第199話 人のことは言えない

「やられた……」


 今回は出てない! と思ってからの最後に登場とか。

 いやまあ絶対に出たくないって訳でもないし、ちょっとアレなゲームプレイしてて、かつ、ミオンとライブもやってお金も稼いでるわけで、今さら感満載なんだけど……


「ショウ君」


「ん? え?」


 がっくりと項垂れる俺をぐっと引っ張り込んで、頭を膝の上に……え? えっ?


「ん」


「あ、うん」


 なんか頭を撫でられてるんだけど、前にもこんなことがあったなとか……

 ルピが俺の膝に頭を乗せてきて撫でてあげるんだけど、こんな感じなんだなとか……

 いやいや? いやいやいや?


「えっと、めちゃくちゃ恥ずかしいんだけど?」


「だめ」


 体を起こそうと思ったら、意外とガッツリと拒否されてしまってどうしようもない。

 無理矢理起きようと思えば起きれるけど……目で訴えてみても、にっこりと笑顔を返されるとどうしようもなく。

 なんというか、そうなのかなって思ってて、でも、あんまり現実味が無くて……


「えーっと、ミオンって」


「?」


「……無人島スタート再開の詳細ページって見れる?」


 そのお願いに頷いて、公式ページに戻り『無人島スタートについて』のリンクを開いてくれるミオン。

 今はこれでいいよなっていうのは逃げてるのかな。ヘタレでごめん……


--------

☆☆☆無人島スタート☆☆☆

【一時停止と再開に至る経緯】

 Iris Revolution Onlineでは、大陸の都市や街以外にも、無人島からスタートすることができます。

 リリース直後より本機能はその詳細を伏せて稼働しており、ごく一部のユーザー様のみが存在に気づいている状態でした。


 ある程度の情報が共有されたところで、詳細なスタート情報と共に公表予定でしたが、不慮の出来事により不明瞭な情報と共に本機能が公になってしまいました。

 運営サイドの想定の甘さにより、一部のユーザー様にキャラクター削除と新キャラクターでの無人島スタート失敗という不愉快な体験をさせてしまったことを、改めて深くお詫びいたします。


 本機能を一時停止し、入念な見直しを進め、改めてスタート情報を公表して再開する運びとなりました。


【再開日】

 本告知掲載と共に再開しております。


【無人島スタートの方法】

・新規キャラクター作成時、最終フェーズのスタート地点選択にて、マップ上をズーム&スクロールしてスタート可能な島を探して選択することができます。

・既にその島でスタートしたプレイヤーがいる場合は、選択不可能となります。(同時に選ばれた場合は先着優先となります)

・スタート可能な島の数は100以上ありますが、その日に選択できる場所はそのうちの一部です。

・無人島スタート後に他プレイヤーと合流する方法は以下の二通りです。

 1.他プレイヤーがいる場所に行く、もしくは、他プレイヤーが島に来る。(海を渡る必要があるでしょう)

 2.一定以上の広さのエリアの安全を確保し、建国宣言して新キャラクターのスタート地点となる。

・島でのゲームプレイは通常のゲームプレイと変わりません。


【注意事項】

・初期所持アイリス(ゲーム内通貨)は0です。

・チュートリアルは存在しません。

・ゲームプレイそのものは、通常スタートのそれと変わりありません。

・特定の幻獣や妖精が存在するとは限りません。

・無人島スタートは1アカウントについて1度のみ可能です。無人島スタートしたキャラクターを削除し、新キャラクター作成した場合は無人島を選択できません。(今回からカウントされます)

・無人島スタートしたキャラクターは、アカウントの課金切れ状態が3ヶ月続いた時点で削除され、その島はスタート可能な島へと戻ります。

--------


「なんかこう……無人島スタート再開するけど『ルピもスウィーもいるとは限らないよ』って念押しされてるような」


 ミオンがこくこくと頷きつつも、撫でるのをやめてくれない。

 でも、これで俺だけが無人島スタートしてって話でもなくなるんだよな。

 それに、


「無人島ライブする人増えるのかな?」


 ふるふると首を横に振るミオンだけど、増えないって話じゃなくて、


「気にしてもしょうがないか」


「ん」


 ニコッとされると、ホント、ドキドキするので勘弁してください……


***


「ただいま」


「兄上おかえり!」


 なんとか解放されて、帰宅したのは5時前。さっさと晩飯の支度しないと。


「奈緒の母上からお惣菜をもらっておるぞ」


「お、マジか。ありがてえ……」


 テーブルの上に置かれてるタッパーを確認すると筑前煮がどっさりと。

 めちゃくちゃありがたい……


「じゃ、アジの二色焼きとこれでいいのか?」


「うむ!」


 ミオンがサエズッターに昼食の写真をアップしたら、美姫からメッセが来たらしい。

 まあ、それがあったから、帰りは駅前まで送ってもらって、スーパーに寄ってきたんだけど。


「美姫、新しいPV見たか?」


「もちろん! 大トリを務めるとは、さすが兄上よの!」


「はあ……。お前、ナットん家で見たの?」


「うむ。奈緒はあっさり兄上と気づいておったぞ」


 ……だよなあ。

 ナットにしても奈緒ちゃんにしても、付き合いが長いとやっぱりバレるのか?


「まあ、それはしょうがないとして、家庭教師に行ったのにゲームの話ばっかしてたんじゃないよな?」


「心配せずとも奈緒はきっちり12月には美杜に合格させるぞ」


「12月って推薦か。あれって学校ごとの枠があるから結構厳しいんじゃ……」


 まずは今通ってる中学の推薦枠を勝ち取るところからスタートだよな。

 確か3人とかだった気がするし、1つは美姫で埋まることに……


「ちなみに我は推薦など受けんぞ。普通に試験で満点を取る自信があるゆえの」


「ああ、先生たちもそっちの方が助かるのか」


 その答えに頷く美姫。普通の試験で絶対に受かるんだし、推薦枠入れる意味ないよな。

 それなら、ギリギリ通るぐらいの人間を推薦枠にしたほうがいいはずで、奈緒ちゃんは真面目で内申点も良いだろうし、まあ大丈夫か。


「それに、美杜の新入生総代も一般受験の成績トップなのであろう?」


「お前、中学の時やったこと、またやるなよ?」


 中学の新入生代表挨拶の時、壇上から思いっきり俺の名前呼びやがったからな、こいつ……


「ふむ。まあ、同じことを2回やってもつまらんからのう」


「同じじゃないこともやめろよ?」


「わかっておる。あれはそもそも、姉上がやって欲しかったと嘆いておったので、代わりに兄上にやっただけなのだぞ?」


 真白姉ぇ……


「そいや、真白姉はどうしてるんだ? 昨日のレオナ様の打ち上げにもいなかったみたいだけど」


「まだシーズン殿と共和国におるようでな。魔王国になんとか入国できんかと、あれこれやっておるようだ」


「えええ、そんな誰も行かないようなところに行こうとするなよ……」


 だいたい、何が目的なのか全然わかんないあたりがやばい。

 聞いてみたらきっと「なんとなく」とか言うんだろうな……


「ん?」


「誰も行かないようなところからスタートしたのは兄上なのだが?」


「あ、うん……」


 俺も人のことは言えないな。

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