えますね』
「さんきゅ! えーっと、個体番号は……」
ミオンが話してくれた番号を一言一句伝えていく。
[はい。測位情報を照会中……照会完了。転移先は中央先端魔導研究所、第11号3番転移塔です。座標情報は……]
え、えーっと……
『大丈夫ですよ。私がメモしました』
「さんきゅ。助かったよ」
俺も筆記用具ぐらい、持ち歩くことにしよ……
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