第195話 見かけによらず苦労性
「それでは私は落ちますねー。土曜ですがー、夜更かしはほどほどにー」
ヤタ先生がそんなことを言ってあっさりと退室してしまった。
まあ、気にしてもしょうがないってことなんだろうけど。
「なんか不気味で嫌だなあ……」
『そうですね。初ライブが部長とのコラボでしたし、目をつけられてるということでしょうか』
多分、そんなところだろうなと思うものの、島に直接手出しをできる訳もなく。
となると、
「ミオンにコラボしようとか言ってくるかも?」
『部長以外とのコラボはちょっと……』
だよな。
もともとファンで、かつ、リアルのベル部長を知ってるから大丈夫だったんだろうし。
いっそのこと、この投げ銭は返金処理しちゃうか? って考えもよぎるんだけど、そしたらそれはそれでネタにされそう。
「まあ、ベル部長がきたら相談しようか」
『はい』
起きてないことをあれこれ想像して悪い方に考えても意味ないので棚上げ。
それよりも、水曜のライブで来るだろう質問の答えを用意しておいた方が良さそう。
アージェンタさんとの出会いについては、地下のでかい部屋のことをざっくり話すぐらいかな?
地下の非常用の魔晶石にマナを入れたら、それに気づいたアージェンタさんが転移してきたってぐらいで。
あとはまあ、島についてわかったことがあったら連絡できるように、小物を転送できる箱をもらったこととか。
「どうかな?」
『良いと思います。転移魔法陣のことは伏せるんですよね?』
「伏せるっていうか、自分から言わないってぐらいかな。気づく人もいそうだけど、その手の質問はさらっと流そう」
『はい!』
あの地下へは竜の都のどこかから転移できるのかな。だとしたら、それは使わせないようにお願いしとけばいいはず。
こっちに転移を邪魔する障害物置いとくのが確実かな? アージェンタさん、飛んで来れるってわかったし。
ミオンとそんな相談をしていると、11時前になって、
「兄上! またやらかしたそうだの!」
「ライブの方は大丈夫だったの?」
「とりあえず大丈夫って範囲で収まったと思います。この投げ銭以外は……」
例のアンシア姫からの高額投げ銭を見て、ベル部長が一瞬硬直するんだけど、
「ス、スルーすればいいわ! へ、へ、変に反応したら思う壺よ!」
変な反応してるのは部長の方だと思うんだけど、まあ、スルー安定だよな。
「あの手の策士気取りは無視で良い。それよりも兄上のやらかしよ!」
『すごいですよ。セスちゃん』
「うむうむ! すでに竜族と接点を持っておったとは、兄上はすごいのう!」
『最初にドラゴンさんに会った時も、すごく冷静でした!』
そんな冷静だったっけ?
びっくりしすぎが一周回って落ち着いてただけって気がしなくもないけど。
「ほう! その時の様子は無いのか?」
「それが動画にプロテクト掛かってるっぽくてさ。それに約束があるから、何を話したかは言わないぞ」
「ふーむ。そういうことなら仕方あるまい」
その答えに納得したのか、それ以上は聞いてこないセス。
そしてベル部長も落ち着きを取り戻したのか、
「プロテクトまで掛けてるなんて、よっぽどのことなのね……」
と呆れ気味。深く聞いてくるつもりもなさそう。
まあ、モロにネタバレっぽい雰囲気あることを聞きたいとは思わないよな。
「今日のアーカイブはどうだったのだ?」
「ああ、今日のは大丈夫。えっと……」
『はい』
ミオンがさっそく、アージェンタさんが現れたあたりまで飛ばして、その様子を二人に見せる。
よく見ると、俺が上を見て「え〜」って顔してる横で、スウィーが「げ〜」って顔をしてて……ホント肝が据わってるよな。
「甘味って……食べ物で仲良くなったの?」
「まあ、ちょっとしたお裾分けのつもりだったんですけど」
正直、そんな気に入られると思ってなかったし。
というか、追加で一月分は送ったのに、あっさり平らげるとか、お姫様どんだけだよっていう……
「なるほどのう。まずは彼の地で何が起きたかを知らねばならぬのか」
「それに加えて……このセリフからすると称号かしらね。ショウ君は守護者の称号を貰ってたわよね?」
「あ、はい。【フェアリーの守護者】すね」
今日、遊びに来てたセルキーも仲良くなれば称号あるかな?
『その死霊都市の調査に知識と称号が必要な場合、その判定は竜人さんがするということでしょうか?』
「ん? どういうこと?」
「ミオン殿のいうパターンであれば、ゲームシステムがプレイヤーのフラグを見て、NPCの対応が変わるであろうの」
ああ、そういうことか。
割とよくあるというか、普通のRPGとかだとそうだよな。
イベントフラグ的なものが立ってると、NPCのセリフが変わるっていう……
「なんか、IROだと違和感あるな……」
『です』
人の顔見て「こいつはフラグ立ってるからオッケー」とか、いかにもゲームっぽい動きはして来ないと思うんだよな。
「それに関しては未確認だけど情報があるのよ。死霊都市を見張ってる竜人の衛兵にしっかりと話を聞いた人がいて、『いずれかの竜貨を持つ者であれば』という条件を聞き出せたらしいわ」
「りゅうか?」
「竜の貨幣で竜貨ね。通貨としてじゃなく、竜からの信用に値する人物という証になるらしいわ」
つまり、なんらか別のクエストなりをクリアして、その竜貨とやらを手に入れてこいって感じか。
「確かにそれなら自然か。持ってるなら通すって話になるし」
『そうですね。でも、どうやって手に入れるんでしょう?』
「そこで、兄上がアージェンタ殿と話しておった内容になるのであろう」
「あの場所で過去何があったか、そして、守護者の称号かしらね」
なるほど……
そして俺はあの場所で何があったかも知ってるし、守護者の称号も持っていると。
「兄上はアージェンタ殿から竜貨はもらっておらんのか?」
「いや、全然。欲しいって言えばくれる気はするけど」
島の古代遺跡の調査だったり、甘味のお礼だったりで、必要なものがあれば言ってくれって言われてるけど、別に竜貨もらってもなあ。
てか、空間魔法の魔導書もらったのベル部長に言ったらキレられそう……
『あの……、どうしてセスちゃんはドラゴンさんの名前を知ってるんですか?』
「え? あれ?」
そうだ! 俺、ライブ中もアージェンタさんの名前は出さないようにしてたよな!
「クックック! アージェンタ殿は兄上のところに現れる前、アミエラ領に来ておったのだ!」
「アージェンタさんが別件対応って言ってるのは多分そのことね。こっちもいろいろあったのよ。ホントいろいろ……」
アミエラ領で何かあったってことは……有翼人関係か?
セスは機嫌良いし、悪い方向には行かなかったんだろうけど……
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