木曜日
第179話 ライブ増量
『ショウ君、今日アップする動画です』
「あ、そうだった」
いつものように部室一番乗りになる俺たち。席に着いたところで、ミオンに動画を渡される。
解錠コードの扉を開けて、スケルトンとの戦闘は最初と最後だけ。
その後は東側、上り階段からの転移エレベーターを越えて崩落現場へと。
「あ、応用魔法学<地>と土木スキルの掘削魔法ってお披露目は初だよね?」
『はい。あ、隠しますか?』
「ううん、そのままでいいよ。隠すってなると崩落現場も隠さないとだし、それだと外に出るのが不自然だし」
掘削の魔法、セスの言うように使い方次第では悪用できるけど、別の誰かがもう取得して悪用してたりとか考えると、俺がバラしちゃった方がいい気がする。
今度のライブとかで質問出たら、金属が埋まってるとMP消費がやばいって話もしておこう。……そうなると鉄筋入りとかが普通になるのかな?
動画は展望台を降りて水源地に行き、スウィーが水の精霊石を作ってくれるところまで。その次がルピの話になるんだよな。
「おけ、いいと思う」
『はい』
ちょうどそこにベル部長、ではなく、ヤタ先生が入ってきた。
「こんにちはー」
「どもっす」
『先生、次の動画です』
「はいー」
受け取った動画を確認し始めるヤタ先生だけど、まあ特に変な部分はないよな。
「いいと思いますよー。ところでー、そろそろ動画投稿は必要分に減らしてー、ライブを週に2回に増やしませんかー?」
と思いがけない提案が。
俺としてはミオンの負担が軽くなる方がいいかなって感じなんだけど……
『ショウ君はどうですか?』
「俺? 動画投稿を減らすのには賛成かな。ミオンの負担が大きいなって気になってたし……」
編集AIを使ってるとか言ってたけど、それでもチェックで何度も見直すのとか大変そうな気がするんだよな。
「ライブを増やすのはどうですー?」
「のんびりだべってるだけのライブでいいなら。そうそう毎回飯テロできるわけでもないし……」
今は食材がちょくちょく増えてるから、やれるネタも増えていいんだけど、そのうちネタ無くなるなーって。
そうなると、俺がのんびりしてるだけのライブっていう……需要あるのかそれ?
「ミオンさんはどうですー?」
『私はライブ好きなので増やしたいです』
「じゃ、ライブ増やして、動画は減らすでいい?」
『はい。でも、動画編集は全然平気なんですけど……』
と微妙な表情のミオン。
それならちょっとアイデアというか、
「どっちかっていうと短編動画の方がいいかなって。ゲームで発見したことはベル部長やギルドの人たちに伝えてるけど、その後またライブで1から説明は大変だし」
『任せてください!』
「ではー、次の水・土にライブでいいですかー? ベルさんが火、木、日ですしー」
「俺はそれで」
『はい』
ミオンも納得かな。
でも、ライブも短編ネタも無くなったらどうなるんだ? ってのが解決してるわけじゃないんだよな。
いや、部活で実績があるって体裁があればいいんだから、別に気にしなくてもいいのか……
「ごめんなさい。遅くなっちゃったわね」
「どもっす」
『こんにちは』
「八坂先生にまた捕まりましたかー?」
「違います。っていうか、ヤタ先生は知ってるでしょう」
疲れた顔でゲーミングチェアに座るベル部長。
ヤタ先生が知ってるってどういうことだろうと思ったら、修学旅行の話でホームルームが長引いたらしい。
そういや、うちの学校は秋じゃなくて梅雨時期に北海道なんだよな。
生徒数が多くて、文化祭が本当にお祭り騒ぎになるかららしいけど……電脳部って文化祭って部活で何かやるのかな?
「そういうわけで6月の第2週は不在になるわ。その間は二人で頑張ってね」
『はい。二人で頑張ります』
二人っていうか、ヤタ先生がいるから問題ないと思うけど。
「りょっす。ところでベル部長、向こうからIROしたりしないですよね?」
「……VRHMDの持ち込みは不可よ」
要望出したけどダメってオチだった感?
まあ、
一方でニコニコしてるヤタ先生が、
「自由行動時間にワーキングスペースを借りてログインとかー、修学旅行をなんだと思ってるんでしょうねー」
あ、うん、そういうことね……
***
『ショウ君はライブが負担になったりしてませんか? のんびりできないんじゃないかって気になるんですけど……』
「ん? それは全然大丈夫。ライブっていっても1時間だし、やっぱり大勢でワイワイしたいなって思うこともあるよ」
ナットとかベル部長、セスたちがワールドクエスト終了の打ち上げしてるのは、ちょっと羨ましかったし。
『良かったです』
「でも、これから先、いつもいつも良いネタがあるとは限らないから、その辺はちょっと心配かな。まあ、視聴者が減ってもしょうがないかって思ってるけど」
『無理はしなくて良いと思います。それと……ショウ君は普通にゲームしてるだけで、いろいろと起きる気がしますから』
……そうかなあ?
「ワフッ!」
「お、ルピ、さんきゅ」
朽木の下に隠れていたチャガタケを見つけ、俺を呼んでくれるルピ。
今日の部活は釣り竿のための良い感じの竹探し。
仙人竹の細いのを探しつつ、レクソンやらチャガタケ、仙人筍なんかの食材も補充するのが目的。
「さて、この辺りの仙人竹でいいかな?」
片手でグッと握り込める、手頃な太さの仙人竹を発見。
何種類か作りたいし、失敗することも考えていくつか確保しておこう。
『釣りに必要な道具っていろいろあるんですね』
「まあ、凝り始めると大変なことになるらしいよ。釣りはお金持ちの道楽だって、じいちゃんも言ってたし……」
『ショウ君は釣り好きなんですか?』
「うーん、好きだけど、IROの中で釣りだけってほどじゃないかな」
クリーネっていう漁港でずっと釣りしてる人たち、ホントに好きなんだろうなあ。
気持ちはわからなくもないし、多分、そういう人たちなら、IROの月額の方が安く済んで、奥さんも安心なんだろうな……
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