第228話 うちへ帰ろう
さて、なんか15分ぐらいで点検完了とか言ってたし、それまで待つか……
『ショウ君。この古代遺跡のことについて聞いてみてもらえますか?』
「ん? どういうこと?」
『あ、えっとですね。受け答えの感じが、私の使ってる動画編集ソフトに似てるんです』
ミオンが使ってる動画編集ソフトは、最新AI搭載型のお高いやつらしいんだけど、そのAIとよく似てるらしい。
そのソフトもIROを作ったSix Elements Software製AIを搭載してるらしいので、普通に口頭で受け答えができるんじゃないかっていう。
「えーっと、ちょっといい?」
[はい。御用でしょうか?]
おお、すげえ。こんな感じなんだ。って感心してる場合じゃないな。
「この施設について教えてくれる?」
[はい。本施設は自律型マナ再生施設、型式番号MR-217です]
「自律型?」
[はい。本施設では、私、MR-217が主たるマナ再生作業を行います。異常事態などが発生した場合のみ管理者の指示に従い対応します]
なるほど。だから自律型か。
そういえば、あの記録にも年に一度点検すればいいみたいなことが書いてあったよな。
『今の管理者はショウ君だけなんでしょうか?』
「管理者って俺だけ?」
[はい。本施設は、大気中のマナの急激な減少により通常稼働を停止し、安全面の問題から保全状態への移行を余儀なくされました。
本来であれば管理者情報も保全されているのですが、そのために必要なマナの供給が絶たれたため、最低限の状態での保全となっていました]
あれ? 大気中のマナって数日で戻ったはずだし、なんでマナの供給が絶たれたままになってるんだ?
『あの通路の崩落のせいでしょうか?』
「あー、この先、あっち側の通路の先が崩れちゃってるんだけど、そのせいでマナの供給が絶たれてるとか?」
[はい。現在の点検作業において、不具合が発生していることは確認されています。非常用のマナを利用することで対応が可能です]
「え? 対応できるの?」
[はい。およそ500ほどのマナで送魔線を修復可能と推測されます。その後は動力部から供給されるマナを利用し、土砂の除去などを行なって通行可能な状態へと戻します]
おお! これで崩落が解消できるなら、港まで戻らなくても山小屋に帰れそう!
『ショウ君。どれくらい時間が掛かるかを聞かないと』
「ああ、そうだった。時間どれくらいかかりそう?」
[はい。送魔線の修復におよそ5分。通路の完全復旧には1時間が必要と推測されます]
1時間以上掛かるのか……
「ミオン、今何時?」
『10時半を回ってます』
うーん、11時をだいぶオーバーしちゃうんだよな。
いや、完全復旧じゃなくて、俺が安全に通れるだけなら?
「先に俺たちが安全に通れるようにだけなら、もっと早く終わる?」
[はい。その場合は15分ほどと推測されます]
「ごめん、ミオン。11時回るかもだけど」
『大丈夫ですよ。12時までは平気です』
初めてミオンが俺のライブに来た時のことを話されて、確かにそうだったよなと。
部活が始まってからの方が、真面目に11時に終わってる気がする……
「えっと、送魔線ってのを復旧するためのマナは足りてる?」
[いいえ。非常用魔素に200程度の追加が必要です]
「じゃ、マナは今から追加するから、俺たちが安全に通れるような最低限の復旧を優先してくれるかな?」
[はい。優先して復旧を開始します。マナが不足した場合はお知らせします]
さっそく復旧を始めたっぽいので、俺も特大魔晶石のところに。
話してる間にMPは7割ほどに回復したし、200消費しても100弱は残るはず。
11時回るけど、あそこから山小屋までなら10分もかからないし、12時前には終われるよな。
………
……
…
[送魔線の復旧が完了しました。通路の暫定修復を開始します]
「じゃ、もう非常用にマナ入れなくても大丈夫?」
[はい。以降の修復には動力部より供給されるマナを利用します]
動力部って下に監視室があるとこだよな。落ち着いたら見に行ってみよう。
特大魔晶石から手を離し、崩落へと続く通路へと。
「ワフ」
「〜〜〜♪」
「うん、ここで見てようか」
通路までは出ず、部屋から見える位置に腰を下ろす。
古代遺跡のAI(?)はさらっと復旧って言ってたけど、どうやってあれを直すんだろう。
『ショウ君、部長とセスちゃんがお話があるそうですが、スタジオに来てもらいましょうか?』
「あ、うん」
例のワールドアナウンスの件だよな。
まあ、ちょうどいいか。この修復の様子も見てもらおう。
『お邪魔するわね』
『兄上! また、とんでもないことをやらかしたようだの!』
「成り行きだよ。成り行き」
本当にそれ以外の言葉が思いつかない。
あそこで指輪を装備してみようと思ったのと、その勢いで言うがままに手を置いちゃったからとしか。
『それで、今ってどういう状況なのかしら?』
「古代遺跡が自分で崩落した場所を修復できるって話で、それが今から始まるとこっすね」
『意味がわからないんだけど……』
そりゃ、わかんないよなと思うんだけど、ミオンがフォローして何があったか説明してくれる。
俺としては、この場面を見逃したくないので、あぐらの中のルピを撫でながら、廊下の先を眺める。
「お? おおお?」
精霊の加護のような淡い光がゆっくりと崩れた場所を覆っていく。
全面が覆われたところで、向かって左側の土砂が浮いて、右側へと避けられていく。
「えええ? あれ、どうやって移動してるんだ?」
『浮いておるところを見るに、ベル殿の話にあった重力魔法の類ではないか?』
「ああ、重量を減らして……でも、上に乗ってる土砂が崩れてこないのは?」
崩れた上が空っぽならいいけど、どっさりと乗ってる土砂が落ちて来ないのも不思議すぎる。
『完全な推測だが、空間魔法で今の位置を固定する、もしくは、結界魔法で支えるといったところかのう』
「なるほどなあ……」
そんなことを話してるうちに、右側の土砂が取り除かれ、向こう側が見えるようになった。
距離的には埋もれてたのは10mほどかな? 地図で見た感じだと、今の部屋から転移エレベータまでが30mほどだったし、3分の1ぐらいであってるはず。
「もう行ける?」
[いいえ。現在、最終的な安全確保のための作業中です。通行が可能になり次第、お伝えします]
「りょ」
『え? 今の誰なの?』
『古代遺跡の制御AIですよ。部長』
『ほほう! ダンジョン生物説ではなく機械説か!』
なんかスタジオの方が盛り上がってるけど、ミオンがいろいろと説明してくれてるのがありがたい。
ちょいちょい、俺がすごいって話が挟まるのがむず痒いけど……
[通行可能な状態となりました]
「ありがとう。俺たちは通り抜けて山小屋の方へ戻るから、その後にでも元の通りに戻してくれると助かるかな」
[はい。了解しました。転移装置を通過後、通常通りの復旧作業に移行します]
通常通りの復旧作業もずっと見てたいところだけど、もう11時を回ってるはず。
さっさと通り抜けて山小屋へ帰ろう。
「さあ、みんなでうちに帰ろうか!」
「ワフ!」
「〜〜〜♪」
「「「〜〜〜♪」」」
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