第223話 ゴー! ゴー! フェアリーズ!

 スウィーたちが何か話し合ってるっぽいし、もう1本笹ポを飲んでHP回復を待とう。で、その間に……


「SP余ってるし、溜めてたBPはもうステータスに振るか……」


『30ポイントもありますけど、どうしますか?』


「とりあえず10ポイントは残して、あとはLUK以外に均等にかな」


 残りSPが少なくなってきたからBPのまま保留してたけど、セルキーの守護者と島民50人突破で増えたからなあ。

 さくっと、STR、DEX、AGI、INT、VITに4ポイントずつ割り振って残りBPは10に。

 SPの残りは13あるので、まあまあ問題ないはず。


 あとスキルが元素魔法が9、精霊魔法が7に+1、応用魔法学<地>が6になったけど、これは実践も交えた方が上がるってことか。


「ワフ?」


「おっと、ごめんごめん。先へ行こうか」


 スウィーたちの話し合い(?)も終わった模様。

 ベノマスライムの先に見える通路へ行こうと、


「〜〜〜!」


「いでっ! スウィー、どうしたんだよ?」


 定位置に座ったスウィーが耳たぶを引っ張っる。

 俺に何かしろっていう……手? 手を出せばいいの? 何かくれるとかそういう?

 左手の手のひらを上に差し出すと、そこに自分の手をタッチするスウィー。


【スウィーからアライアンス結成が申請されました。受諾しますか?】


「は?」


『え?』


 アライアンスって、複数パーティが一つに纏まるやつだよな?

 スウィーのパーティって……フェアリーたちか。で、俺とルピがパーティってことで、アライアンスを組める?


「〜〜〜!」


「あ、ごめんごめん。『はい』っと」


【アライアンス『女王と愉快な仲間たち』に加入しました】


 愉快な仲間たち……まあいいけどさー……


『ショウ君、アライアンスってなんですか?』


「あ、えっとね」


 ざっくりとパーティ同士がくっついてアライアンスって説明を。

 そういえば、こういうのってパーティメンバー、アライアンスメンバーのステータスとか見れるよな。

 メニューを開いてみると、今まで使ったことのないパーティーのところが点滅してて、さっそくそこを開くと……


【女王と愉快な仲間たち】

☆フェアリーズ

 スウィー、ツーリィ、スーシア、フォーラ、フィフィ、シスル、

・フェアリーズ(1)

 ワーネ、セーフェ、エイラ、ナーイ、テネー、イレヴィ

・ショウのパーティ

 ショウ、ルピ


 フェアリーだけの6人パーティが2つは良いんだけど、2つ目のパーティ名が適当すぎ……


『ショウ君、ステータスに何か書かれてましたよ』


「え、マジ?」


 何かアライアンスでの表示があるのかなと思ったら、


【フェアリーの女王の加護】


 は? いや、うん、理解はできるけど……

 そうだ、これをタップすれば詳細が見えるはず。


【フェアリーの女王の加護】

『花の妖精フェアリーは多くの精霊に愛される存在。その女王の加護は大いなる力を与えてくれる。光・水・風・樹・土の精霊魔法の消費MP10%減少』


「うわぁ、めっちゃすごいじゃん……」


「〜〜〜♪」


 目の前でドヤ顔のスウィーだけど、これは納得。


「……なんで普段やってくれないの?」


「〜〜〜……」


 そっぽ向きやがった。

 まあ、あんまり頼りにするのもどうかと思うし、多分、さっきの苦戦を見てなんだろうけど。


「これって他の人たちも知ってるのかな?」


『どうでしょう? 調べてきましょうか?』


「いや、今はいいや。月曜に聞けばいいし」


 ベル部長なら知ってるかな? いや、ナットの方が可能性ありそう。

 前のワールドクエストか、この前の旧ノームの里調査で、ノームの里長とアライアンス組んでた可能性ありそうだし。


「よし、進もうか」


「ワフ」


「〜〜〜♪」


「「「〜〜〜♪」」」


 フェアリーたちを見ると、大丈夫とばかりに皆がサムズアップ。

 やっぱり、スウィーに毒されて来てる気がする……


 通路の天井は淡く光っているので、この辺はまださっきの広間と同じ区画なんだろう。

 20mほど直進したところで、通路は右へと折れているようだ。


「ルピ、お願い」


「ワフン」


 するすると足音を立てずに進んだルピが、右折した先を慎重に覗き込み、


「ワフ」


 特にモンスターもいないっぽいので、ルピに追いつく。

 覗き込んだ先は3mほど進んで上へと続く階段なんだけど、なんか見たことがあるような……


『山小屋の盆地へ出る階段に似てませんか?』


「うん。それ思った」


「ワフ」


 ルピが階段の先を見上げ、俺もつられて見上げるんだけど、上り切った先は踊り場があって、その先は左折かな?

 盆地につながる階段と同じなら、さらに右折して階段を登れば外に出る可能性が高い。


「〜〜〜♪」


「うん、行こう」


 気配感知に気を配りつつ階段を上る。

 上って、左折して上って、右折して上って……


「お、やっぱり外かな?」


 明るくはないけど、うっすらと陽の光が差し込んでいる。

 山小屋の盆地にある階段出口は、地下鉄の出口みたいな屋根がついてたけど、そういうものは見えない。


「ルピ、気をつけて」


「ワフン」


 出たところに何かいたりはしなさそうだけど、ルピが先に上り切ってあたりを確認してくれる。


「ワフ〜」


「さんきゅ」


 俺とスウィー、フェアリーたちが階段を出た場所は、大岩を削って、いや、抉って作ったスペースっぽい。

 天井の岩が近くて圧迫感がすごいな……


「〜〜〜♪」


「ん? おお? うわぁ……」


『すごいです!』


 スウィーに呼ばれて振り返ると、開けた視界の先に広がる海が見える。


「ちゃんと安全柵まであるし」


 ゆっくりと近づくと、眼下に見えるのは灯台と港。

 ドラブウルフのテリトリーの崖よりも高いし、結構上ってきたっぽい。

 もっと北側を見たいんだけど……視界が狭いし、曇り空で小雨もぱらついてるからか、ちょっと見通せそうにない。


「ん、しっかりしてるな」


 覗こうとして掴んだ安全柵だけど、ちょっと力を加えた程度ではびくともしない感じ。天井代わりの岩を支えてもいるのかな。

 なんか、檻に閉じ込められたみたいな気分……


『柵は金属製ですか?』


「っぽいけど、錆びてないんだよな」


 こういう時は鑑定の出番。


【魔導安全柵】

『魔銀でできた柵に、結界魔法と空間魔法が刻まれた安全柵。機能停止中』


「え?」


 思わず手を引っ込める。

 この島、ちょっとしたところに魔導具仕込んでくるから油断できない。


『停止中というのが気になります』


「だね。部屋のあかりとかと同じなのかな」


 改めて周りをぐるっと見回すと、スペースの両端にいつもの扉が一つずつ。

 さっき見えた灯台の位置からして、南側と西側って感じか……


『どちらに行きますか?』


「うーん、こっち側、南側の扉かな。多分だけど崩落現場の先まで繋がってる気がする」


 島の中央に位置する火山の中腹を、時計回りに通路が通ってる感じなんじゃないかな。

 東側のドラブウルフとライコスを食べた先に崖があったけど、あの崖の中を通路が通ってる感じ?


『少し休憩しますか?』


「いや、俺は大丈夫だけど……。みんなはどう?」


「ワフ!」


「〜〜〜!」


 ルピもスウィーもフェアリーたちも「ゴーゴー!」って感じだし、勢いに任せて行ってみようか。

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