第216話 下準備はOK?
いきなりセルキーの守護者になったり、島民が50人突破とか言われてびっくりなんだけど、それよりも期待に満ちた眼差しのセルキーたちのプレッシャーが怖い。
まずは頼む仕事の内容をちゃんと伝えないと……
「えーっと、海に潜って、エビとかカニとか貝とか海藻とか。あ、もちろん魚もだけど、俺も潜るから手伝ってくれる?」
「〜〜〜?」
俺の要望をスウィーが通訳してくれて、セルキーの王子くんがふんふんと頷いてにっこり。
「採った魚とかは処理しないとだし、ごちそうするのは少し後になるけどいい?」
具体的にはライブが始まる前から始めるぐらい。
まあ、これだけ人数がいるとなると、あんまり凝った料理はできないよな……
「キュ〜♪」
「〜〜〜♪」
再びにっこり王子くんと、スウィーがサムズアップで大丈夫らしい。良かった良かった。
「じゃ、さっそく……の前に、ルピ、スウィーとフェアリーたちをカムラスの樹のところに案内してあげて。多分、モンスターとかは出ないと思うけど、護衛よろしく」
「ワフ!」
スウィーが俺の左肩から飛んでいって、ルピへとまたがったので、あとは二人に任せておけばいいかな。
「じゃ、よろしく」
「キュ〜♪」
ついてきてって感じで飛び込む王子くんを追いかけて、俺も海へと飛び込む。やっぱり怖いので、足からだけど。
俺が来るのを待ってたように、俺と王子くんをぐるっと囲むセルキーたち。
「じゃ、一緒に探そうか」
「キュ〜♪」
言葉は微妙に通じてるような気がしなくもない。
この辺りは仲良くなれば察してくれる感じなのかな。ルピやスウィーはほぼ完璧に伝わるし、ドラブウルフやフェアリーたちも理解してくれてる感じだし。
ともかく、やってみて〜って格言か何かがあったし、まずは俺が潜ってお手本を見せないとだな。
どれくらい深くまで、長く潜れるかは潜水スキル次第だろうけど、もらった呼び子のおかげで今はスキルレベル5。
せっかくだし、もう1つ2つ上げておきたいところかな……
………
……
…
「ありがとう! めっちゃ助かったよ!」
「キュ〜♪」
「「「キュ〜♪」」」
さすが無人島っていうか魚介類がたくさん。
魚を取るのも上手いというか、水泳とか潜水のスキルレベルが上限突破してそうな速さで泳ぎ回って、オランジャック(アジ)をたくさん捕まえてくれた。
さらにちょっと沖の方まで行ったセルキーたちが大物を捕まえて来てくれて……
【ニフォニー】
『沿岸部に生息する1m前後の魚。食用可。
料理:焼く調理が一般的』
多分、サワラかな? 捕ってきてくれたやつは1mをゆうに超えてて、これだけで西京焼き何人分なんだろ。
時間は4時をちょうど回ったところ。
5時にはいったんログアウトして、8時前にログインして料理し始めるとして、微妙に時間があるな。
今のうちに少し振る舞っておいた方が、セルキーたちも安心かな?
「先にちょっと味見して欲しいんだけどいい?」
「キュ〜♪」
オッケーもらえたっぽいし、オランジャック(アジ)のカルパッチョ、味見用をさくっと作ろう。
3枚におろしてから薄切りにし、グレイプルビネガーとごま油を少し。軽く黒コショウ、さらにグリーンベリーを絞ってかけるだけ。
「はい。みんなで食べてみて。ダメだったら、ダメって言ってね?」
「キュ〜」
受け取った木皿を持って、仲間に見せる王子くん。
最初に手をつけたのは、一番年長に見えるセルキーっぽい。
興味津々という感じでフォークを手に取り……
「キュ!」
美味しい! って感じの表情になって一安心。
年長者順なのかな? 代わる代わる試食してみな満足そう。っていうか、足りなくなりそうだし、もう一皿作っておこう。
結局、セルキーたちって何人いるんだ? えーっと、ひー、ふー、動かれると数えるの無理だこれ。ああ、今の島民の数を見ればいいのか。
セルキーが加わる前は確か22人だったはずで、今の人数は……56人か。つまり、34人のセルキーがいるはず。
うーん、ここに34人もいるかな? 留守番してるセルキーとかもいるのかも……
「キュ〜♪」
「はい。まだ食べてない子もいると思うから」
おかわり分の皿と取り替えて渡すと、それを持って次のセルキーへ届けに行く王子くん。なんか素直でいい子だなあ。
「ワフ」
「〜〜〜♪」
「あ、おかえり」
ルピにスウィー、フェアリーたちは手にカムラスの実を持ってて嬉しそう。
そろそろ置きっぱの荷物も旧酒場へ運び込んで、ログアウトする時間だけど、大量に取れた魚介類はどうしよう。
貝なんかはいいとして、魚は放置はちょっとなあ。
大きめの木箱とか作って持ってくれば良かったんだけど、今日は食材をメインに運んだからインベにスペースが無い。
やっぱり転移魔法陣が欲しい……
「スウィー、ちょっと伝えて欲しいんだけど」
「〜〜〜?」
貝とかは逃げないし、鮮度も問題ないのでこっちで預かって、魚とかはできればセルキーたちに預かって欲しいことを伝えてもらう。
ごちそうを作りに戻ってきたら、また呼ぶという手はずで……
「〜〜〜♪」
「キュ〜♪」
「「「キュ〜♪」」」
あ、どうやら大丈夫っぽいな。
スウィーもサムズアップしてるし、いったんここでお開きにして、さっさと夕飯を済ませてこよう。
「じゃ、また後でな」
「キュ〜♪」
「ワフ〜」
「〜〜〜♪」
***
「あー、ちょっと早過ぎたか?」
夕飯をさくっと済ませ、バーチャル部室に入ったのは7時半前。
昼にいろいろありすぎたので、ミオンやベル部長に話しておこうと思ったんだけど、俺とセス以外誰もおらず。
「まあ、しばらく待っておれば、すぐに来るであろう」
ミオンやベル部長はいつもだいたい7時半過ぎには現れるらしい。
俺は夕飯の後に洗い物したり、宿題済ませたりしてるからなあ……
『あ、ショウ君、セスちゃん!』
程なく現れたミオンが急いで席へと座る。
「ごめん。昼にいろいろあって、すぐにログインしたいんだけど」
『はい、帰って来てから確認しました。セルキーさんたちが待ってると思いますので、行ってください』
「さんきゅ」
後でって約束はしたけど、できるだけ早く戻ってごちそうしてあげたい。
それに、あの人数にごちそうするとなると……俺自身が食べてる暇あるかな。
「ライブが始まるまで、我も見させてもらっても?」
『もちろんですよ。セスちゃんもスタジオに来ませんか?』
「うむ!」
二人がそんな会話をしてるのを聞きつつ、IROへとログインする。
ミオンとセスの仲が良いのは良いことだよな。
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