第226話 残されていた物
スウィーから手渡された指輪、蒼月の指輪という名前だそうだけど、これまたかなりぶっ壊れ性能な気がする。
元素魔法系全般+1って対象スキルいくつあるんだか……
それに加えて、
「えーっと、マントがMP回復10秒で+3だから1分で+18。この指輪がMP回復3秒で+1だから1分で+20。合計すると1分間に38回復……」
ステータスが上がってきて、今の最大MPは400ちょい。
身につければ10分も休憩すれば、もうMP全回復みたいな感じになるんだよな。
ただ……
「これって部屋に落ちてたの?」
「〜〜〜♪」
腕組みしてうんうんと頷くスウィー。
倒したアンデッドって、多分、厄災から転移して逃げてきた人たちの……だろうし、その遺品みたいな感じか。
「……呪われてたりしない?」
「〜〜〜?」
その問いにはうーんと首を捻るスウィー。
聞かれてもわかることじゃないよな……
『呪いの装備とかあるんでしょうか?』
「ベル部長にも聞いてみないとだけど、普通のRPGにはあるからなあ」
今まで、武器、防具、アクセサリと装備は全部自作してきた。
何かしらドロップで手に入ったものをそのまま装備は初めてのはず?
あ、ゴブリンが落としたカナヅチとか投げナイフとかがあったか……
「いったんインベに入れて、後からにするよ」
『はい。でも、それだけじゃなく、いろいろあるみたいですよ?』
「え?」
ミオンに言われて辺りを見回すと、スウィー以外のフェアリーたちも、何かを拾って運んで一箇所に集めている。
指輪だけでなく、杖っぽいものは二人がかりで運んでたり。
「とりあえず、来た方の扉を閉めて、ちょっと休憩にしようか」
『はい』
扉の先を見張っててくれたフェアリーたちに、ありがとうと声をかけて扉を閉める。
祝福されし者、プレイヤーでなければ開かないので、これでひとまずは安全のはず。
「この部屋をちゃんと片付けて、ここでログアウトもありかな……」
『ちょっと怖いですけど……』
「まあ、この次、キリのいいところまで進んでから考えるか。ルピ、スウィー、フェアリーたちも、これ食べて」
手持ちの食料はこのとろとろ干しパプでラスト。
今後のことを考えて、ちょっと保存食とか作らないとかな。というか、燻製小屋作ろうと思ってたの、すっかり忘れてるな。山小屋じゃなくて、港の倉庫の方に作ろうかな……
『ショウ君、部屋の左奥にキャビネットがありませんか?』
「え? あ、あれか。また本があるといいけど」
足元に転がってるのは薄汚れたローブだったり、ブーツだったりと……ゴーストになる前の衣服かな。
正直、手で触りたくないものが多いので、鞘に刺したままの剣鉈を使って脇へと避けて行く。ゴミ箱欲しいな……
「えーっと、まず鑑定か」
鑑定結果は【古びた高級キャビネット】で、山小屋の1階にあったのと見た目も全く同じ。
取っ手をそっと引いて開けると、
「本だ。あ、この『水、氷、蒸気について』って応用魔法学<水>?」
その隣は『火、炎、熱について』だし、さらに隣には『風、空、気について』という背表紙。応用魔法学の火と風だよなこれ。
『地の本がないのは、山小屋にあったからでしょうか?』
「ああ、そういうことか。あの記録を書いてた人が、たまたま山小屋に持ち込んでたってオチな気がする」
なんで、地だけなんだろうと思ってたけど、そういうことなら納得。
さらに下の棚に目をやると、例の記録に似た感じの本? 冊子? ぎっしりと詰め込まれている。
「この古代遺跡の稼働記録っぽい……」
一つを手にとって開いてみると『問題なし』と書かれたページが延々と。たまに『灯台に魔素を補充』と書かれてるんだけど、これってあの灯台かな。
山小屋にいる人は結構まめに日常的なことも書いてたけど、こっちは完全に仕事のことしか書いてない。
『一番下の引き出しは何でしょう?』
「ん、見てみるよ」
しゃがみ込んでガラッと引き出しを開けると、そこに現れたのは何回か畳まれた大きな紙かな?
取り出して開いてみると、
「おお? これってこの古代遺跡の地図かも!?」
『ショウ君、向きを合わせてくれますか?』
「うん」
えっと、この東西に出口が2か所あるのが南側だよな。
南東側の鍛冶場は『製作室』で、その近くに『採掘場』。山小屋の場所は『監視員住居区画』と書かれてる。
山小屋に出る階段の先、十字路を北側に進んだところは出口。その先に『教会』と書かれてて、そこまでが古代遺跡の一部らしい。
十字路の西側、アージェンタさんが現れた広い地下は『大型転送室』で、東側から上に行った崩落現場の先は……やっぱり『制御室』だったか。
ああ、崩落した場所は、ちょうど『展望台』へ出る扉がある場所だったんだ。
制御室から北へ階段を下り、そこから東へ行ったところが『資料室』……多分、今いるここのことだろう。
『繋がってそうですね』
「うん。この先を進めば、突き当たりで左に上り階段が続いてて、それを上れば制御室のはず」
よしよしよし。
で、今の資料室から北へ戻ると、さっきの外、バルコニーみたいな場所へ出てる。
今日、最初に入ったあの駅みたいな場所は『港』らしい。あそこで船が発着してたってことだよな。
行かなかった方の扉の先は……西へ進んでから地下深くへと転移エレベーターがあって、そこは『動力部監視室』と。
「〜〜〜?」
「ああ、もう食べ終わったんだ」
この部屋もじっくり検分したいし、スウィーたちが集めてくれた物もチェックできてないし、でも時間はないし……
『どうしましょう?』
「……とりあえず、集めてくれたものは回収して、先へ進むことにするよ」
「〜〜〜♪」
「ワフ」
この部屋の整理もまたの機会に。部屋は逃げないから大丈夫。
まずはこの先、制御室に繋がってるはずだ……
………
……
…
「ワフ」
「よしよし、合ってるな」
通路は相変わらず暗いままなので、光の精霊のあかり頼り。
けど、順調に進んで、突き当たりの左側に上り階段が見えた。
この上が崩落現場の先、制御室になるはず。
『気をつけてくださいね?』
「うん。精霊の加護よし。気配感知よし。ルピ、スウィー、フェアリーのみんなも大丈夫?」
「ワフン」
「〜〜〜♪」
「「「〜〜〜♪」」」
みんな気合十分。けど、用心に越したことはない。
「やばくなったら、スウィーたちはあの部屋まで全速力で逃げてくれよ」
そのお願いにサムズアップする女王様。
俺とルピとでしんがりを務めれば、あの場所まで撤退は問題ないはず。挟まれなければだけど。
「じゃ、行こう」
「ワフ」
ルピが少し先行し、その後ろを追いかける俺と定位置のスウィー。それに続くフェアリーたち。
上り切る手前で見えてきたのは、真っ直ぐの通路とその先にある部屋の入り口。ここには特に扉はないっぽい。
気配感知に引っかかるものはなし。ルピが振り返って俺のゴーを待ってるので頷いて返す。
先行してくれたルピが部屋の中を確認……
「ワフ」
「さんきゅ」
追いついて部屋の中を見回すんだけど、地図で見た感じよりも狭い。
その理由が入って左手の壁沿いにずっと続いてるテーブル? 作業台?
「〜〜〜♪」
「ん? ああ、これって非常用の」
左肩のスウィーに耳たぶを引っ張られ、彼女が指差してる先を見る。
テーブルの左端に、例のスライドして開ける小窓。いや、なんかでかいな?
『なんだか今までより大きくないですか?』
「うん、今までのより大きいよね。まあ、開けてみればわかるか」
上にスライドして開けると、そこに見えるのは大サイズ、いや、特大サイズの魔晶石。バレーボールぐらいの大きさがある……
マナは全く入ってないみたいだけど、これに1割だか2割だか入れるのって、俺のMPで足りるのか?
「試すしかないか」
まずは精霊の加護を解除だな。
今までは2割ぐらい入れれば照明が点いたし、それぐらいならなんとかなるはず……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます